Multi Dimensional
0.プロローグ
太陽が白色矮星になってから、数十世代の宇宙が終焉を迎えていた頃、人類を含む宇宙生命体は、永久インフレーションまでもコントロールしていた。
1.宇宙環境省 通信管理課
「二人とも、仕事だ」
上司の人工知能、SOLAは立体映像で姿を現す。
「どこ?」
海翔が聞く。
「第55区域の永久インフレーションがもうすぐ、Big Bangを引き起こして、インフレーション期を終了する。その際、第54区域と第56区域を切り離してしまうことが分かった」
「ということは!」
SOLAの説明に、紗奈は表情を明るくする。
「通信障害が起こる。それに備えてシステムを構築してくれ」
「はい!」
紗奈は笑顔でSOLAに返事をした。
「第55区域って、第75区域の永久インフレーションと交わる領域じゃないか?」
作業をしながら、海翔は紗奈へ話しかける。
「確かに。永久インフレーションのマルチバースだよね」
「そうそう」
海翔は頷く。
「何次元なんだろうね、そこ」
「確かに」
「出来た! 強化システム!」
海翔は伸びをする。
「おー」
紗奈は小さく拍手をする。
「通信障害が起こらないといいけど」
海翔は不安そうに言う。
「切り離されないようにインフレーション期の終了の阻止はしないんだね」
紗奈はそう呟く。
「確かに」
――何でだろう。上層部。
「ありがとうございました。通信障害起こりませんでした」
SOLAが立体映像で姿を現した。
「やった!」
海翔が笑顔で喜んだ。
「良かったね」
紗奈も微笑む。
「しかし、交わった領域で通信障害が起こってしまいました」
SOLAの言葉が無情にも二人に突き刺さる。
「何!?」
「そっちかぁ」
海翔は頭を抱え、紗奈は遠い目で彼らを見た。