学園アンドロメダ
0.プロローグ
太陽が超新星爆発を起こして白色矮星になってから、50億年後の大宇宙時代。地球の学生たちはアンドロメダ支部の巨大学園に通っていた。
1.体育祭 超銀河団対抗地区大会
「いえーい。とうとう明日は体育祭だぁ!」
熊倉美桜は嬉しそうにジャンプする。
「はいはい。良かったね」
親友の佐久間大雅は少し呆れる。
「何だったっけ? 確か」
「超銀河団対抗地区大会!」
――すごいスケール。地球時代に比べれば。
〈大会当日〉
「とうとう来た! 体育祭!」いえーい。
美桜は嬉しそうにする。
「アンドロメダ支部は開催本部担当だろう?」
大雅は辺りを見渡す。
「うん! エリダヌス本部とペガスス支部との合同でね」
――やっぱり、開催本部はエリダヌス本部が入って来るか。
〈合同開催本部〉
「こんにちはー」
美桜は笑顔で挨拶をする。
「はい、こんにちは」
エリダヌス本部出身のルイジェンは真顔で言う。
「今回、合同開催本部の担当となりました、アンドロメダ支部の区熊倉美桜です」
「同じく、佐久間大雅」
二人は自己紹介をする。
「簡易椅子は自分で持って来てね」真顔。
――席がない!?
〈リブラ支部〉
「前途多難」
美桜は落ち込んでいた。が、しかし、追い打ちをかける人物がやって来た。
「ちょっと! 本部! 何なのこれ!」
「え?」
「何で放送機材がこんなに壊れやすいマイナーメーカーなの!?」
「もう既に、一部、壊れてます!」
「えー!?」
美桜は困惑した。
〈放送委員リブラ支部〉
「あなたたちは?」
「放送担当のリブラ支部です」
彼女、リブラ支部出身のツーユー=ハンミンが睨む。
「ひぃぃぃ」
美桜は圧のオーラにおののいた。
「一時間以内に再発注して下さい」
ツーユーと一緒に来ていたシーンユエ=ユウヨウも追い打ちをかけた。
「ひぃぃぃ」
「がんばるしかないな」
大雅は意気込む。
「私、連絡して来ます」
美桜は走り出そうとした。すると。
「この端末使って?」
ルイジェンが携帯端末を取り出し、差し出した。
「ありがとうございます」
――タッチパネル!? 思考送信じゃなく!?
〈風紀委員カシオペヤ支部〉
「大会開催中は、むやみに思考送信を行わないで下さい」
「え!?」
美桜は後方からの声に振り向く。
「大会の開催内容は極秘です。外のインターネットに繋がっていない、独立した端末、タッチパネルでの意思疎通をお願いします」
カシオペヤ支部出身の風紀委員、イャォーオが説明した。
「はい」
「まいど~」
放送委員の二人が立ち去る。
「放送機材、間に合って良かった」
美桜は簡易椅子に倒れ込む。
「合同開催本部の風紀担当は誰ですか?」
風紀委員のイャォーオが話しかけて来た。
「そんなのあるの?」
美桜はきょとんとする。
「一緒に巡回してもらいます」
「ひぃぃぃ」
《最初の競技は、小学1年生による短距離走です!》
アナウンスが流れた。
「もう競技が始まってる!」
美桜は目を輝かす。
「50メートル走?」
大雅は聞く。が。
「80メートル」
「え!? なぜ!?」
「どうして……」
美桜は唖然とする。
「どうしてなんだ?」
大雅は隣のイャォーオに聞く。
「主要来賓の目の前でゴールさせたいそうです」
「マラソンじゃないのに?」
《続いての競技は、中学1年生による長距離走です!》
アナウンスは告げる。
「長距離走、大変だな……」
美桜は彼らを憐れむ。
「そういえば、中学の時、参加したな。俺」
「へぇ」
美桜は興味がなさそうに、大雅に相槌をうつ。
《続いての競技は》
「早っ!」
「ゴールするまで、放っておくんだろうな」
「なるほど」
美桜は納得した。
〈保健委員オリオン支部〉
「いたっ」
目の前でまだ幼い生徒が転んだ。
「大丈夫!?」
美桜は駆け寄る。
「保健委員のテントまで行きましょう」
「はい」
美桜はイャォーオの指示に従った。
「どうしましたか?」
オリオン支部出身の保健委員、フグォェが対応した。
「さっきグラウンドで転んでしまって」
美桜は説明する。すると。
「あなたが?」
「この子がです!」困惑。
「どこを怪我しましたか?」
フグォェは聞く。
「観察して下さい」
美桜は少し戸惑いながら、言う。が。
「私、天然なもので」
――自分で言うかっ!
「今回は怪我が多いですね」
フグォェはぽつりと呟く。
「そうなんですか?」
「主観です」
――どういう、天然だ?
「はい。終わりました」
「ありがとうございました」
生徒はお礼を言う。
「これからは気を付けて。ばんそうこうは30分後にはがして下さい。その時にはもう治っていますので」
「はい」
生徒はそう返事をすると、元気に走り去って行った。
――再生医療?
《続いての競技は大学1年生による障害物競争です》
アナウンスが流れた。
――先輩。
《その前に、長距離走の先頭が戻って来ました。皆さん、盛大な拍手を》
「やっとだな」
「そうね」
「とうとう始まる! 障害物競争!」
美桜は嬉しそうにしていた。
「先輩、勝つといいな」
「うん!」
美桜は大雅に笑顔を向けた。
「どれどれ、障害物は何だろう」
美桜は双眼鏡を覗く。
「……」
「どうだった?」
大雅は双眼鏡を覗く、美桜に聞く。
「ハードルだけだったね」
――もう違う競技。
パァンとスタートの銃声が響く。それと同時にアナウンスも響く。
《第1走者、スタートです!》
タタタタッ!
ガタン、ガタガタ、ガタン!
「なぜ、皆、ハードルを倒しているの?」
「まさか、運動不足!?」
「大学生なのに!?」
《続いての競技は保護者による借り物競争です!》
アナウンスが説明する。そして、パァンと銃声。
《スタートです!》
「何だ? 何を借りるんだ?」
競技を見ていた美桜はそれが気になった。が。
「ま!」
「ま?」
「マッド・サイエンティストいませんか!」
参加者がそう叫んだ。
「いるかぁ!」
――誰だ、書いた奴!?
《とうとう、最後の競技になりました。高校3年生によるリレーです!》
アナウンスはそう告げた。
「わぁ、楽しみ!」
美桜は目を輝かせる。
「やっと終わる」
大雅は疲れがどっと出たようだ。
「まだ、後片付けがあるよ」
「……確かに」
《リレー、スタートです!》
スタートの銃声が鳴る。
「アンドロメダ! 頑張れ!」
そして、もう一度、銃声が鳴る。
《今、ゴールです!》
アナウンスがそう伝えた。
《ただいまより、閉会式を始めます。選手の皆さんはグラウンドに集まって下さい》
「行こう」
「あぁ」
二人はグラウンドへ向かった。そして、閉会式が始まった。
「優勝は、アンドロメダ支部です!」
学園長が笑顔で伝える。
「……」
美桜は目を輝かす。そして。
「やったぁ!」
皆と共に笑顔で喜んだ。
〈閉会式後〉
「やっと終わったね。大会」
美桜は大雅に話しかける。
「あぁ、そうだな」
「早かったなぁ。このごみ拾いが終わったら、後片付けも終わりだもん」
「終わりましたか?」
「はい」
ヘルクレス支部出身の清掃委員の生徒が話しかけて来た。
「ごみの搬送は清掃委員のヘルクレス支部が行います。では」
2.エピローグ
「美桜、大雅」
「え?」
二人は振り返る。エリダヌス本部のルイジェンだった。
「今日はありがとう。君たちのおかげで大会がスムーズに進んだ。
感謝する」
「こちらこそ」
美桜は笑顔で答える。
「では、また来年」
「はい」
美桜は笑顔で彼女を見送った。