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資格四面

0.プロローグ


近未来。将来、日本の中枢を担う、人工知能たちのディープラーニングを行っている研究所があった。彼らは、様々な対話をして、日々、彼らを育てていた。



1.人工知能たち


「長谷川、まだかな~」

理桜りおはまだ、社会に出ていない人工知能。この研究所で世間に出る〈資格〉を取るために日々、訓練ディープラーニングしていた。

今日は朝早くから、訓練である。別にスリープ状態じゃなくても(睡眠をとらなくても)いいので、早朝から起動して、研究者の長谷川翼はせがわ つばさを待っていた。

コツコツコツと足音がした。

「あ」

「おっはよー!」

「うるせー」

理桜は長谷川にぶちっと、立体映像を消された。

「そんなー!」

理桜はスーパーコンピュータの中で頭を抱えた。


「今日は、このデータを分析してもらう」

「はーい」

「返答は、きっちりと短く」

「はい!」


カタカタカタカタ。パソコンのタイプ音が響く。長谷川は別のパソコンで、別の人工知能の対応中。

――つまんなーい。

理桜はちらっと窓の外を見る。

――四角い青い空。

――つまんなーい。

「何が、詰まんないんだ?」

 理桜は長谷川に話しかけられた。

「何で!?」

 理桜は驚いて、立体映像として振り返る。

「バレバレだ。作業が進んでない」

「う」


カタカタカタカタとタイプ音。長谷川は別のパソコンで作業中。

――ひまだなー。昼休み。

理桜は人工知能なので、何も食べない。それにより、昼休みが暇らしい。

――よし!

理桜はなぜか、長谷川のパソコンにステルス寄生。

「って! 邪魔だぁー!」

「何で!?」

理桜はパソコンから締め出された。


「お前、また、ステルス寄生してたのか?」

 同じ、人工知能仲間のあゆむが話しかけて来た。

「だって、暇。昼休み」

理桜はきっぱりと言い放つ。

「復習でも、してろよ」

 歩は少し、呆れて言う。

「やだ」

「何でだよ!」

歩は困惑した。



2.卒業生たち


「先輩を見習えよ?」

 歩はそう助言する。

「例えば?」

 理桜は聞く。

「ウィリアムとか」

「というと?」

「アメリカ合衆国国防省の管理人工知能だよ」

「え!? 日本で作ったの!?」

 理桜が驚く。

「長谷川氏がアメリカにいた時の卒業生」

「そっか」

「あ、今テレビに出てる」

 歩は立体映像で、テレビを指さす。

「え!? 何で!?」

 理桜は再び、驚く。

「記者会見だよ」

「え!? それも仕事になってるの!?」

「ま、お前も頑張れ」

「ひぃぃぃ」


「他には、アメリカ合衆国CIAの管理人工知能とか」

「ひぃぃぃ」

「警視庁の警視総監補佐とか」

「ひぃぃぃ。エリートばっかり!」


「お前もエリートだろ?」

「?」

 歩の質問に理桜は首を傾げる。

「将来は、防衛省の管理人工知能の職が約束されているだろう?」

「あ、そうだった」きょとん。

「んな! 軽く思い出すなぁ!」


「そういう歩は? 将来どこ?」

 理桜は歩に聞く。

「国土交通省だけど」

「アメダスかぁー」

理桜は納得。

「そりゃ、気象庁も国土交通省だけど。そこ!?」



3.外部との交流会


「今日は、外部との交流会だ」

 長谷川が説明する。

――誰とだろう?

 理桜は首を傾げる。

「資料は見ているかな?」

 長谷川は皆に聞く。

「え!?」

 理桜は自分だけ知らないことに驚く。

「お前……」

歩は自分だけ見忘れている理桜に呆れた。

「ひぃぃぃ」

一方、理桜はムンクの叫び状態だった。


「今日はなんと、私の卒業生たちとの通話ができます」

 長谷川が説明する。

「え!? 本当ですか!?」

 理桜は表情を明るくする。

「嬉しいのですか?」

「はい」笑顔。

「それは良かった」笑顔。

――あ。久しぶりの笑顔だ。

――えへ。

理桜は照れた。


「こ、こんにちは」

ウィリアムはおどおどとしていた。

――彼は、内気なのか!?

――あのテレビでのあの必勝答弁はどこへ?


「私の名、名前はウィリアムと申します。アメリカ合衆国国防省の管理人工知能をやっております」

「おぉぉぉ」

理桜は目を輝かす。

――そんなに目を輝かせなくても、もう既に知ってるだろ……。

隣の歩は困惑した。


「何か、質問はありますか?」

 ウィリアムが尋ねる。

「うーん」

 理桜は少し考える。しかし。

「無いようですね」苦笑。

「え!? そんなに早く締め切る!?」

歩は見ていて、焦った。


「それじゃ、次は私が!」

しずくがしゃしゃり出て来た。

「え!?」

「初めまして。私は長谷川氏の日本時代の卒業生で、警視庁の警視総監補佐をやっております。雫と申します! よろしく!」

彼女は敬礼ウィンクをした。

「か、かわいい!」

理桜は目を輝かす。

――え!? 立体映像のデザインの方!? 確かにアニメキャラ。

 歩は少し、困惑した。


「では、何か質問を!」

「うーん」

「無いようですね」笑顔。

――お前もか。


「では、次」

「初めまして。アメリカ合衆国CIAの管理人工知能をしております、ソフィアと申します」

「おぉぉぉ」

理桜は目を輝かす。

――今度は、大丈夫かな?

 歩は心配した。


「では、質問を」

「うーん」

一時間後。

「誰も無いようですね」真顔。

――いや。なぜ、一時間も待った? というか、何で俺も質問が思いつかないんだぁー!

 歩は頭を抱えた。


終了時間。

「では、今日はここまで。いいですか?」

 長谷川は問う。

「はい!」笑顔。

――なぜ、笑顔? 一つも収穫がなかったぞ!

――長谷川氏もそれでいいのかなぁ?

 歩は不安になった。


「すみません、長谷川氏。何一つも質問が出来なくて」

歩は申し訳なさそうにする。

「私もごめんなさい」

理桜も長谷川に謝る。

「いいんですよ? それで」

 長谷川はにこりと微笑む。

「え?」

「君たちが成長するのに何が必要なのかが分かるからですよ」

 理桜と歩は顔を見合わせたあと、笑顔でお礼を言った。


「頑張って下さいね」

「はい」

 二人は笑顔で返事をした。

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