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ウェイ✕ヲタ(再編集)  作者: General Commander
Rebellion Advance
10/12

演習(最終日)

 前日の激闘、そして告白の夜を経て、迎えた三日目は雨だった。

「ふあぁ~あっ」

 割と遅くまで寝たにも関わらず、疲れがたまった声を上げる勇。そう、バルコニーで話す姉があまりにも鮮烈で、その後も目が冴えたままだったのだ。

(姉さんが美しすぎるからだよ・・・)

 男子なら毎日起こる朝の生理現象が、今日は一段と激しい。このままでは姫に卒倒され、近絶妃に凝視されかねない。


 朝のトイレを済ませ、朝食へ向かう。先に食事をとっている豪と隣だ。

「よお勇、珍しく遅かったな」

「あんな激しい戦闘の後でよく早起きできますね・・・」

「短時間で深く寝られることも、戦士に求められる要素だ」

 当然、戦場では安全な時間は非常に少ない。その限られた中で効率的な休息をとることの必要性は重々承知だが、だからといって簡単に実行できるものではない。

「トレーニングだけでは駄目ということですね。何かいい方法はありますか?」

「入眠音声を聞いてみるのはどうだろうか?疲れた体にあのゾクゾク感、たまらな・・・何でもない」

 音フェチならご存じだろうが、安眠音声の関連動画には耳かきボイスが出がちだ。そのことを指すのなら、豪はそういうことになる()。

「妃と話していて忘れたが、勇の作戦も良かったぞ。実戦ではルールなどないのだから、ああいった発想は必要だ」

「それなら姫に言ってください。元はと言えば姫がこっそり装備を置いていくことを考えついてくれたんですから」

 姫は敵を騙すような作戦をしばしば組む。しかしその精度を上げるため、味方にすら伝えないこともあるのが玉に瑕、いや美少女に瑕だ。

「午前の訓練じゃあその姫に勝っていたな。勇に戦法を教えたのも姫だっけか」

「まさか師匠といえる人にあんな早く勝てるなんて」

 今回の演習は小規模だったが、姫の配置法は規模を問わず使える優秀なものだ。そして勇が考案した水中奇襲も巧みだった。


 三日目の午前中は自主訓練となり、勇は島を巡り前日の反省をすることにした。

(妃は北側から来たというが、本当に見えたのか?)

 鬼と姫が奇襲を受けた島中央部で、索敵の考察をする。どの条件で隠れ場所が見えるのか、どうすればそれを防げるか、科学と魔術両方の視点から検証を繰り返す。

(妃は魔術を使えない。ならサーモグラフィーでもない限り、完全な死角にいる目標の探知は不可能なはずだ)

 ふと気付く。

(そもそも姫はスコープ+サーモグラフィーの完全な近距離索敵体制を整えていた。そして鬼は術式で中距離の索敵もしていた)

 とはいえ鬼のレーダーは距離が離れた敵に対しては完璧ではなかった。つまり近絶妃は、隣のブロックから姫が対応できない程の速度で移動したことになる。下準備が極めて面倒な転送術式、もしくは最高位級の高速移動術式でも使わない限り、完全にあり得ない動きなのだ。

(本人たちに聞いてみる他なさそうだな・・・)

 次に勇は、姉が隠れていた穴に入ってみる。

(いざ体験すると、ゲリラって大変なんだなぁ)

 かなり狭く、湿度も高い。できれば、あの美しい姉にこんな思いをさせたくないとも思った。

 そして戦いの勝敗を分けたのもこの洞穴だ。しかし相手が手だったらどうだろう。一瞬で見破られていたはずだ。


 昼食になり、勇は姫と鬼の側に座った。

「奇襲をされた時の詳細を教えていただきたいのですが」

 いつも以上に真面目、それすら越えて深刻にも映る勇の表情に、二人も何かを察したようだ。

「勇も何かおかしいと思っていたか・・・。妃に気付いて助けを求めようとしたが、その時間すらなかった」

「あの時、スコープが熱源反応を捉えた瞬間に撃破されていました。距離を考えると、時速にして約八十キロで妃は動いたことになります」

 障害が多い状況で、それほどの速度を人間の足で出していた。青梅側に、最高位術式を使えるほどの向上性を持つ人物がいたということなのだろうか。

「何か心当たりはありますか?」

 しかし答えはない。

「な、なんか暗くなっちゃったし、話題を変えましょうか?このことは帰ってから軍導師に報告するとして」

 少し焦る姫の顔もかわいい。

「帰りの飛行機でボンボンがラム酒入りのチョコレートをくれないかなあ?ボンボンだから。なんつって・・・」

「あいつはいけ好かないが、スポンサーとしては最高だからなあ」

 鬼の即答、勇のギャグは寒かったようだ。

「ネタを無視しないでください!和むかなって考えたのに」

 そんなこんなで、昼食の時は流れていった。

「とにかく勇、帰りの飛行機の中でいいから、妃本人に聞くべきだ。俺たちは同盟関係を結んでいるから、情報の共有は何よりも大切だ」

 鬼は忠告した。


 帰りは行きと同じく那覇空港のラウンジでボンボンの自慢話を聞き、緩い検査を抜けて飛行機へと入った。

(シートベルト着用のサインが消えたな)

 勇は頃合いを見計らい、後ろの席に座る近絶妃に小声で話しかける。

「妃、ちょっといいか?」

「どうした?勇」

 寝ているかもと考えたが、いつものふんわりとした声が返ってきた。

「昨日の午後の演習で、妃が鬼と姫を奇襲した手段を教えてほしいんだ」

「しゅだん?いいあんを思いついたから、普通にはしっただけ」

「普通に?」

「うん、普通に」

「魔法は?」

「そんなのつかえないよ」

 普通、普通に走っただけ。これは何を意味するのか、考えても答えは出てこなかった。


 疑問は尽きなかったが、(姉に欲情したことによる)寝不足からくる二日分の疲れがたまっていたため、ぐっすりと眠れた。


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