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79話 ドワーフ国へ出発です

 しばらく地下牢で話していると、今度は少し渋い顔をした団長だけで降りてきた。


「ルロワ王の許しは出ました。ですが……」


「もしかして貴族連中が騒いでる?」


 言いづらそうにしているのを見かねて予想を口にすると、団長は更に苦々しい顔をしながら同意する。


「ええ……」


 今回は女神の神託なんていう背中押しがあるからな、貴族連中は教会を味方につけて言いたい放題言っているんだろう。


「変なことに巻き込まれんのは嫌だからな、俺たちはすぐに出発しよう。魔人族の領地に向かう途中でドワーフの住処がありそうだから都合もいいだろ」


「お、俺もついて行く!」


 俺が今後の計画を口にすると、どうやら京介もついて来たいらしい。


「城の守りはいいのか?」

「今回で戦争は一段落したし、ある程度自由にしていいと言われてるんだ」


 ある程度……か。さじ加減が難しいと思うけど、魔人族の領地はある程度に含まれるんだろうか?


「その件もルロワ王に聞いておりまして、九重殿がついて行っても構わないそうです」


「俺はお役御免ってことかな?」


 許可が降りたとはいえ、京介が少し複雑な感情になっているようなのでフォローしてやる。


「いや、魔王の所へ人を送るのに勇者がいないとなると、他国への外聞が悪いとかそんな感じじゃないか?一時でも最大戦力を手放すんだから、賭けに近い苦渋の決断だったと思うぞ?」


 俺はチラりと団長に目をやるが、団長は俯いて表情を読ませないようにしている。


「それより、京介はどうしてついて来たいと思ったんだ?」


「俺、刀鍛冶の修行をしていると言ったでしょ?師匠が教えてくれたんだけど、どうやらドワーフの里には師匠の師匠、つまり先代勇者の刀を打ったドワーフの秘伝があるらしいんだよね」


「ほう、それは確かに気になるな」


「ああ、それにキョウカ・ココノエの手がかりがあるかもしれないからね」


「京介のお母さんと同じ名前で、先代勇者……か」


 ルロワ王の判断に不満を持った貴族達がどんな行動に出るか分からないので、俺たちはさっさと国を出て行くことにする。


 まあ実際武力行使に出られた所でどうとでもなる訳だが、東部夫妻が『役目を果たすことが出来なくなった』と言った理由が分からんからな。


 もしかすると、女神や魔神と直接対峙するには人間の国々から弾かれてはいけない可能性もある。むやみに敵対するは愚策と……。


 あれ、俺って女神や魔神と戦うつもりだったか……?帰る方法を探すのがメインだったはずだよな?


「オサム君?」


「あ、ああ。すまない、コイツ等も出してやろうか」


 俺は牢屋を折り曲げ、魔人族達を繋ぐ鎖を引きちぎった。


 魔人族達をこのまま地下牢に放っておいたら処刑されてしまいそうだからな。流石に城の中で放す訳にいかないが、城下町の外まで出れば逃がしてやってもいいだろう。


 団長は見て見ぬふりをしてくれているので、俺たちは城を出て、城下町の外まで出て来た。


 このまま逃がしてやってもいいんだが、魔王の居城とドワーフの事くらい聞いておくか。


「おい、魔王が住んでいる城の場所をこの地図に記入してくれ」


「はい!この地図だとぉ……これはまた凄い地図ですね~。悪魔の世界では一般的なのですか~?いえ、失礼しましたコチラですぅ」


 魔羅エゾグァは地図を読めるようで、魔王城の位置を記入してくれた。


 遠いな、獣人国が北の端だとすれば魔人国は東の端か。直線距離は獣人国よりも少し離れているくらいだが、途中にある山と森がめちゃくちゃ邪魔だ。


 平原に近い所は身体強化で走ったとしても、森や山はどうしたって高速移動は難しい。そこはパルクールで走ったとしてもトータルで二週間以上かかるだろうな。


「そういえば、お前らはあれだけの軍隊でどうやって来たんだ?四万人の軍隊だった訳だし、行軍速度が分からんけど普通に歩いたら数ヶ月かかるだろ」


 俺の疑問にまた魔羅エゾグァが答えてくれる。


「我々は空が飛べますしぃ、人族の移動速度とは比較にもなりません。行軍は十日もかかりませんでした~」


 全員が空を飛んで移動出来るのか、そりゃ速そうだ。


「もし貴様が魔王城に来ても魔人族総出で戦うであります!我々を逃がしたことを後悔させるであります!!」


 魔導師アビスがうるさいけどコイツはもう無視だな。

 

「それからもう一つ、ドワーフの国がどの辺にあるか知っているか?この辺の山付近なのは分かっているんだが……」


「ドワーフは地下都市を築いているようだから我々も大した情報を持っていないゲソ。だが、この辺の鉱山にはよく顔を出しているようだから行くといいゲソ。それと、このナイフを持っていくゲソ」


 魔獣使いラギュルが鉱山の位置に印をつけると、胸元からナイフを取り出し、差し出してくる。


 俺は受け取り鞘からナイフを抜くと、黒く深い緑色が特徴的なナイフが出てきた。


「そのナイフはアダマンタイトという伝説の鉱石で出来ているゲソ。時のドワーフ王が打った最高の武器の一つで、ドワーフ王の技術と運が噛み合った奇跡のひと振りと呼ばれているゲソ」


「おお、ありがたいが……こんなものを貰っていいのか?」


「やらんぞ!やらんが、ドワーフ国で話しは通しやすくなるゲソ。オヌシのような悪魔の考えは分からんが、命を救われたことは分かるゲソ。これで貸し借りは無しにして貰えなイカ?」


 人魔の戦場にクラーケンとか投入するくせに、貸し借りとか気にするタイプなのか。


「クラーケンよりやべぇのが敵にいたんだから、クラーケンぐらい投入したって……ヒィ」


 失礼な事を言ってくる黒ギャルを俺は一睨みする。まあいいけどな。


 このナイフ、ザックームの耳飾と同じ感じの色だな。歴史の教科書でみた青銅ってやつかと思ってたけど違うのか?


 まあ量産品の青銅は柔らかいって言うし、アダマンタイトが青銅と同じとは言わないけど、類似性は少し気になるな。


「僕、アダマンタイトって真っ黒だと思ってたよ」


「俺も小説とか読んでると黒色で表現されてるものが多かったんだけど……『まふ☆マギ』ではアダマンタイトと言えばこの色だったんだよね」


「『まふ☆マギ』にアダマンタイトなんて出てくるんだ……」


「オリハルコンだって出てくるぞ。アダマンタイトは鉱石として出て来るけど、オリハルコンはビリー師父による筋肉の舞によって真鍮が……」


 青銅に魔法……いや魔素か?確か通常の鉄鋼よりも魔鉄鋼の方が硬いと言っていたよな。もしかしてアダマンタイトは魔青銅、オリハルコンは魔真鍮なんじゃ。


 これは胸熱だな、ドワーフ国が楽しみになってきた。

 

「よし、お前ら行っていいわ。もう捕まるんじゃないぞ」


「貴様!捕まえた虫でも放すようになんでありますかッ!?魔王城に来たら覚えているであります!」


 魔導師アビスは最後までうるさい奴だったが、魔人族達は背中に翼を生やし、東の方へ飛んで行った。


「って訳でルウも悪いな、本当は獣人国へ連れて行ってやりたかったんだが、一人で転移魔石を使っても構わねえからな」


「なんだ、両親の挨拶に連れて行くっていうからそういう事かと思ったぜ」


 ルウの言葉に空間の温度が五度は下がった気がする。


「ル、ルルルルウちゃん。そういうことって、どどどういうことなんだろう?」


「あん?プロポーズでもされんのかと思ったからよ、皆の前で断ったら面白ぇかと思ったんだけどな。獣人族として強え男に惹かれねぇでもないが、コイツだけはねえな〜」


「そ、そうなんだ、それなら良かったよね!」


 美砂さん、全然良くないと思うよ?


 謂れもなく勝手に振られた気がするんだけど。別にルウに惚れてる訳でもないから構わないけど、()()()()()()()()()使()()()()のは納得いかねえな。

 

「おいルウ。お前、独りで獣王に会うのビビってんだろ」


「はあ?てめえ何言って……「ビビッてねえならさ!」


「ビビッてねえなら、とりあえず獣人国に行って獣王にこの手紙を渡してくれ。転移魔石はオーバーライドの感覚で魔力を通せば発動すんだろ」


 俺はルウの話しを遮り、()()を折りたたんで手紙だと渡し、獣王に会うための都合を無理やり用意する。


「分かったよ」


 ルウは観念したのか俺の手紙を受け取ったのだが、ぐちゃぐちゃに握り潰し投げ返してくる。


「なんだよ、観念して獣王の所に行くんじゃねえのかよ?」


「相変わらず生意気な野郎だ。インクの匂いもしないただの紙なんかいらねえよ、獣人の鼻舐めてんのか」


 ルウが捨て台詞を吐いて城下町の方へ戻っていくのを皆で見送った。


 さて、と。


 いつものメンバーに京介が足され、吐く息も白くなる気温の中、いよいよ俺たちは出発することにする。


 ふと、乾いた空気に飛ばされた白い息を目で追うと、ドワーフ国があると思われる山々の稜線がとてもクッキリと目に焼き付いた。


 ――*――

 オサム達がドワーフ国へ出発した後。(ルウ目線)


 あのクソ生意気な小僧が、私がビビってるだと?


 大体私が何にビビらなきゃいけねえんだよ。私は母様のことだってほとんど記憶にない。母様が絶やしてはいけないと言っていた言葉や真剣な眼差しは記憶にあるが、父様の顔は知らないんだ。


 大体、父様が七十年も生死不明だった娘に会いたいと思ってるかどうかだって……ええい!行きゃいいんだろ、行ってやるよッ!


 私は転移魔石を発動して獣人国を選び、転移してきたようだ。ここは……どこかの地下か?光が漏れている、あそこが扉だな?


 扉を開けて階段を上ったのだが、ここは城の中庭のような場所か……?この祠だけ作りが違う様に見えるが。


 チッ!アイツも城の地図くらい渡してから行けってんだ!そういや私は父様の姿だって知らねえし、大体この後どこに向かえばいいのか、クソッ見切り発車もいいとこだったな。


 「まさか……。ルウ……なのか?」


 声がした方を振り返ると、筋骨隆々の獅子獣人が立っており、片手をこちらに伸ばして小刻みに震えている。


 なんだ?私のことを知っているみたいだが。


 足がゴリラみてえだな、おい。

 ――*――

お読み頂きありがとうございます。

ブックマークや☆1つでも評価を頂けるととても嬉しいです。


平日は毎日更新しておりますので、次話もどうぞよろしくお願いいたします。

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