エピソード03 【 時間なんて関係無いと思うが… 】
クリスマスも終え、
私は学校の宿題の残りを終えようとしていた。
LINEから野球部の部長から連絡が来た。
「 駿輔。もし、時間あればグラウンドに来れるか? 」
「 分かりました。」と書いて、家を出た。
「 駿輔。何処行くの? 」と母親の声…
「 部長に呼ばれたから野球場へ。」
「 宿題は終わらせたの? 」
「 あと、数ページで終わる。」
「 早く終わらせてね!正月は佐藤家と一緒に迎えるから、それまでにね! 」と母親はそう言って洗濯物を干していた。
多分… 練習相手しろだと言われると思ったので
試合着を鞄に入れて肩に掛けた。
家から高校の野球場まで徒歩では3時間弱ぐらい。
バスに乗る為にバス停まで早足で向かった。
「 おはよう。朝から早いね… 」
と犬と散歩している70歳ぐらいのおばさん。
「 おはようございます! 」と挨拶をした。
犬も… “ ワンワン ” と吠えた。
私は外の景色を見ながらバスに乗った。
知らない地元の人からも… バスの中で声を掛けられた。
「 ドラフト1位おめでとう。応援してますよ! 」
「 駿輔さん。プロでも頑張ってね! 」と女の子からも。
「 プロでも凄い球投げて下さいね! 」と10代の男の子。
バスで30分ぐらいで高校専用の野球場に到着。
そこには捕手で4番の子に、
三塁手を守っていた元部長の2人がそこに立っていた。
「 お!駿輔。来たか… 」
「 どうしたんだ? ○○(部長)。」
「 2年生の投手が遅れてやってくるから、それまで練習相手としてやって欲しい。」
部長の話によると、2年生投手の父親が工事現場で怪我をしてしまい、病院を寄ってから向かうとの事だ。
「 分かった! 」と私は試合着を着た。
そして、マウンドに立った。
「 先輩… お願いします!」とレギュラーで二塁手を守っている男子が打席に立った。
私は横手投でボールを投げた。
球速測定機は142kmとの記録が出た。
「 鈍ってないね。」と捕手の子←3年生。
「 俺、先輩の球受けてみたいです。」と2年生の捕手。
「 大丈夫なのか?」と3年生の捕手。
「 はい、やってみます。」と座り出した。
「 ○○(2年生の捕手)。本気で投げて良いんだな? 」
「 はい… お願いします! 」
私は横手投でボールを投げた。
球速測定機は145kmとの記録が出た。
〈 ストラァァァーイク〉と部長。
「 球、速いです。手が痺れますね…… 」と彼。
「 ありがとうございました!」
とレギュラーでニ塁手を守っている男子が御辞儀をした。
次は2年で右翼手を守ってる男の子。
「 お願いしまぁーす。」と鉄兜を取り御辞儀した。
私は投げた。変化球のカーブを…
球速測定機は110kmと選手権より遅め。
その次の球もカーブ。球速測定機は108km
プロに入る前にカーブの調整をする事に決めた。
その後… 打席に2年生5.6人。1人5.6球と粘られた。
そして、その後… 2年生投手の子が遅れてやってきた。
「 父親はなんとか大丈夫です。」
と彼はそう言い、上着を脱ぐと試合着になっていた。
私と部長と4番で捕手の3人は後ろで2年生達を見ていた。
夕方4時頃になっていた。
外は太陽が… 陽が雲に隠れる沈む所だった。
2年生達数人はまだプレーをしていた。
そして、野球場の駐車場から車の警笛が鳴った。
そこには、夏葉先生と妹の香奈が一緒に居たのだ。
「 あれ?香奈ちゃんじゃない? 」
「 嘘!GRT48の香奈ちゃん? 」
「 げ、あの鬼教師。なんで香奈の奴と一緒に居るんだ? 」
「 うわぁー。あの鬼教師!俺嫌い。」
と2年生達はでかい声で喋っていた。
私は朝、母親に迎えに来てくれと一言も言ってないのにと思い無視しようとしたが… 2回目の警笛を鳴らされた。
「 多分… 俺の迎えだわ。」と私は言った。
「 駿輔。お前か… でもなんであの鬼教師なんだ? 」
「 多分、俺の母親が迎えに来てくれと頼んだんじゃないのか? 」と言うと、
部長は驚いて言った。
「 え?お前の母とあの鬼教師って知り合いなの? 」
私は部長と4番で捕手の子の耳元で小さく言った。
「 実は、俺と先生は隣人。つまり家が隣って訳…
あ、これは組の皆には言ってないから内緒な! 」
「 え?あの鬼教師と? 」
「 駿輔。本当か!? 」と驚いた。
「 でも、お前とあの鬼教師は関係あるのか? 」
「 関係無いって言ったら嘘になる。これ言ったら先生に怒られるからやっぱり辞めとく。」と私は2人に…
すると4番で捕手の子は小さい声で言った。
「 まさか、お前と先生。付き合ってる訳? 」
「 な、まさか。」と部長も声をでかくした。
私は小さく頷いた。
「 おい、おい。マジかよ! 」
「 駿輔。そりゃねぇいぜー! 」と2人はそれぞれ言った。
「 この事は誰にも言うな… 言ったら先生にボコられるから!宜しく頼むな! 」と私は試合着のまま2人の居るところへ走った。
「 すまん… お待たせしました。」
「 お兄ちゃん。遅いよ!夏葉さんが待ってるんだから… 」
「 すいません、先生。」と私は車の中に入った。
「 良いよ。兄ちゃん!って、汗臭い。」と香奈が。
「 ごめんごめん… 」
「 家着いたらすぐ風呂入ってね!私沸かすから… 」
「 ありがとう。 」と私は妹に言った。
「 香奈ちゃんは家族思いなんだね… 」
「 うん。お母さんもお父さんもお兄ちゃんも大好き! 」
「 ありがとう… 香奈よ。」と私は香奈の頭を撫でた。
香奈は私と夏葉先生にいきなり聞いた。
「 2人見て思ったんだけど… いつから交際始めるの? 」
「 か、か、香奈ちゃん。私は先生だよ?網谷君は生徒。先生と生徒が関係持ったらヤバいよね?それに大事態だよ? 」
「 うん… それは知ってる。鬼教師って呼ばれてる先生にプロ入りも決定してるお兄ちゃん。比較にもならないのは知ってる。」
「 なら、尚更。ヤバいよね? 」
ちょっと待て… 先生は気付いてない。鬼教師って言葉に。
私は思った。香奈は何故?先生の事を鬼教師だと知っているのか、私のドラフト入りは勿論家族だから知ってるが、先生が鬼教師だと呼ばれているのか聞きたかったが、敢えて聞かない事にした。
「 なら、隠せば良いやん。それに時間なんて関係ないでしょ?好きなら好きで。30分とか1時間とかそんな時間を決めるから決められた時間で過ごさなきゃ行けないし… それに私だったら映画とかその後の食事とか1時間或いは2時間では出来ないかな… 」と香奈は長々と喋った。
香奈の言う通りだった。
でも、私は先生にそういう風に言うと怒られるので言えなかった。
「 香奈ちゃん。もしそれをしたら先生は学校にバレて辞めなきゃ行けないでしょ? 」
「 なら、校長とか教頭とかに相談してみたら? 」
「 そう簡単には行かないの… 」と夏葉先生は言った。
「 なら、夏葉先生のお父さんや私の父に聞いてみようか? 」
「 いや、それは良い。自分達で聞くわ! 」
「 なら、お兄ちゃん。正月は私居ないけど… 絶対夏葉さんと交際してよね?出来る?夏葉さんのお父さんとお母さんに聞ける? 」と香奈は私に言った。
「 おう、分かった。聞いてみる。」と言い、
私と香奈は夏葉先生の運転で家に着いたのである。
そして、残りの数ページをやって冬休みの宿題が終了。
あれから日にちは経過… 大晦日の日がやってきた。
香奈はGRTの為に東京へ帰って行った。
妹に寄ると… 1月3日?1月4日に1度戻ってくるの事。
大晦日は家の大掃除。
普段使わない所や着ない服とか使わない道具を捨てた。
あとは正月の三が日。
1月1日~1月3日は出来るだけ料理をしないと言う習わし。
それを大晦日の日に出来るだけ料理をして置く事。
最後は年越し蕎麦。
長く幸せに暮らす為の縁起物。家族揃って…
私は家で家の大掃除をしていた。
(※母親達が料理をしている間に… )
夏葉先生は同じような感じで掃除をしているのかは不明。
その後に母と並んで一緒に正月の料理を作った。
黒豆、海老、栗きんとんに蒲鉾。
数の子に炙牛肉。すき焼きに手作り餃子。
母曰く、黒豆と炙牛肉は手作り派。
なので、夏葉さんの母親と一緒に並んで手作業で。
勿論… 炙牛肉の肉と黒豆の豆は買ってあった物。
餃子の種は挽肉や葱も最初から。
それだけで半日が過ぎた。
そして、大晦日の夜に私は父と母の3人になった。
「 香奈が居ないけど、年越し蕎麦食べようか… 」
「 そうですね。」と父の後に母が言った。
“ 頂きます。 ” と3人は一緒に手を合わせ蕎麦を食べた。
そして、母さんが洗い物をしてると…
「 駿輔。朝も言ったと思うが… 元旦の日、佐藤家と食事するから忘れずにね!分かった? 」
「 分かった。」と言い、自分の部屋へ。
すると、先生から電話が掛かってきた。
「 もしもし、先生。」
「 起きてた? 」
「 はい、まだ起きてます。」
「 年越し蕎麦食べた? 」
「 食べました。で、用件は? 」
「 なら、軽く話す。明日君達の家と食事する事になったから、それだけ。宜しくね! 」
「 分かりました。先生は明日朝から神社行きますか? 」
「 んー… 分からない。多分無いと思う。」
「 なら、一緒に初詣行きませんか? 」
「 私と? 」夏葉先生は私に声を大きくして言った。
「 はい。先生と… 妹は東京帰りましたし、」
「 なら、出掛ける時に電話してね! 」
「 分かりました。」と先生は電話を切った。
広島市は初詣する神社が6つある。
⑴広島護国⑵浄土寺⑶厳島⑷亀山⑸住吉⑹草戸稲荷
家から近いのは広島護国神社。車で7分。徒歩28分。
厳島神社は車で1時間ぐらい。
どっちで行くのかは先生に聞いてみないと分からない。
多分、もう先生は横になっているだろうと思い電話は掛けなかった。
時刻は夜11時になる頃だった。