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Times Limit Lover ~ プロ野球入団予定の私と隣人の鬼教師の時間制限の恋 〜  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『 Times Limit Lover』(夏葉視点)
26/39

第6話:「音が聞こえない日」



――


◆冒頭:月曜日の朝/職員室


(夏葉が席に着き、机の上に広がる生徒の楽譜に目を通している)


同僚教師「この前のライブ、見に行きましたよ。あの香奈さんって、本当にお義妹さんだったんですね!」


夏葉(笑って)

「ええ、私も驚いたくらいです。でも……おかげで部の子たち、やる気がぐっと上がりました」


(ふと、1枚の楽譜に目が止まる)


夏葉(心の声)

「……このアレンジ、変わってる。音が逃げてる……?」


――


◆昼休み/吹奏楽部の練習室


(部員たちは活気にあふれているが、一人だけ黙々と座っている女子生徒・蓮見沙織)


夏葉「沙織さん、調子悪い?」


沙織(顔を伏せたまま)

「先生……なんか最近、音が、自分のじゃないみたいで……」


(静まり返る部室。部員たちが気遣うように沙織を見る)


沙織「香奈ちゃんの演奏、凄すぎて……なんか、私の音が、全部嘘みたいに思えちゃって」


部員A「そんなことないよ!沙織は沙織の音があるって!」


夏葉「……その気持ち、すごくよくわかる。でも、比べるために音楽をやってるんじゃないよね」


沙織「……」


夏葉「もう一度、自分の“音”を信じてみて。私は、沙織さんの音が好きよ」


――


◆夕方・自宅/網谷家のリビング


(夏葉、ソファで沈んだ様子)


駿輔「どうした?部活で何かあったか?」


夏葉「うん……一人の子が、自分の音に自信をなくしててね。香奈ちゃんのライブが、ちょっと刺激強すぎたみたい」


駿輔「それだけ響いたんだろうな。でも、それって音が“届いた”ってことじゃないか?」


夏葉「そう……だよね。でも、生徒の心の中までは吹けないから、難しいの」


駿輔(優しく肩を抱き)

「俺たちも、野球で似たようなことあるよ。“あの人には敵わない”って思った時こそ、原点に戻るんだ」


夏葉「……原点」


――


◆翌日/校庭の片隅


(沙織が一人、クラリネットを持って音を出しているが、うまく吹けない)


(そこへ、香奈が登場)


香奈「やっほー。……クラ、いい音してたよ?」


沙織「え!?か、香奈ちゃん!?な、なんで!?」


香奈「ちょっとだけ、夏葉先生に楽譜届けに来たの。で、音が聞こえたから、つい」


沙織「……私、自信なくしてて……」


香奈「うん、分かる。でもね、自信って“ある”か“ない”かじゃなくて、“育てる”もんなんだよ」


(香奈はその場で、沙織の楽譜を見てクラリネットを吹き出す。少しだけ変えたアレンジ)


香奈「これ、どう?君の音にちょっとだけ私のスパイス。自分の音が誰かの“共演者”になると、音楽ってもっと楽しくなるよ」


沙織(少し笑って)

「……ありがとうございます」


――


◆放課後/吹奏楽部・部室


(沙織が自分から立ち上がって練習を始める)


部員A「沙織、戻ってきたね」


夏葉(心の声)

「音って、不思議。ときに背を押し、ときに寄り添う。そして――何よりも、心をつなぐ」


――


◆夜/網谷家の寝室


(夏葉、布団の中で駿輔と会話)


夏葉「今日、少しだけ、音が戻ってきた気がするの」


駿輔「お前の音、ってやつか?」


夏葉「ううん、生徒たちの音。だけど……それを信じてあげられるようになった自分に、ちょっとだけ自信が出てきた」


駿輔「それでこそ、俺の奥さんだな」


(2人、静かに笑い合い、手を繋いで眠る)


――


◆エピローグ/東京・GRT事務所


安本「……で、勝手に学校行ったって?」


香奈「ちゃんと夏葉先生に楽譜届けに行っただけだよ?」


美香(書類を見ながら)

「“音で寄り添うアイドル”……次の特集、これでいけますね」


安本「ったく。アイドルってのは、ほんと、勝手な音出すんだから」


(ふと、満足げに頷く)


――


◆ナレーション:夏葉モノローグ


「“音”は、目に見えないけれど、確かにそこにある。揺らぎ、迷い、そして……導く力になる。


もう一度、生徒たちの音と、ちゃんと向き合えるように――私は、私の音を奏でていこう。」


――



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