第7話 「夏の終わりに咲いた恋の花 ~祝福の映画デート~」
選手権大会の激闘を終え、俺たちはついに全国制覇を成し遂げた。チームメイトたちや家族、先生方の祝福に包まれて、少し肩の荷が下りた気がした。
そんな中、選手権のお祝いとしてみんなで映画館に行くことになった。
俺は約束の時間より早く、広島駅近くの映画館の前で待っていた。夕焼けに染まる空の下、蝉の声がまだ夏の名残を告げている。
そこへ、ゆっくりと軽やかな足音が近づいてきた。
「……夏葉先生、今日の服、すごく可愛いです。」
つい声に出してしまった俺に、彼女は急に顔を真っ赤に染め、
「うるさい! 呼び捨てやめてってば!」
「だって……だって、ホントに可愛いんだもん。」
「もう……駿輔ってば、素直じゃないんだから。」
小さく笑いながら、少し恥ずかしそうに目をそらす夏葉先生。そんな彼女が、いつも以上に愛おしく感じた。
「今日は特別、選手権大会のご褒美だよ。2〜3時間だけ、デートしてあげる。」
「え、マジですか? ありがとう!」
そう言うと、俺たちは二人だけの時間を楽しむため、映画館の中へ入った。
上映前、スクリーンに予告編が映し出される暗闇の中、ふと夏葉先生の唇に軽くキスをした。
「えっ!? なんで急に?」
驚いたように彼女は顔を上げ、赤く染まった頬を隠すように少し俯いた。
「だって、今の夏葉先生がすごく可愛くて……我慢できなかったんだ。」
「駿輔……」
少し怒りたそうだけど、怒れない。その複雑な表情に、俺は胸がぎゅっと締め付けられた。
映画が始まると、空気は一変し、二人とも静かに物語に集中した。キスの余韻とドキドキが胸の中で混ざり合いながら。
上映時間はあっという間に過ぎ、終わる頃には外はすっかり暗くなっていた。
「予告の時にキスしてきたでしょ?なんでなのか、ちゃんと教えて。」
彼女が真剣な目で見つめる。
「……夏葉、夏葉、可愛いから……それだけだよ。」
小声で何度も繰り返すと、彼女は顔を真っ赤にして口を尖らせた。
「夏葉って呼び方、やっぱりダメ!」
「でも……夏葉、夏葉……」
俺は小さく囁きながら、彼女の手をしっかり握った。
帰り道、二人で並んで歩きながら、距離がぐっと縮まった気がした。
家に着くと、突然彼女が俺の身体をそっと倒してきて、熱く深いキスを重ねてきた。
「我慢できなくなった?」と駿輔
「五月蝿い‼︎ ……私だって、したくなっただけ。」夏葉が怒った。
夏の終わりの夜、甘く激しい想いがぶつかり合う。
「夏葉、夏葉……」
俺の囁きに彼女はほんの少し笑って、またキスを返してくれた。
この恋がどんな未来を迎えようと、今はただ、この瞬間だけを大切にしたい――
そう強く思った、特別な夏の夜だった。
熱いキスが一度、二度、三度と重なるたびに、夏葉先生の身体が俺に寄り添い、彼女の鼓動が俺の胸に伝わってくる。時間がゆっくりと溶けていくようだった。
「駿輔……もう我慢できない……」
夏葉先生の息遣いは少し荒く、瞳には情熱と少しの不安が混じっていた。その瞳を見つめると、俺も自然と覚悟が固まっていく。
「俺も、夏葉のこと、ずっと想ってたんだ。誰にも言えなかったけど、ずっと…。」
言葉は少なかったけど、二人の間に交わされるものは言葉以上のものだった。手を繋ぎ、顔を見つめ合い、体温を感じながら、部屋の明かりを落とし、夜の静けさに包まれた。
しばらくして、夏葉先生がそっと顔を上げ、小さな声で囁いた。
「これからも、ずっと一緒にいようね。どんな困難があっても、二人で乗り越えていきたい。」
その言葉に、俺は真剣な眼差しでうなずいた。
「約束するよ。夏葉、夏葉、俺のすべてを賭けて君を守る。」
彼女はほほ笑みながら俺の胸に顔をうずめ、静かな幸せが二人を包んだ。
「ありがとう、駿輔。あなたがいてくれて、本当に良かった。」
夏の夜風が窓からそっと吹き込み、カーテンを揺らす。外の世界は変わりゆくけど、この瞬間だけは永遠に続く気がした。
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翌朝、俺たちは映画館で過ごしたあの甘くて少し照れくさい時間を思い返していた。
「ねえ、夏葉、あの映画の予告の時にキスしたの、覚えてる?」
「あれは……ずるいよ、駿輔。いきなりキスされたら、怒れないじゃない!」
彼女は顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべる。
「夏葉、夏葉って呼ぶの、俺は好きだけどな。」
「もう…駿輔ってば、何回言わせるの!」
そう言いながらも、夏葉先生は俺の手を握り返してくれた。
俺たちは映画館のロビーでしばらく話し込み、誰にも邪魔されない時間を満喫した。
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これからも続く日々の中で、俺たちは互いの温もりを確かめ合いながら、未来へと歩き続ける。




