第6話 「最後の夏、燃える覚悟と試練の光――全国制覇へと突き進む駿輔のバットが切り裂く未来」
蒸し暑い朝。セミの声が鳴り響く中、ついにその時が来た。
広島県大会――甲子園への最後の夏が幕を開けた。
「……いよいよだな、駿輔」
ベンチ裏で声をかけてきたのは、キャプテンの山崎。俺は頷くだけで、バットを握る手に力を込めた。
この夏が終われば、すべてが変わる。夏葉先生と過ごした秘密の時間。誰にも知られたくなかったけれど、隠し通せるはずもなかった“愛”の形。
校長室で明かされた、俺の親父と夏葉先生の父親、そして学校幹部たちの“裏の理解”。それは一時の救いであり、同時に俺たちに突きつけられた覚悟の形でもあった。
「今日からは、言い訳は通用しない。結果がすべてだ」
自分にそう言い聞かせ、背番号1を背負い、俺はグラウンドへと歩みを進めた。
だが、初戦前の練習で、すでに異変が起きていた。
球場の記者席に、見慣れぬ顔――以前に俺に声をかけてきた週刊誌の記者がいたのだ。レンズの向こうでこちらを見据えている。
(……また、来やがったか)
だが、目を逸らすことはしない。俺のバットは、ただ未来のために振るだけだ。
その夜、大阪桐蔭が勝ち上がってきたという速報が宿舎に届く。
「次に勝ち進めば、準決勝で当たるかもしれないぞ」
そんな話を聞く中、俺はただ黙って爪を研いでいた。
あの怪物左腕――速球とスライダーを自在に操る天才投手。スカウトの間でも“高校最強のピッチャー”と呼ばれる存在だ。
だが、俺はもう心を決めていた。
(この夏で、すべてを証明する)
(愛も、実力も、未来も――全部、このバットで)
スキャンダルはもうすぐそこに迫っている。
けれど、俺の目はただ前だけを見据えていた。
そして、広島県大会を順調に勝ち進み、激戦の末に地区大会を制して甲子園出場を決めた。
その後も勢いは止まらず、智弁和歌山や慶應義塾、京都国際、花巻東などの強豪校を次々と打ち破っていった。
試合後、相手チームの主将と握手を交わしながら、俺は言った。
「君たちも強かった。最高の試合をありがとう。」
相手も笑顔で返す。
「お前らのバッティング、すごかったよ。またどこかで勝負しような。」
準決勝では富山第二高校との激しい死闘。息が詰まるような緊張感の中、最後まで集中を切らさず勝利を掴んだ。
「ここまできた。絶対に勝つぞ!」
キャプテンの山崎が叫ぶ。俺たちは頷き、気持ちをひとつにした。
そして決勝戦。宿敵・大阪桐蔭高校との対決。試合前、相手主将が近づいてきて言った。
「お前らと戦えるのを楽しみにしてた。最高の舞台にしようぜ。」
俺も応える。
「絶対に負けない。全力でぶつかろう。」
相手の大阪桐蔭も横浜高校、中京大学附属中京高校、仙台育英高校、星稜高校などの強豪校を倒し、決勝戦にて… 俺たち(広陵高校)はついに全国制覇を成し遂げた。
試合後、俺は胸に込み上げる想いをかみしめながら言った。
「この夏は、ただの勝利じゃない。守りたかった想いも、背負った覚悟も、すべてをここに刻み込んだんだ。」
仲間たちが静かに頷き合う。俺の最後の夏は、決して忘れられない、一生の誇りとなった。




