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時計技師コンラッド

作者: 茜カナコ

 ウッド家は、代々時計職人を生業としていた。


 その家の次男として生まれたコンラッドは、たぐいまれなる時計職人の才能があった。

「コンラッド、今度の仕事の相手は貴族様だ。失礼の無いように気をつけろ」

「分かったよ、父さん、兄さん」


 三人は壁時計の修理を頼まれたブライアント家に出かけていった。

「こんにちは、時計屋です」

「あら、はやかったですね。こちらへどうぞ」


 三人が通されたのは客間で、そこの立派な柱時計が止まっていた。

「この時計ですか?」

「ええ」

 ウッド家の三人は時計と柱に傷を付けないように気をつけて、柱時計を外した。


「それでは来週には直して、こちらにお持ちできると思います」

 ウッド家の父親と兄が時計を運んだ。コンラッドは、ドアを開けたり、ぶつかりそうな物は無いか、すこし先に歩いていた。

 その時、ふいにコンラッドは一人の少女に声をかけられた。


「あの、いまこれを落としましたよ?」

「あ、ありがとうございます。壊れてないと良いけど」

「それは何ですの?」

 少女はコンラッドの手の中の懐中時計をのぞき込んだ。


「これは仕掛け時計です。ほら」

 そう言ってコンラッドが懐中時計を開くと、その中では小さな天使が動いていた。

「素敵!」

 少女は目を輝かせた。


「よろしかったら、差し上げますよ」

 コンラッドは懐中時計を閉じて、少女に差し出した。

「え!? こんな高価な物、頂くわけには……」


「僕の家は時計技師ですから。いくつか、練習のために作ってるんですよ」

 コンラッドはそう言って笑った。

「そうなんですか? それではお言葉に甘えて頂きます」


 少女は懐中時計を受け取ると、それを開いて天使をじっと見つめた。

「何て綺麗なのかしら」

 少女はしばらく時計に見とれていたが、はっとして、コンラッドを見た。


「申し遅れました。私、アグネス・ブライアントと申します」

「僕はコンラッド・ウッドです。よろしく」

 アグネスはポケットに時計をそっとしまうと、手を差し出した。


「よろしくお願いします」

 アグネスとコンラッドは握手をした。

「おーい! コンラッド、帰るぞ!?」

「はい、父さん、兄さん」


 コンラッドは慌てて二人の後を追った。


 

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