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前世は大聖女でした。今世は普通の令嬢として、泣き虫騎士と幸せな結婚をしたい!  作者:
本編

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プロポーズ

「アンドリュー陛下。お久しぶりでございます」


 本当は先週顔を合わせているのだが、それは知らぬ顔で通さないといけない。私は日傘を畳み、淑女の礼をとって頭を下げた。


「トーマス、すまんが先に行っていてくれ。私はアイリス嬢と少し話してから行く」


「わかりました、陛下」


 トーマスと呼ばれた側近らしき男は恭しく礼をすると、もう一人の男と共に仮の王宮である迎賓館へ向かった。一人はアンドリューから距離を取って残っていた。恐らく護衛なのだろう。


「アイリス、日傘をさせ。日焼けで鼻が赤くなったらみっともないからな」


 ひどい言い方ね、と思いながら「では失礼します」と呟いて日傘を広げた。


「キャスリンの様子はどうだ? 私も折に触れて様子を見てるのだが、なかなかゆっくりとした時間はとれないのだ」


「だいぶ落ち着いてきたわ。あなたの力になりたいって健気に振る舞っていたわよ」


「そうか。気丈にしていてもまだ母が恋しい年ごろだからな、これからも見守ってやってくれ」


「もちろんそのつもりよ。でもね、アンドリュー。キャスリンにはそろそろ歳の近いお友達も必要だわ。スージィたちに代わるお友達が。それでね、コートウェル公爵夫人に、誰か良い子を紹介してもらおうと思うの」


「そうだな。夫人ならたくさんの子供たちを知っているから、キャスリンに相応しい子を選んでくれるだろう」


 私は頷いた。王宮にたくさんの子供を招いてお茶会を開いてもいいかもしれない。私はキャスリンの年でエドガーに出会ったのだから、キャスリンも運命の恋人や親友に出会える可能性は十分にある。


「ではその件はアイリスに任せる。夫人にもよろしく伝えておいてくれ」


「わかったわ」


 ふと沈黙が訪れた。私たちは黙ったまま前を向き、騎士たちの訓練を見つめていた。


「アイリス。返事を聞かせてくれるか」


 アンドリューが小声で、護衛に聞こえないように語りかけてきた。私は柔らかく微笑んで彼の目を見つめる。


「ええ。私の返事は――」


☆☆☆☆☆


 先週のこと、突然私の家にアンドリューがやって来た。護衛も付けずにお忍びで。そして、私にプロポーズをした。


「アイリス。私の妃になってくれないか」


 いきなりの申し込みに私は驚いて腰が抜けるかと思った。


「ええっ? 私に? どうして?」


 アンドリューは美しい金髪をサラリとかき上げ、ほんのわずかに顔を赤らめながら言いにくそうにポツリポツリと話し始めた。


「前世で、私はアディとずっと一緒にいたいと思っていた。二人で旅をしていた時の居心地の良さ、屈託のない笑顔、それら全てを大切に思っていた。だが神殿にいるお前は生気に乏しく、何かを諦めた顔で毎日を過ごしていた。だから、お前を連れて逃げようと思ったんだ」


「……観月祭の夜のことね?」


「ああ。お前も俺を好いていてくれると、俺は自惚れていた。だからお前に拒否されて、俺は……かなり落ち込んだ」


「あの後、あなたは随分私にひどい態度を取ったわ」


 本心からではないが、少し怒ったふりをして見せるとアンドリューはすまなそうな顔をして鼻の頭を人差し指で触った。


「俺もガキだった。自分は女から好かれると思い上がっていたんだな。それからはお前を忘れようと結構遊び歩いて……」


「まあ! そんなのは知らなかったわ」


「仕方がないだろう、男なんだから」


 別に私も怒る筋合いはないのだが、なんとなくムッとした。アンドリューは笑いながら答えていたが。


「それでも結婚したいと思うほどの相手には出会えず、独身のまま一人で寂しく死んだ。その時に、やはり後悔が押し寄せてきたよ。どうしてもう一度アディの所へ行かなかったのかと。彼女を無理にでも連れ出して、二人で国外へ逃げだせばよかったのに。もし生まれ変われたなら、今度こそアディと添い遂げたい、そう願って死んだら……こうなっていた」


 そんな風に強く思っていてくれたのか。アンドリューが前世の記憶を持って転生したのは、もしかしてリカルドの強い未練が影響したのだろうか。


「なあアイリス。エドガーは、リカルドに似ていないか? 黒髪、青い目、剣の腕。お前がエドガーを好きだと言うのも、前世でリカルドを好きだった影響じゃないのか?」


 それを言われて私は動揺した。実は私も、そうではないかと思ったことがあるのだ。エドガーに一目惚れしたのは、リカルドに似ていたからでは……と。


「もしそうなら……どうだと言うの?」


「アデリンとリカルドを結婚させないか」


「え……」


「俺とお前が結婚して、あの二人の想いを遂げさせてやりたい。俺たちが揃って転生したのは、そのためなんじゃないかと思うんだ」


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