メラニーとの抱擁
エレンとの会話が終わると私はメラニーを呼んだ。メラニーにだけは、本当のことを言っておこうと思ったのだ。
「あら、エドガー様はいつの間にお帰りになったんですか?」
手がつけられていないティーセットを見て、メラニーは不思議そうに言った。
「メラニー、落ち着いて聞いてね。実は――」
☆☆☆
「では、そのディザストロを倒さなければこの国の未来はないのですね」
神妙な面持ちで聞くメラニーに、私も真剣に頷く。
「そうなの。今日の王宮の惨劇はすぐに皆が知ることになるわ。幸い、お父様とお兄様は文官で二階が職場だったから無事だったけれど、次にあいつらがどこに現れるかは誰にもわからないの」
「どこに逃げようが危険は変わらない、と」
「ええ」
メラニーはしばらく考えていた。そして、いつもの明るい笑顔になるとこう言った。
「大好きなアイリス様の前世が、大好きなアデリン様だったなんて、倍の嬉しさです。私はずっとアイリス様付きのメイドですからね。このお屋敷で、ドンと構えてアイリス様を待ってます。だから、どうかご無事で……エドガー様を連れて二人一緒に帰って来て下さいね」
ほんの少し、目尻に涙が光っている。私がそっと抱き締めると、メラニーもギュッと抱き返してくれた。
「留守中のことはお任せ下さい。上手く誤魔化しますので」
「助かるわ。それが心配だったの。じゃあ……よろしくね」
私は『隠れよ』と唱え姿を消した。メラニーが、こぼれ落ちそうなほど目を丸くして驚いている。その耳元に「行ってきます」とそっと囁いて、私は窓から飛んで出て行った。
北へ向かって飛んでいると、肩に止まっていたヒューイが話し掛けてきた。
「アイリス、長老から返事が来た」
「長老は、何て言ってるの?」
「あの男の結界からは奴の気配が少し感じられたそうだ。ただ、妖精族に伝わるディザストロとは、巨大で、本能のままに暴れ回る動物のようなものらしいんだ。あんな風に人の言葉を話す知能があるとは思えないと」
「あいつはドラーゴを『差し向ける』と言っていたわ。ドラーゴより上位ということよね。ということは、やはりあいつはディザストロ……」
災厄と呼ばれるほどの巨大なモノが、知能を持って世界を攻撃したら……どんなことになるのだろうか。王宮でも、王の部屋をピンポイントで狙って攻撃している。王を消せば国の機能が停止することを知っているとしか思えない。
「進化しているのは人間だけじゃないってことね」
とにかくエドガーとディザストロの手がかりを何かしら見つけなければならない。私はスピードを上げて北の大地へ向かった。




