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序章

 古代、ルドモンドの学者や魔術師は、宮廷庭園の東屋に集い、学問や研究を行った。

 ツタの葉が鬱蒼と巻きついた東屋の柱と、一体に見えるほど、知に打ち込む彼らを見て、民衆はいつからか、彼らを東屋そのもの、【Arbor(アルバ)】と呼ぶようになった。

 数千年の時を経て、アルバの名は、帝国魔術師の資格職として巷間に広まっているが、今もなお「帝国に仕える者」であることに変わりはない。


 鉄と赤土と太鼓の町・サウザス地区。

 どこまでも広がる赤土の大地には、多くの鉄資源が地下に眠っている。

 昼は、あちこちの製鉄所や鍛冶場から、活気あるトンカチの音が響きわたり、夜は夜で、大通りから町の端まで、陽気な太鼓の音が鳴りわたる。


 太鼓は、サウザスから遠く離れた西の地区・グレキス名産の物が主流だ。どういうわけか120年前から、サウザスでは太鼓が流行っている。

 各家庭に太鼓があるのはもちろん、町の各地で太鼓隊が結成され、日々の暮らしや祭りの賑わいに一役買っている。

 サウザスの住民は、鉄と太鼓の音が大好きだ。



 ここは町で一番大きな酒場ラタ・タッタ。

 酒場と下宿を兼ねた赤い大きな建物に、酒と太鼓の音を求めて、夜な夜な住民たちが集まってくる。

 夕方、鉱山終業のベルが鳴ると同時に店が開き、ドンチャン騒ぎが繰り広げられる。酒場お抱えの、太鼓隊が鳴らす太鼓の音色は、毎日が祭りのように楽しく、常に、騒がしい。


 そんな夜の喧騒がウソのように、昼間しんと静まり返るこの酒場だが、時おり堅く閉ざされた玄関ドアを、忍ぶようにトントン叩き、ひっそり訪れる者もいる。

 訪問者は、不運にも、採掘場や製鉄場で傷を負った住民たちだ。

 ここの下宿には、今年20歳になる若い男のアルバ──



 ショーン・ターナーが住み着いているのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] とっても面白そうな第一話ですね。 これからゆっくり拝読いたします。
[良い点] 柱と同一視されている学者についてを挟んだ二枚の挿絵は柱の上と下を表されているのでしょうか? 縦スクロールならではで素敵ですね!
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