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「アスタ様、アオ......マロウ様にこれからの事をお話なされなくても宜しいのですか?」


行者席の小窓からセルちゃんが声をかける。どうやら向かっているトートフォンヴンダーについて私に言うべき事があるらしい。『ハァー』とため息をするアスタロット様。


それほどまで説明するのがお嫌いか!


気持ちはわかる!凄くわかるよ。

映像を頭に叩き入れる力業は悪魔だから手っ取り早く出来ることであろう。私でも説明下手だから映像での説明は受け入れたいのは山々だが、あれは説明では無いぞ!

言いたいことが分かる様な分からない様なものだった。要点が皆無だよ!オマケに、乗り物酔いに似た気持ち悪さが脳ミソに渦巻いてキツイんだ。


「そうですね...簡潔に言いますと、マロウには三択の.........いや、正確には二択ですかね。そのどちらかを選択していただきます。ひとつは、トートフォンヴンダーの正式な住人になって頂くか、もしくは元の体に戻るかですね。」


なにそれ!?

トートフォンヴンダーの住人ってイコール死者ってことでしょ?


勿論、元の体に戻りますよ?当然、死んでないのだから一択でしょ?



「マロウは元の体に戻ると言うと思いますが、二つ問題があります。一つは、再生の儀は年に一回行われます。もう一つは、魔力を極めしき者であることが条件であることです。マロウ......ワタクシが何を言いたいか分かりますか?」


............みなまで言わないでもわかる。馬車に乗ってからスルーしていた違和感と共に問題提起を突きつけられたみたいだ!



馬車に揺られて暗い外を窓からボケーと眺めてスルーしてたけど、避けては通れない繋がりがあるらしい。窓に映るセルちゃんと同年代に見える少女。黒曜石と変わらぬ髪色、カッコ悪いと思っていた鼻輪でさえ、神秘的な一種のファッションと成り立っている。



これはアレか?

謎の黒い組織に毒を飲まされたてしまったアレか?




「失礼ですね~ワタクシのクッキーは毒では無いですよ?今は、生命エネルギーで肉体を構成されます。人間は元々、エネルギー自体少量しか所持してません。ですので今のマロウの姿と魔力は等しいのです」




すみません、嘘です。クッキー美味しく食べました。



だとしたら、言いたい事って今現在、条件が満たしていない上に、人間だから魔力を極め難いと言いたいのか。



何て事だ!

せめて、身長が縮むのでなく、昔からの悩みだった耳鳴りと飛蚊病を取り除いてくれれば良かったのに.....



物心つく頃から、目の前に小さな青と赤と黒のシャボン玉が飛んで見えた。通常なら眼の老化により始まるソレが私の人生に影を作っているとさえ思う。



まぁ、それは今は置いておこう。



元々、人間に魔力等の概念など無いのだから無理なのは当たり前だ。

待てまて...人間だから難しいのだとしたら人間でない者になる必要がある?



「ご名答。ワタクシの言いたい事を理解して頂いたようで何より。マロウ、相談なのですが、悪魔見習いに成りませんか?悪魔は魔力に長けた種族です。魔力について学んで頂ければ、マロウなら再生の儀までには条件を満たす事が出来ると思いますよ?」



悪魔ですか!?

これまた予想外な展開だ。人間として元に戻るために、皮肉にも人間を捨てるみたいだ.....



「飽くまで、悪魔見習いですけどね。ちなみに、人間より楽しいはずですよ。復讐なんかもできますからね。」



復讐......



アスタロット様は穏やかな笑みを浮かべる。いっそう神々しい笑みは悪魔とは思えない。



『復讐』と言う言葉が、何故か光を帯びて私の中にある暗闇を灯す感覚に捕らわれる。

揺れ動く心、このまま流されるのはヤバイかな......



「無論、多少の『お願い』は有るかもしれませんが『命令』はいたしませんよ......約束します」



「アスタロット様、わかりました。ここで悪魔見習いマロウの誕生って事で宜しくお願いします。」


馬車の中、向かい合いアスタロット様に頭下げる。

優しく労るように頭を撫でられ、重くのし掛かっていた不安が消えてなくなる。



こうして生きるため(竜也とナツ達に復讐する事も多少だが理由に含むけど)私は、『悪魔見習いマロウ』としてなった。



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