記憶の遡及①
少し長くなったので分けます。
ご了承お願いします。
「はぁ~」
ため息が漏れる。
会話だけで体力(主に精神的な意味で)低下した感じだ。
なぜ、私が...
思わず、頬に手をやると、生温い液体が触れる。どうやら涙らしい。本当にこんな透けた体でも涙が出るのか。涙だと認識すると余計にボロボロと溢れてくる。
「お使いください。」
アスタロット様にハンカチを差し出されてる。こういう所は紳士的でであるなぁ~
ハンカチを受けとり、涙を拭う。
ちなみに、『様』付けは本能に従ってだ。
「ここでは落ち着かないので馬車にでも乗って、これからの事を説明しましょうか。」
そう言うとアスタロット様は、下まで優雅に降りて散乱した私の荷物を魔法らしきものを駆使し纏め挙げたあげた。彼が持ち上げた荷物は地面に転がったままだが、アスタロットの手元にはちゃんと私の鞄が抱えられている。説明などさっきと同様の映画映像ならお断りなのだが、ここは黙って従う。
あと、荷物も幽体離脱をするのか~って変な感想を抱いた自分は決して間違っては無いはず。
ふと、辺りを見回すと、どうやら私の体は救急車で運ばれて行った後で、残っている人は警察人らしく、交通整備や事故の原因を調べてるみたい。私やアスタロットが隣に居ても気にも止めない(やっぱり、見えてないのかな)
心地悪さを感じながら、アスタロット様か空間を裂けて呼び寄せた馬車に乗り込む。フワフワとした椅子、暖房が完備さてた暖かさ。それだけでも抱いていた重荷が解けていく。ちなみに、馬は馬でも機械化されて、もはやロボット車。青色の未来型ロボットお腹のポケットから取り出す幻影で見えた気がした。
行者席にはセルちゃんが座り、馬を操り進みだす。
「はぁ~~~~~ぁ」
二度目のため息が馬車の中に響く。
現実逃避しようにも逃避出来ない現実。私は改めて、今日一日を朝から振り返ってみる事にした。
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愛用のスマホのアラーム もとい、キャラクターボイスが私の起床時間を知らせる。寒さが厳しい今日この頃。骸骨の音楽家は不気味な笑い声で私を一日の始まりを導くが、布団の温もりの誘惑と起きなければならない使命との脳内バトルを毎度の如く繰り返す。
やっとの思いでベッドから抜け出て、テレビの電源をいれ、朝食として食パンとホットミルクを済ませる。女子アナが政治家の汚職やら、二十年ぶりに死刑執行がなされた事や、アイドルの結婚やらを原稿に沿って伝えている。おもむろに食パン を持ってたてを置き、テレビ画面で時間を確認 する。いつもと同じ様に支度を済ませ、お祖母ちゃんの写真が手向けられた仏壇に手を合わせ「行ってきます」と告げた。
駅までの途中では植えられたポインセチアが艶やかな色合いを見せ、寒さなど関係無いと言いたげだか、寒いものは寒い。手袋をはめていても冷たい冷気が伝わる。手を擦り合わせ摩擦熱に頼る。(まぁ、効果は期待出来ないが)
少しだけ、寒さに耐性を持つ彼らを羨ましく思った。寒い中、可愛いらしく咲き誇ることができ、荒んだ私の心を和らげるのだからその在感は希有だろう。私にも、せめて三分の一ほどの可愛げがあれば......
「おはよう!アオっち。何をそんな怖い顔してるの~ かわいい顔が大無い!笑顔、笑顔~♪」
せめて、彼女並の美貌は無理でも愛想があれば話は変わっただろ。
後ろから声をかけ頬笑む彼女、川石ナツを見ながら改めて思う。クールでカッコ良くをモットーに頑張ろう。そっちの方が私に合ってる。
小学生の時から一緒にいる彼女、川石ナツは日本人場馴れした白い肌と最高級の絹に引けを取らない長い髪。私と同じ歳とは思えない少女の様に儚く可憐だ...........
見た目だけだが。
昔は見た目と同じ、もしくはそれ以上に体が弱く、いわゆる絵に書いた窓辺の資産家令嬢といったところか。今ではイメージしがたいほど健康体になった。体育の授業は見た目を生かしてサボったり、カブトムシを捕まえに昼間山に入ったりする残念美人だ。どういうわけか、私が転校してきた日にトイレの場所を聞いただけなの懐かれ今に至る。
「アオっちの学校も、テスト?午前中で終わるよね~?」
「あぁ、そうだね。」
ホームの階段をトコトコ降りながら何気ない会話をする。私の答えに満足げのナツが午後からの予定をすかさずカラオケに決定した。
「じゃぁ、他のメンツ呼ぼうか~♪ メッセージアプリ送っとく~」
携帯を取り出し、歩きながらメッセージを打ち込む。転ける未来しか見えない。
「ナツ、階段なんだから気を付けないと転け.........」
しまった!
転けると言おうとして案の定、不覚にも私が躓いてしまった。