オープニングは突然に
初めましてこんにちは。
初めて投稿させていただきます。
楽しんで頂ければ幸いです。
おびただしい人の群、遠く聞こえる不穏なサイレン。路肩に止まるトレーラー。
私はいまいち現状を把握できずに、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
いや、正確には立っていない。
だからこそ、目下に広がる情景を認識はできても、把握に時間が掛かっている。
アスファルトに紅く染まった海が広がり、その中央に横たわる十代後半に見える黒髪ショートの女性を空中に浮いた私が見つめている。
混乱する意識の中でありながら、いたって冷静である。
身長は百五十後半であろう、その女性は見覚えのある服を着ていて、これまた見慣れた鞄が脇道に投げ出されていた。
いやいや、似てる人間なんて世の中、三人は存在するって話ではないか!
というか、鞄から覗くスマホは、今人気のアニメ漫画とコラボした限定品。斯く言う、私の愛用スマホと同携帯だ。見れば見るほど彼女は私自身にそっくりだ。
恐る恐る、自分の手に視線を向ける。自分の手が透けて、その先に倒れた私の姿を見ることができた。
相反する感情が一つの結論に達した。
私…島宮葵は大型トレーラーと激突し、二十五歳の生涯を終えたのだと。
まさか二十五で、さすがに死ぬなんて思いもしなかった。
『死んでませんよ?あなた?』
これまで、お腹が痛くなって死ぬかと思ったりもしたけど、そんな事なかったし、階段や遊具から落ちても擦り傷程度でたかが知れた。
私の悪運も幸運も、今日の最低最悪の運気で使いきってしまっらしい…
哀れだ、自分。
いくらなんでも、いきなりすぎて泣くに泣けないわ。死んで泣ける体では無いが。
『幽体離脱ですよ?頑張れば涙、でますよ?』
死んだら天使が迎えに来てくれるのかな~
いや、死神か!
ここがノベルの世界なら神様が出てきて『異世界に転生しますか?Yes or No』って聞いて来る流れだろうに…まぁ、リアルでは有り得ないのだが。
『迎えに来たのは、天使では無く悪魔ですね!』
あれ?頭の中で誰か、死んでないって言った?だれが?
てか、頑張れば涙出るのか!こんな透けた体から!
しかも、お迎えが悪魔かよ!?
訂正してきた声に気付き、目の前にいる声の主と思わしき人物と目があった。