59.トイレの王妃様、ヒロインの素行調査を続ける
びっくりだ。
ソフィアの居室はちょっと離れたところにあるなあ、くらいにしか思っていなかったし、ソフィア付きの侍女もその他の王族付き使用人たちと同じ棟に住んでいると思っていた。
国王一家の晩餐にソフィアが来ないのも、わたしと顔を合わせたくないとかの理由があって、そんなわがままをウィルやユアンが許しているのかと思っていた。
それが、まさか。
まさか、軟禁されているとはね!
***
「城内に、ソフィア付きの使用人と交友のある者はおりませんでした」
「それは、ソフィア付きの者たちだけで固まって仲良くしている、ということ?」
「仲良く、というのも違うのですが」
二日ぶりにわたしの部屋に来て、そう報告してくれるルイーズに、労りの意味を込めて、お茶をいれた。
城内でソフィアの侍女と仲のいい使用人仲間を探そうとしても、見つからなかった。
わたしやルイーズの侍女は、ソフィア付きの使用人を見かけることはあまりない、と言った。
使用人たちのたまり場にも、用があるときしか来ないらしい。
侍女らにわたしたちの調査内容を知られたら、「トイレの王妃様が王太子妃をいびってる」みたいな噂が立ちそうだったから、ものすごく体をはった方法を取ることになった。
ルイーズがメイドの服を着て、張り込みをしたのだ。
ルイーズは今、アイオライト王国の重鎮カーライル公爵のご夫人なのだけど。
頑張ったルイーズによると、ソフィアの侍女のひとり、ヴァノーラの後をつけると、仕事が終わるとすぐにソフィアの寝室の裏手にある建物に入っていったという。
しばらく見張ったが、ソフィア付きの使用人たちはどうやら皆、通常の使用人棟ではなくて、その別棟で暮らしているようだった。
わたしもルイーズも、そんな建物がいつ出来たのか、まったく気づかなかった。
別棟は、外から見て特別豪華というわけでもなかったが、厨房があり、ソフィアの食事もそこから供されているのが確認できた。
まるで、ソフィアを使用人ごと隔離しているみたいだ。
「あんな立派な使用人寮を建てるなんて、ソフィア様のお力だけでは無理だと思います」
「わたしもそう思うわ。ウィルが建てさせたんだと思う。ユアンにはまだ城内をどうこうする力はないもの」
「やはり、ウィリアム陛下に直接お聞きになるほうが良いのではないでしょうか」
「でも、ウィルがわたしに何も言ってこない以上、わたしが知らなくてもいいことか、わたしに知られたくないということか、どちらかなのよ。だから、極力ウィルを煩わさないように、何が起こっているのか知りたいの」
「ウィリアム陛下に限って、ソフィア様に懸想しているということはないと思いますが」
直球で言葉にしてきたルイーズに、すこしドキリとしてしまった。
いや、ないんだけどね。
ウィルがソフィアを好いている、というのはまったく無いと確信している。
例え有ったとしても、息子の嫁に横恋慕して特別扱いなんてスキャンダルになりかねないこと、ウィルがするとは思えない。
そうじゃなくて、むしろ、この隔離っぷりは、わたしにソフィアを近づけないようにしている、という気がする。
「ウィルにも訳があるのだと思う。なるべくウィルに知らさずに調べて、わたしのほうに問題がないようだったら、このまま知らないふりをするわ」
「ロジーナ様がそう仰るのであれば、私は従うまでですが……」
ルイーズは不満げに唇をとがらせた。
自分の主人がないがしろにされているかのような状況に、イラ立っているのだろう。
ルイーズの夫であるイアンは、公私をきちんと分けているから、ウィルから何か聞いていても、それを妻には話さない。
もしルイーズがイアンに相談したら、即座にウィルに報告されてしまうだろう。
それはよろしくない。
「ごめんなさいね、ルイーズ。もうちょっとだけ、力を貸してね」




