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22.いつか王妃になる田舎男爵の令嬢、王都の夏2

ブクマ登録、評価、ありがとうございます。

前話投稿後、初めてご感想を頂きまして、ちょっと涙がでました!

本当に本当にありがとうございます!



王都にやってきて三カ月。

四月に貴族会議が終わって、貴族たちのほとんどは自分の領地に戻っている。

王都にいるのは、王城での仕事があったり、自分の他に領地を任せる人がいたりする貴族、領地を持たない貴族、あるいは訳ありで王都に残ることになった貴族。

そして王城の使用人や貴族の屋敷の使用人、そして平民の住人たち。


わたしも訳ありといえば訳ありかしら。

王子の妃になるべく王城で教育を受けているのだから。






その日は特に王城内の汗の臭いを誤魔化すために焚かれた香が強烈で、わたしは泣きそうになりながら外国語の授業を終え、王妃陛下とのお茶会をしていた。



「ロジーナ嬢は王都での初めての夏ですわね、如何ですか」



そう王妃陛下に優しく尋ねられる。


王妃陛下だけはお風呂に入ってなくても臭わない。

いつもお菓子の甘い香りを放っている。

お菓子ばっかり食べてると、お菓子のにおいの汗が出るのだろうか。

……それはそれで怖いな。


そんな思考が顔に出てしまっていたらしい。



「あら、そのお顔だと、あまり気に入っていませんね」



くすくす笑われてしまう。


ほとんど毎日のように王妃陛下のお庭でお茶を頂いているので、仲良くなっていると思う。

ウェスティリア語を教わる時間も陛下と一緒にいるし、累積でいくとルイーズの次くらい多く時間を過ごしているかもしれない。



「思ったよりその……においが……。陛下はいつもよい香りがして、心が安らぎます」

「ありがとう。わたくしはこれで慣れてしまっているけれど、ミス・マレットが逃げるようにグラナトへ帰ってしまったところを見ると、この都はよほど空気が悪いのね」

「こちらへ来てから、転地療養する意味がわかりましたわ」



物語に出てくる人たちが、病気になると湯治だなんだと旅行にいくのが不思議だったのだけど、いい空気の地方へ行って病気が治る理由がようやくわかった。

とにかく街にいるよりは清潔になるからなんだ!




「母上、ロジーナ嬢、ごきげんよう。今よろしいでしょうか」

「ウィリアム、おいでなさい」

「ごきげんよう、殿下」



ウィリアム殿下はちょくちょくこのお茶会に混ざってこられる。

注意して見ていると、確かにお菓子にはあまり手をつけていないし、王妃陛下に勧められても断っているから、あのルイーズの話は本当っぽい。

いやルイーズのことを疑ってるわけじゃないんだけど、けっこうスリムな殿下があの肖像画のように太っていたとは想像がつかないのだ。



「今、においがすごいと話していたところなの」



王妃陛下があけすけに言ってしまった。



「今年は例年より暑いですからね」

「臭気も例年よりすごいのかしら?」

「私の感じではそうですね。ただ私と私の周りの者は、ロジーナ嬢に言われて毎日湯浴みしていますから、臭くはないと思うのですが」



ちら、と殿下がいたずらっぽい目線を向けてくる。

慌てて首を縦にふったら、殿下は今度は真剣な顔でこちらに向き直った。

なんか、お会いするたびに殿下がキラキラして見える。

「愛してあげてねー」と王妃陛下に焚きつけられてるからかな……。



「今日はロジーナ嬢に伝えたいことがあってね」

「はい、何でしょう」

「王都にある貴族の屋敷には全戸、ロジーナ嬢のところと同じような湯殿を設けることになったよ」

「本当ですか!」

「王家としてできるだけ毎日の湯浴みを推奨しようと思っている。皆すぐにとはいかないだろうがね」



お風呂には入らない、体臭は香水で誤魔化すものだ、という価値観はすぐには変えられないだろう。

それでも少しでもにおいが収まってくれたら、わたしの人生、生きやすくなるわ。


わたしは万々歳なのですが。



「あ、でも、薪代が……」



皆さまの薪代がえらいことになってしまう。

そして王都に集う貴族の分の薪なんて、王都近くの山が全部ひと冬ではげ上がってしまうんじゃ……。


心配するわたしに、ここからが本題だとばかりに殿下の声が真剣なものになった。



「それも一応、考えてはあるんだ。ロジーナ嬢、貴女のお父上のデュランブ卿から送られてきた燃える石が、薪に替わる燃料となる」

「やっぱり石炭だったんですね!」



思わず歓喜の声をあげてしまった。

殿下は目を大きく開いて、続ける。



「せきたん……、ああ、そうだね。木炭に替わる石炭だ。科学アカデミーの学者たちが研究しはじめた段階で、まだ枢密院にも諮っていないが、おそらくこれから燃料は石炭に替わっていくこととなると、父王が仰っていた」



よっしゃ、お湯を湯水のように使える未来はすぐそこだな!?


お父様グッジョブ!

石炭見つけてくれてありがとう!

薪代の心配から解放してくれてありがとう!

王都に来る直前、いきなりどでかいイノシシを二頭も狩ってきて干し肉にするのを手伝わされたことはチャラにしてあげますわ!




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