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13.いつか王妃になる田舎男爵の令嬢、襲われる

夏休みが終わるので、更新するのが週一とかになります。よろしくお願いします。



わたしはイアン様に、


「わたしは王妃になるのよ! ほら! 殿下に頂いたエメラルドの首飾り! 王妃の象徴であるエメラルドよ! わたしは王妃よ!」


みたいな自己主張の激しいヤなやつだと思われていないだろうか。

ベッドの中で悶々として、眠れない。


端から「性格悪い女」認定されて、「どうせこいつ腹黒いからなー」みたいな対応されて、もしわたしの性格がほんとに歪んであのロジーナ王妃みたいになったらどうしてくれるのよ!

前世の三十路だった経験値のあるわたしだってね、あんまりこじれた人間関係の中にいたら歪んじゃうかもしれないでしょ!


ごろんごろん寝返りをうつ。

ルイーズはもう寝たかしら。寝たわよね。

梟と、木の葉が風で揺れる音がうるさいくらい響いている。


……。

ああああ、眠れないわ!

こんなときは、水浴びよ!




***




小さいころから毎日湯浴みしたがって母やデボラを困らせたわたしだけど、これって前世の、毎日お風呂に入る日本人のときの癖だったんだな。

さすがに農作業とか狩りとかで汗をかいたあとは湿らせた布で肌をぬぐったり水浴びしたりはするけど、わたしみたいに毎日毎日、夜になるとお湯をたっぷり浴びたがる子どもは他にいなかった。

デボラの手を煩わせるのも気が引けて、わたしは一人、夜になると川で水浴びするようになったのだ。

夜といっても、日が沈むより前。

ランプの油を節約するために、明るいうちに行動しなければならない。

野生の動物もいるし、暗くなって出歩くのはとても危ないから。


だけどこの一年で、屋敷周りの木は切られ、建物が建った。

いつも水浴びする川まで屋外灯の明かりが届くようになって、夜中でもたまに騎士の方々の川遊びしてはしゃいでいる声が聞こえる。


今日は誰もいないようだ。

そう、絶好の水浴び日和だわ。

行くしかない!



「だってこれが最後になるかもしれないし」



ここ数ヶ月はルイーズを困らせて、さすがにわたしも自重していたのだ。

それに王都に行けば、もう二度とあの川で水浴びなんてできないだろう。



シェネビ川。

村に三本ある川の真ん中を通っている一本で、流れはそれほど速くない。

上流からは飲み水を取っていて、下流では洗濯したりもする。

生活になくてはならない川だ。


昔から誰よりもざっぶざっぶと入ってきたわたし。

あの川もきっとわたしとの別れを惜しんでいるに違いないわ!

浴び納めよ!




そっと部屋を抜けだして、夜番の騎士に見つからないように屋敷の裏を回っていく。

見つかったらミス・マレットとルイーズにめちゃくちゃ怒られそう。

頭が冷えたらすぐに帰ろう。



綿ドレスを脱いで、柳の枝にかける。

つま先だけ水につけると、思ったより冷たかった。

気持ちいい。

向こう岸まで二十メートル、深さは一番深いところで二メートルくらい。

泳げるけど、夜の暗がりではやめておいたほうがいいな。


腰まで浸かると、すぐに頭のてっぺんまで冷えた。



「シェネビ川、あんまりわたしのこと惜しんでくれてないのかしら」



ざぶんと一度、顔をつけて、岸に上がる。

水浸しのまま綿ドレスを着て、リボンを結んでいると……、




「グラナト男爵デュランブ家のロジーナ・デュランブ嬢、ですね?」




上から男の声が降ってきた。

見上げようとすると葉が擦れる音がして、背後に人の体温がした。

口に布を押し当てられる。



「ご一緒に来ていただけますか」



質問の形の、こちらの答えは求めていない要求。


鼻から息を吸おうとしたら、変な臭いがした。

アルコールよりも激しい刺激臭に頭がくらくらする。

何を嗅がされているのか分からないけど、効果は分かる。

わたしを気絶させるつもりだな!?

それから誘拐するつもりだな!?



「大丈夫です。丁重におもてなしするように、言い付かっていますので」



気持ち悪い……。


目の前が暗くなった。



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