第一話
頑張ります
私の卒業した中学校は生徒ごとに学籍番号が割り当てられる。例えば一年の中で、五十音の並びが一番若いものは10001、同様に二年では20001、三年では30001となる。二代前の校長が就任するときに取り入れたらしい。はじめのうちは、人を番号で管理するなとか、いちいち出席番号とは別で覚えるのがめんどくさいとか、いろいろな苦情があったようだけど、蓋を開けてみれば思いのほか便利ではあるようで、導入してからは苦情などは一切なくなった。
三回目になる友人の葬式は、私に憤りを覚えさせた。漂う焼香の匂いも、一辺倒なお経の声も、全てが私を嘲笑うようで、すでにボロボロになった私の神経を逆撫でる。
私が何をしたというのか。勉強も、運動もそれなりにしっかり取り組んできたというのに。
この一か月間で友人が三人死んだ。
愛宕 拓摩
坂井 友弥
江川 友也
三人とも中学の時の同級生で、同じ水泳部に所属していた。毎日きつい部活動をしながら、お互いに支えあって学校生活を過ごしていた。私が足を怪我して水泳を続けられなくなった時も、三人は励まして私の背中を押してくれた。三人とも私にとっては家族のような、かけがえのない友人だったった。
三人がそれぞれ、灰となってのぼっていったとき、私は何を思っただろう。今では覚えていない。
三人とも誰かに殺されていた。近くにある海の上で惨殺体で見つかった。水死体、ではない。惨殺体だ。体を10の細かいパーツに分けられて、ハートの形に並べられていたらしい。
眼球、頭蓋、両手、胴体、両足、右足首、生殖器、舌。これらの10のパーツが、まるで呪術の下準備かのようにハートの形に並べられていたという。
この知らせを受けたときに何を考えたかは、今でもはっきりと覚えている。
怒りだ。
自分の半身と言ってもいい友人を三人も奪い、自分の勝手な目的のためにその死体をバラバラにした犯人を殺してやりたいと思った。
殺した後は誰にも言わず、ばれない様に、海に沈めてやる。自分が何をしたか、これから何をするか、どのような本性を持っているか、それらすべてを誰にも知らせずに水葬してやる。殺した人間を態々バラバラにして、目立つようにハート型に並べるようなやつだ。誰にも知られずに存在を消されることは耐えられないことだろう。