第六話 相田さんの持病
今回も、相田さんのことが分かる回になるでしょう。
それでは、第六話、お楽しみください。
「薄羽、話、終わったから。」
「あぁ、まぁ、なんだ。無理すんなよ。」
「気を遣ってもらって悪いね。」
「薄羽、扇、今日はもう解散だ。あ、そういえば、新聞のスクラップブック、作業の進捗は...。」
「それが、思ってた以上に動きがないのよね。スクラップブックなんてもの作らなくても、私たちが読んで伝えるだけで事足りると思う。」
「え、そんなに何もないの!?ふーん...。わかった。じゃあ、これからは情報を俺に伝えてくれ。」
扇は、ニヤッとしてこう言った。
「こういう時に便利なのが、7INEのグループノート。ですよ?(ドヤァ」
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2019/9/6 A.M.10:00
「あ、あれ、おかしいな...。何でこんな時間まで寝てるんだよ、俺。」
いつも5時くらいに目がさめる薄羽にとって、この時間に目がさめることは、異常な出来事だった。
「あぁぁ...頭がいてぇ、あっれ、俺、何して...。」
昨夜の記憶がない。そう気付いた。
寝室を出て、リビングに向かう。
「あ、薄羽おはよう。んじゃ、行ってきまーす。」
「んあ!?あぁ、いってら...。」
理解できない。何で相田が俺の家にいる?
「おはよう。なんか、ふらふらしてる...。水、要る?」
「あぁ、いただくわ。」
なんで扇までいるんだ。それに、これは二日酔いか?おかしいな...。
「なぁ、聞きてぇんだけどよ、まさか、俺昨日...。」
「相田さんがぶっ倒れた。」
どうしてそうなったー...。って、え?
「あぁ、そうだっけ...。へぇー...。」
なんで急に相田が出てくるんだ。理解に苦しむ俺。
「あ、もしかして昨日の記憶、ないの?」
「あ、あぁ、実を言うと、覚えてねぇ。」
「すごい必死だったもんね。無理もないよ。」
まさか、相田はそんなにひどい状態だったのか?
「あ、それよりも、なんでお前らがいるんだよ。相田はあれ、出勤か?色々謎なんだが。」
「それはだって、ここで看病してたんだもん。薄羽が。」
「とりあえず、昨日何があったのか、っていうのと、なんでお前らがいるのか、っていうのを教えてくれ。」
「まぁ、構わないわ。」
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2019/9/5 P.M.03:00
「それじゃあ、帰る。場所貸してくれてありがとな。」
「ウニョウニョ、忘れないでもって帰れよ。」
「分かってるって。お邪魔しました。」
「お邪魔しまし...た、って、え?ちょっと...大丈夫?」
相田は、突然倒れた。
「薄羽さん、これ、まずいやつだよ...!?どうしたら...。」
「どうしたんだ!?とりあえず、慌てるな。俺が寝室まで運ぶから、扇は布団を敷いてこい。」
大きく頷いた扇は、小走りで薄羽の寝室まで向かった。
「おい、相田、大丈夫か?」
「...ハァ...。あれだ...持病...だ...。」
「てことは、どっかに薬とかあるんだな?」
「カバンの中......鍵は...俺のポケット...。」
相当苦しそうだった。
「病院に連れてったほうがいいか?」
「薬...薬......それで...十分...。」
「布団敷いたよ...!早く早く!!」
「相田のカバンから薬探せ。ほらよ、鍵。余計なとこ触るんじゃねーぞ!」
「分かってるよ!早く運んでよ!」
そういえば、ペースメーカーをつけている。と、前に言っていたのを、思い出した。
計画が成功しても、こいつは死ぬんだと。
自分は、医者っぽい仕事をしているもんだから、医療関係者に少しは知り合いがいる。
ペースメーカーを外して生活できるなら、外しておけば死なないで済む、と思ったからだ。
ただ、相田の場合、ペースメーカーなしで生活することには、少し無理がある。とのことだった。
こいつには、まだ俺たちに話していない過去がある。そんな気がした。
例の研究資料...。あれが何かにつながる気がしてならなかった。
ましてや、世界を終わらせられるウィルスの研究資料だなんて、内容が内容だ。
......絶対に、計画を阻もうとする者や、ウィルスを奪おうとする者、といったやつが現れる。
そんなこと、少し考えれば分かることだ。
あの文書が送られてきたってだけで、相田の生活が脅かされる危険性は十分に高まっている。
送り主が、何を目的として相田に文書を送ってきたのかは分からないが、きっと何らかの目的があったのだろう。
もしかすると、相田の資料を狙って、もしくはウィルスを狙って、攻撃を仕掛けられるかもしれない。
だから、相田は普段から用心して生活したほうがいい。むしろ、そうすべき。
このことは、相田に伝えておくべきだった。
「薬、これっぽい。」
扇は、水と薬を持ってきた。少し、落ち着きを取り戻して様子で。
相田に薬を飲ませると、相田の呼吸が少しゆっくりになった。
そのまま、相田は寝てしまった。
「今日のところは、うちに泊まってってもらうしかないみたいだな。お前はどうするよ?」
「え、私?な...泊まってっていいの?」
「好きにしろ。相田のことが心配なら、看病手伝え。」
「うん...!わかった!」
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「で、そのままあなたは相田さんの看病を続けてたわけなんだけど、どうしたことか、あなた6時頃になって、急にめまいがする、って言って、自分で布団を敷いて寝ちゃったわけよ。」
「あぁ、言われてみれば、確かにそんなことがあったな。」
「あなた、普段徹夜とかしないでしょ?夜に弱そう。」
「まぁ、いつも同じ時間に布団に入るし、朝も5時くらいになったら勝手に起きる。」
「そりゃあ疲れるに決まってるよ...。もうちょっと寝ておくことを全力で推奨します。」
「あぁ、そうさせてもらうわ。」
ふと、腕時計を見ると、6日の午前10時30分をさしていた。
「にしても、なんで記憶が飛んでたんだ...。」
人間必死になると、そうなるのかな、と勝手に解釈した。
「眠くねぇ、けど、寝なきゃな。」
俺は布団に潜って、眠りにつこうと努力した。
案外、すぐに眠りにつけた。
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2019/9/6 P.M.07:00
目がさめると、リビングから楽しそうに談笑する声が聞こえた。
「相田と、扇...か。おっと、こうしちゃいられねぇ。」
相田は仕事から疲れて帰ってきてるだろうし、扇だって、看病を手伝ってくれたんだ。
飯ぐらい出してやらないと。そう思った。
俺は急いでリビングに向かう。
「いやぁ、助かったよ。今まであんな急に苦しくなったことってなかったからさ。」
「でも、特に問題なさそうで、良かったです。」
「二人には感謝してるよ。ありがとう。おっと、主治医さんが目を覚ましたようだね。」
二人が、テーブル横の椅子に座って会話しているようだった。
「薄羽、ありがとう。おかげで助かったよ。」
「あ、あぁ、もう大丈夫みたいだな。とりあえず、ゆっくりしてけ。」
どうやら、本当に大丈夫みたいだ。
「今、飯作るから。食ってけ。」
「お、薄羽の手料理?てか料理できるんだ!」
「そういえば、お腹がすいてきた気がします。」
「ちゃんと全員分作るからよ。とりあえず座っとけ。」
「あぁ、じゃあ私、テーブルを拭きます...。」
「じゃあ、俺は...なんかすることない?」
「相田さんは座ってゆっくりしてていいですよ。」
「そうか。じゃあ頼むよ。」
俺は大好きなパスタを作りに台所へ向かう。
「薄羽さんって、何を作るんですかね。」
「うーん、でも薄羽って麺類好きそう。」
「うどんとかそうめん...とかそっち系ではなさそう...。」
「意外とオシャレにパスタとかかな...?」
リビングではすでに俺が何を作るのかを予想する声が聞こえる。
地味に当たっているところが怖い。
相田と扇には、人を見る目があるのかもしれない。
10分足らずで、三人前が出来上がった。
鍋を三つ使えば、一人前を作る時間と変わらずに仕上げることができる。
簡単な話だ。
「お待たせ。パスタだ。って、用意がいいな。なんでフォークが並んでるんだよ。」
「薄羽ならパスタを作る、と予想して、先にフォークを並べておいたんだ。どうやら、本当にパスタだったみたいだ。」
「私、麺類は大好きですよ。もちろん、パスタも。」
「そうか、そりゃ良かったな。冷めないうちにさっさと食べるぞ。」
「「「いただきま〜す。」」」
久々に、明るい食卓だった。
仲間と、談笑しながら同じ食卓を囲む。
うん。悪くない。そう思った。
相田について気になることはまだあったけど、ひとまず今はこの時間を楽しむことにしよう。
それにしても、扇は変わったな、と感じる。
なんだか最近、明るい。
そういえば、さっき、俺のことを薄羽さんって呼ばないで、あなたって呼んでたな。
だいぶ、俺たちに慣れてきてるみたいだ。
紅一点って、だいぶ辛いだろうけど、扇は扇なりに頑張っているんだろうな。
楽しい時間は、30分ばかり続いた。食べながら話してると、とても楽しい。
そして、三人のごちそうさまの声で、俺の楽しい食事の時間は終わった。
「食器洗ってくる。ひとまずゆっくりしとけよ。」
「そうさせてもらうよ。」
「私は、弟が家で待ってるので、えっと、先に帰らせてもらう...。」
「おう、じゃあな。また来いよ。」
「うん、パスタ、美味しかったよ。お邪魔しました。」
「じゃあねー。」
じゃあねー。だってよ。とても死にかけたやつの言葉だとは思えない。
ああいったことに、慣れているのだろうか。
聞きたいことが山ほどある。
が、今日のうちに聞きだす必要もないだろう。
食器を洗い終わって、俺はリビングに向かう。
「あ、薄羽、俺もそろそろ帰るね。昨日は、本当に助かったよ。じゃあ、ごちそうさま。」
「おう、気をつけて帰れよ。って言いたいところだけど、一応駅まで送る。」
「ははっ、多分、もう倒れないよ。」
「まぁ、一応だ。ウニョウニョ忘れるなよ。」
「分かってるって。」
こうして、俺の9月6日は終わった。
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2019/9/6 P.M.09:00
家に着くと、もう夜の9時。
俺は、重大なことに気づく。
「ま、まずい。今日の朝と昼...餌与えてないや...。」
壊滅的な状況。ウィルスは、死にかけていた。
果たして、ウィルスの運命や、いかに!?
と、まではいきませんが、相田さんは重大なミスを犯してしまったようです。
ただ、相田さんなら何とかしてくれるでしょう。
それでは、次回も良しなに。