第十五話 家に着いてただいまって言うまでが遠足 -後編-
このお話と、次話でいい感じに一区切りがつく予定ですので、サクッと仕上げました。
お楽しみいただけたら幸いです。
「足湯、気持ちよかったね。なんか、全身で湯に浸かるのとはまた別の良さがある。」
「俺は全身でつかる方が好きだけどな。アイス食いながら湯に浸かれるのはスゲーと思う。」
「私は、足湯の方が好きかな。みんなと会話できるのって、すごく楽しいし...。」
「いっつも会話してるけどな。でも、ミチルはさっきみたいな環境でおしゃべりしたいんだろ?」
「そうですね。開放的な空間で、体を温めながら会話できて...。」
「そしてアイスで体を冷やして...。」
「変なボケ入れるなよ。場の空気が冷えるわ。」
「...ふっ...。」
「おい主、今、鼻で笑ったよな。」
「え?ああ、なんか翔が上手いこと言おうと頑張ってるみたいで...。笑えてきちゃってね。」
「全然頑張ってないんだけど。ただ普通のことを言っただけだぞ?」
「知らんわ。ほら、翔が大声出すから、周りの人がみんな冷ややかな視線で見てるぞ?」
「お前のボケで注目されたんだよ。」
「え、本当に?...まあいいや。早く次のところに行こうよ。冷えたジュースでも飲みながらさ。」
「...最後までキャラがブレない...主さん、見栄っ張りさんですか?笑っちゃいましたけどね、私は。」
「いや、ただあれが面白いと思ったんだろ。俺はなにが面白いのかわからなかったけどな。」
「主さんのああいうところ、かわいいですね。」
「女子って何でもかんでもかわいいって言うよな。...とりあえず、行こうか。」
「そうですね。体が冷えちゃいけませんし。」
「ぷっ...。」
「あ、翔、笑った!」
「いや、不意打ちはだめだろ。反則。ノーカンな。ほら、行くぞ。」
「はーい。」
ーーバタン
「あ、翔、笑った!ふふふ。」
「なんだよ主。俺が笑っちゃ面白いのかよ。」
「え?普通に面白いと思うよ?」
「は?なに言ってんだ。車出すぞ。」
「いやー、だってさ、普段は落ち着いてて、なかなか態度を乱さない翔が、顔をくしゃくしゃにしてるのを見てしまったら...もうこっちも笑っちゃうよね。」
「ですよね。私もさっきは笑ってしまいました。気分、害されましたか?」
「いや、そこまでじゃないけどよ、笑われて面白くないわけはないよな...いや、別に構わないんだけどよ、でもさ...。」
「なにを言いたいのかね、薄羽 翔よ。」
「いや、だからよ...。あー、やっぱなんでもないわ。なにを言いたいのかよく分からなくなってしまった...。」
「分からないのはこっちの方だぞ。薄羽 翔よ。」
「ふふっ...。」
「大体、笑われても君の場合は仕方がない部分もあるのではないかね、薄羽 翔よ。」
「ちょ、主...。」
「君の笑い顔というのはね、あのな、何故か笑わされてしまうのだよ。分かるか?薄羽 翔よ。」
「おい主、やめろよ...ぷふっ、運転中に笑わせるなよ。ハンドル操作ミスっちまうだろ...。」
「あ、そお?悪かったな。」
「ぷっ...ハハッハハハッ!笑っちまうだろ、ははは。」
「ちょ、なんで?俺やめたよね?」
「いや、やめろって言われて本当にすぐやめたら、笑っちゃいますよ...ふふ、私も笑いましたよ...はは。」
「それに、あんなに低い声で何回も名前呼ばれたら...普段と違いすぎて笑っちまうだろうがよ!ははは!」
「翔って笑ったら、すげー声出るんだな。普段のクールな感じは何処へ...。」
「あ、あの、この話、一旦中断しませんか?私、すっごく笑っちゃって...ふふ、疲れちゃいました...。」
「もっとやってみる?」
「やめなさい、相田 主よ。」
「は?翔?今の声。」
「そうだ、その通りだ。今すぐやめなさい。相田 主よ。」
「え、すっげぇ。普段と全然声が変わらない。」
「本当ですね。なんか、普段と印象が変わらない...。」
「どうしてだろう...うーん。」
「おい、笑えよ。せっかく恥ずかしいのを無理してやったのに。」
「笑いは自然に誘うものであって、笑えと言って笑わせるものではないよ、薄羽 翔よ。」
「ぷっふ...ふふふふ...。」
「あー、もう飽きた。飽きた飽きた。早く次のところ行く。もう笑わない、もう笑わない。」
「ああ。本当に疲れた。もう休もう。...,まだ先は長いんだ。休んでおくことをお勧めするぜ。」
「わかったよ。おやすみ...翔、ミチル。」
「ぷふ...おやすみ...。」
「名前だけ低い声にされるだなんて...不意打ちですよ?...ふふふ、ふふふふ...!あー、寝ます。おやすみなさいです。」
「...ああ。ゆっくりしとけよ。」
ーー数時間後...
「おーい、ミチル、ミチルー。」
「...ん、着いたのか?」
「お、主も起きたか。起こすの手伝ってくれ。」
「ってあれ、まさか、俺たちガチ寝しちゃった感じ?」
「そうだよ。あまりにも起きないものだから、まっすぐ最短で帰ってきたぞ。」
「7時30分...なかなか遅い時間になっちゃったね...。悪かったね、行きたいところ行かせられなくて。」
「いや、いいんだ。気にしないでくれ。」
「...うぅ...く、首がぁ...。」
「お、ミチルー、着いたぞー。」
「へ...?あ、私のお家...。」
「俺たちがガチ寝しちゃったから、まっすぐ帰ってきたんだって。」
「え!?あー、もうこんな時間...ごめんなさい!」
「大丈夫だよ。そんなになって謝んなくてもいいって。別に、悪いことをしたわけじゃないんだからよ。」
「とりあえず、解散だ。荷物はもうここにまとまってるよ。一応、玄関までは運ぶから。」
「あ...弟に男の子と一緒にいるってこと、言ってないんです。だから、大丈夫です。ちょっとでも三人でいるところを見られたら後から面倒なので、自分で運びます。」
「あらら、分かったよ。じゃあ、俺たちはさっさと帰ったほうがいいな。」
「じゃあな、ミチル。一応、明日の晩に主がお話したいんだってよ。三人で。もちろん、7INEでな。」
「あ、はい。分かりました。それでは、二日間、ありがとうございました。」
「おう、またあったらよろしく頼むわ。」
「じゃあねー、ミチル。」
「お疲れ様でした。バイバイ。」
ーーバタン
「...荷物...運ばなきゃ。まだちょっと眠いかな。これは、バタンキューしちゃうかも...。」
ーーガチャ
「...ただいまー!」
前話と今話で少し特殊な書き方をしましたが、いかがだったでしょうか?面白かったー、や、普通の方がいいーといった感想を聞かせていただけると、今後の参考にもなり、何よりモチベーションにもなります。もし時間がありましたら、感想を書いてほしいなー...なんて思います。
それでは、次回も良しなに。