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サクッと世界が終わらせられた話  作者: ☆4IPON☆
第一章
18/21

第十四話 下調べという名の慰安旅行 -後編-

すっごく長いです。

これまでで一番長いような気がします。

ですが、これでやっと十四話が終わります。

最後までお楽しみいただけたらな、と思います。

「...ほら着いたぞ。早いところやることやっちまおうぜ。」


「あぁ...うん、そうだね。」


「どうした?...なんだ、悔しいのか?」


「当たり前だろ。言い出しっぺがあれじゃあカッコつかないじゃないか...。」


「ふふ、最後の方、リーチ棒借金してましたものね。」


「そのリーチでミチルが上がっちゃうし...。」


本当に散々だった。


まさか、最初の一回しか上がれないだなんて...。


「ま、麻雀なんて基本そんなもんだ。調子に乗るからダメなんだよ。」


うー、翔の言う通りだ。


確かに、思い当たる節はある。


「悪かったよ、あんなに騒いで...。」


「計画にボロが出なけりゃいいけどな。」


「もー、あおるなよ。結構しんどいんだぞ?」


「悪かったよ。ほら、もう気にすんなって。」


「さて、私も働きますよー!」


「G-io本社ビル...思ってた以上にでかいな。初っ端からすげー飛ばしてくんだな。」


ぱっと見、不良のたまり場に見えた。


________________________________________________

「えっと、あ、やっぱり入っちゃダメなのね。」


「そりゃそうだろうよ。工事とかで危ないだろ。」


「当たり前ですね。」


「うんうん。...結局入るんだけどね。」


「正面から堂々と侵入する感じ...いいねぇ、無計画だねぇ、主さんよぉ。」


「でも、ここ以外に入り口ってないですよね?」


「うん。そうだね。」


今我々は、ビルに対して少し広く囲われた進入禁止のスペースにいる。


建設機材や、鉄骨などが置かれている少し視界が開けている場所だ。


「でも、ね。視界が開けているから、見つかりやすいって言ったら、見つかりやすい。」


「あぶねーなー、早く中に入った方がいいんじゃないか?」


「そのつもりだよ。でも、あんまり余計にコソコソしないでね。ばれたらばれたで、就職予定なのでーとか適当なこと言っとけばいいんだし。」


「なんか今回の主、無計画すぎやしないか?」


「...大丈夫...なのですよ。きっと。そう信じましょう。」


「大丈夫だよ。ていうかここ、そもそも人いないし。」


「おい、先に言え。」


「あはは、さて、問題の玄関だけどね、開いてるのかな...と思ったら自動ドアが開きっぱなし...。」


「なんか不気味だな。近づいたら閉まるんじゃねぇの?」


「遠ざかったら開くとか?」


「なにそれ、あべこべだな。あ、普通に通れるね。」


「...あー、じゃあ中身をちらっと拝見させていただきますか。」


「基本三人で固まって動こうね。もしもに備えて、一応ミチルは真ん中ね。」


「あ、お気遣いありがとうございます。えっと、まずは一階の広さとか部屋の場所とかを確認して...。」


「その後一階ずつ上がっていって、同じことをする。」


「最後に、このビルの空調とか送電とか、設備関係の部屋を見てくる。」


「なんで設備まで見るんだ?」


「もしばれたとき、送電設備を壊せば、うまいこと捜索の手から逃れられるかもしれない...っていう魂胆。」


「失敗することを前提で話して、どうするよ。」


「見つからないのが一番いいのですが...。」


「あー、確かに。そのためにもちゃんと見て回らないとね。」


「そうだな。しっかし、よく響くな。声が。」


「まだすっからかんだからねー。とりあえず、一階を見て回り終わったら、階段とかエレベーターの位置を確認して、上に行こう。」


「把握した。」


「オッケーです。」


「記録は翔くんに任せよう。」


「あ?あぁ、地図を書けってか。」


「はい、よろしくー。」


俺は、翔にノートとペンを渡した。


「ほう、ノートの裏に厚紙が貼り付けられているのか。これで少しは書きやすいだろう、ということか?」


「うん、そういうこと。」


「それはどーも。つまり、俺に座って書かせている暇はない、ということでもあるのだな?」


「あっはっは、ごめん、時間がかかる。」


「そうか。急がないと、誰かが来てしまうかもしれないからな。」


「うん。頼むよ。うまいことやって。」


「おう。」


時刻は午後3時。麻雀はすぐ終わったのだが、移動にかなり時間がかかってしまった。


これから、ビル内部をいろいろ見て回る。


もしかしたら、侵入しなくてはいけなくなる、その日のために。



________________________________________________

「なんか、無駄に広いな。この建物、もしかしてもともと病院だったんじゃないか?」


「確かに、中に入ってみて気付きましたけど、なんかビル、って感じがしないですね。売店みたいなところもありましたし。」


「食堂みたいなところもあったしね。あと、トイレの数がすっごく多いしね。」


でも、そこまで規模の大きな病院だったとは考えにくい。


なぜなら、寝台をそのまま載せて運べるような、大きいエレベーターがなかったからだ。


規模の大きい市立や国立の病院だと、それくらいの設備は整っているはずだろう。


ただ、ここがもともと病院だったと、はっきり分かったわけではないが。


「1階だけで...おお、6箇所もあるぞ。すごいな。」


「はは。おっと、とりあえず一階はこの部屋で最後みたいだな。」


ーーガチャ。


「あらら、鍵がかかってる。」


「無理に開ける必要もないだろう。一階はもうこのくらいにして、二階に行ってもいいんじゃないか?」


「あ、そうだね。じゃあ、階段に向かおう。えっと、階段はどっちだっけ?」


「入り口に戻って、入り口を背にして直進。そしたら、左側にすぐ階段があったはずです。」


「あ、そうだっけ。ミチルがいれば地図要らなくない?」


俺たちは、入り口に向かって足を進める。


「今更なんだよ。ちゃんと全部書くぞ。俺は。」


「私も、多分覚えているのは今だけなので...。あまり信用しきらないほうがいいですよ。私の記憶力。」


「ふーん、普通にすごいと思うけどな。それじゃあ、急ごう。7時には旅館に戻ってご飯を食べないと...。」


「風呂も入らなきゃな。」


「温泉たまご、楽しみです...。」


「...お、ここが階段だね。スッゲー、本当にあった。」


「ほーら、行くぞ。」


「地図を書くの、楽しくなっちゃった?」


「あ?違うよ。もし本当に侵入するってなった時に、帰り道がわかんなくなって捕まりました。なんてことになるのが嫌だからだよ。」


「真面目だな。」


「当たり前だよ。」


と、ここで俺はあることに気付く。


「...あれ、行き止まりじゃん。」


「いや、違う。防火シャッター的な何かだな。これ。」


「なぜこんなものが降りてきているのでしょう?」


「んー、ここから二階にいけたとしても、三階に行くところでまた行き止まりになるかもしれないのかな...。」


「もしこのシャッターが、例えばどこかの階層で火事が起こった時に、被害を最小限に抑えるために降りているんだとしたら、その可能性は十分にあるな。」


「無理やりこじ開けても、警報とかなったら面倒ですよね。」


「うーん、別の階段を探すか?」


「一階から二階に上がる階段は、ここにしかないみたいだ。エレベーターばっかりだよ。」


「エレベーターなんてもちろん使えるわけないし...。あー、えーっと...。あ、そうだ。外に非常階段なんてないだろうか?」


「あ、確かに言われてみれば、ありそうですね。」


「名案...ってか?行ってみて損はないだろうよ。」


「よっし、じゃあ、行ってみるか。」



________________________________________________

「まさか、階段がない、だなんて考えてなかった。」


「時代は進むものなんだよ。昔と違って、もう階段は必要なくなってきているんだよ。」


どうやらこのビルは、非常時には二階から地面にかけて、滑り台がかかるらしい。


イメージでいうと、飛行機が緊急着陸した際に、乗客が外に出るために使う滑り台。


あれのようなもの。


二階より上には階段があるのだが、普段はこの場所から二階に上がれないようになっているらしい。


「さて、どうしますか?二階には上がれないようですけど...ここからよじ登って二階に行きます?」


「それなら、俺がやろう。サクッと地図書いてサクッと戻ってくるよ。」


「危険だし、やめたほうがいいんじゃ...。」


「心配どうも。でもよ主、この機会にちゃんと見ておかないと、近い将来もっと苦労することになるんだぞ?」


「うーん......。三階より上は諦めろよ。」


「承知した。じゃあ、行ってきますわ。」


「う、うん。気をつけて。」


「......まるで猿みたいですね。運動神経がいいんでしょうね。」


「そうだね。一階だけでも結構時間がかかったんだし、翔、大丈夫かな...。」


「戻ってくるまで、待ちましょうか。」


「そうだね。」



________________________________________________

「あらら、もう5時だよ。そろそろ帰らないと、ご飯に間に合わなくなっちゃうかも。」


「え、それは困りますよ。翔、早く戻ってきてくれないかな...。」


翔が二階に行ってから、かなりの時間がたった。


「何かあったんじゃないだろうな...。」


「...いや、大丈夫だよ。多分もうそろそろ帰ってくるよ。」


「そうですよね...。あ、車ここに持ってこれませんかね?」


「それ、一瞬思ったけどやっぱり無理。翔だったらできるかもしれないけど、俺はそこまで運転しないからさ、あんなおっきい車。」


「うーん、狭いですしね。通り道が。」


と、そこへ翔が無事に戻ってきた。


「...おー、待たせちまったな。」


「あ、帰ってきた。」


翔は、3メートルちょっとの高さをジャンプで飛び降りた。


ーースタッ


「うわー、かっこいい。」


「ただ普通に降りただけだぞ。」


「はは、主ってアクション系が好きなんですね。」


「スタントとか、憧れてた時期あったわ...。あ、そういえば...外傷とかないか?地図は?」


「ほらよ。傷はない。三階に行く階段も、やっぱりシャッターが降りてた。鍵のかかった部屋も何個か。」


「そうか。へー、二階にもトイレがあるんだね。」


「そうだな。さっき病院じゃないのか、って話が出てたけど、そんな感じのところは、このフロアからは感じなかったかな。」


「なんか、特に何もない階層だね。よかった、複雑じゃなくて。」


「そうだな。それじゃあ、旅館に戻ろう。腹減った。」


「うん、そうしようか。」


「そうですね。お疲れ様でした。」


「おう。」


と、こんな感じで下調べが終わった。


旅館に着いたのは午後7時30分。


ちょうどご飯の時間だった。


明日には帰宅すると思うと、少し寂しいような気がしなくもない。


ただ、帰ったら帰ったで、


「やっぱり我が家が一番」ってなるんだろうね。


そして、夜の客室。


「いやー、なかなかいい風呂だったね。特に露天風呂。初めて入ったけど、思ってたより外が寒くてびっくりしたけど、お湯が気持ちよかったなー。」


「なんだ、露天風呂が初めてだったのか。まあ、こんな自然に囲まれてる露天風呂なんて、都会暮らしじゃあんまり入る機会がないだろうな。」


「温泉たまごも、やっぱり美味しかったです。」


「だろ?やっぱり温泉たまごは期待してよかった。」


「明日の予定って、どうなってるんだっけ?」


「明日は9時30分にここを出る。朝飯は7時からだから、結構忙しくなるかもな。荷物、まとめとけよ。」


「はーい。あ、アケチに餌あげなきゃ。」


「私、またあげてみたいです!」


「どうぞどうぞー。あれ、そういえば、三人でこの部屋に泊まるの?」


「あ?何言ってんだ。一部屋しかないんだから、そうに決まってるだろ。」


「私は構いませんよ、全然。気にしないでください。」


「あ、そうなの?俺、ソファーで寝ようか?」


「気を遣わないでください。何も、川の字でいいじゃないですか。」


「うん。俺もそれに賛成だな。」


「気にしないなら別にいいけど。」


「俺、先に寝てるわ。すげー眠い。」


「じゃあ、私も餌あげて荷物まとめたら、早めに寝てしまおうかな...。」


「二人とも健康的だね。羨ましいわ、すぐに寝付けるって。」


「目を閉じて、何も考えなければいいんですよ。」


「それができないんだよなぁ、俺って。」


「じゃあ、いままでどうやって寝てきたんですか...。」


「なんか、いつの間にか寝てた。」


「ちゃんと寝付けてるじゃないですか。」


「でも、朝すっごい疲れてる時があるんだよねー。」


「そういう時は、枕を変えてみたりしますよ。私は。」


「ほほう、なかなか良さそうだな。帰ったら試してみるよ。」


「ぜひ、そうしてみてください。」


この後、ミチルはまた楽しそうにアケチに餌をやり、アケチもまた、嬉しそうにそれを喰らう。


女の子がスライム状のぷるぷるした物体に、機械の部品を与えている様を横で見ていると、なんだか笑えてきた。


アケチもだいぶ成長して、前のウニョウニョした感じから、少し固まってスライムみたくなった。


予定では、これがまただんだんとしぼんでいき、クラゲの球体部分みたいになるはずだ。


そうしたら、ほとんど完成状態。


後は、破裂させるだけで...悲劇が始まる。


もっとも、それは俺にとっては終わりでもあるが。


ひとまず、アケチが順調に成長しているようで、なんだか嬉しかった。


このまま、順調に育っていってほしいと思う。


とまぁこんな感じで、長かった俺たちの9月30日は終わり。







さて、これで第十四話が終わりました...。

長かったと思います。最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。あ、最終回じゃないですよ。

一応、これからいろいろなことがあって、なんだかんだあって、どうこうする...という筋書きはできています。ですので、お付き合い願いたいと思います。

それでは、次回も良しなに。

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