第7幕(挿絵あり)
自販機で買ったジュースを悟と一緒に飲み干して約数分後に目的地の散髪屋に到着した。中年の夫婦と思われる二人のうちの婦人が二人を迎え入れてくれた。なんとも人柄が良さ気な婦人のようである。
「悟ちゃん、ひさしぶり。元気しよった?」
「お久しぶり。うん。今日は髪切って欲しくて来たよ」
「お手伝いじゃなくて? そちらさん、お友達?」
「うん。中学で知り合って……何か喋りなよ」
「あ……はい。伊達賢一です。宜しくお願いします」
「おい、ここ緊張するところじゃねぇよ」
「アハハ。まじめな子ね。面白そう!」
「うん。面白いよ。こんな髪型の奴みたことねぇし」
「うん。たしかに。これは珍しいわね」
「…………………………」
悟は馴染みのあるご婦人に髪を切ってもらい、賢一は入店当初から全く無口なご主人の方にやってもらうことにした。非常に無口なおじさんであった。賢一は自分と通じる何かを感じたりもしたがところどころでは主人の方から話をかけてくる時もあった。
「これ自分で切ったのか?」
「…………はい」
この返事のあと、無愛想な髭面のおじさんがニッと口を歪ませたのを鏡で確認した。自分で自分の髪を切ったことを後悔した賢一であったがその反応を見て、さらに後悔の思いを心に刻んだ。今すぐにでもこの髪型を変えて欲しいものだ。切にそう思った瞬間だった。店主と思われる壮年と賢一の会話はまるっきりなく、気がつけば賢一の髪型はスッキリ短くなった。
それから勘定を促してきたが、悟が二人分を払うと言ってくれたので九死に一生を賢一は得た。彼の財布には千円札が1枚だけあるのみだからである。悟のカットは賢一の数分遅れで終わった。悟が勘定を終え、悟とご婦人が何か話していた。それから二人で床屋を出ることにした。
悟の髪はただ髪型が短くなった賢一と違って少し洒落ているようだった。
「うん。良くなった。明日学校に行けるな」
「そんなに前のヤツはヒドかったのかな?」
「まぁ、いいよ。どっちにしても、今日は図書室に入りづらい日だったからな」
「そんなに図書部の人たちって、嫌な人達の集まりだったりするのかな?」
「うん。あの髪型を見たら間違いなくからかってくると思うな」
「もうその話はいいってば」
二人は図書部の人間の話をしつつも、文芸部のこれからに関して話し合った。二人はすっかり幼い頃からの親友のように馴れ合っていた。会話の中で賢一は五七五の課題と宿題をやってないことを思い出した。この日も悟の方から家に来て欲しいと言われたが賢一はまたの機会にと悟の家に行くことを断念した。
賢一は家に帰り宿題を済ませた。賢一は勉強ができる方ではなかったが学校の宿題だけは分からないなりに教科書を読み、必ずやることにしていた。真面目な男の子であるのは、誰しもに認められていたが、そこに質の向上を目指す意志はなく、悪い意味で容量よく物事を済ませる癖があった。宿題の後に賢一は五七五を作ってみた――