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放課後HEROES-children of the revolution-  作者: いでっち51号
第3章「私たちの結成記念日」
39/41

第11幕

 目を覚ますといつの間にか保健室のベッドに横になっていた。記憶にないが制服からジャージ姿へと変わっている。少し離れたところにある時計に目をやる。今は午後6時を過ぎているらしい。生徒が学校を出なければいけない時間である。どのくらいここで休んでいたのだろうか? 色々と思いだしているうちにすぐ側のカーテンが「ザッ」と開かれた。すると見覚えのある顔が賢一の前に現れた。



「起きた? お腹大丈夫?」

「……先輩? ここは保健室?」

「うん。覚えてないだろうけどここですぐ着替えて横になってもらったんだよ」

「え……このジャージは誰のものですか?」

「ソレ会長の。たまたま生徒会室にあったから貸してもらったの。良かったね!」



 「サイズがジャストフィットだったみたいね」と笑顔を見せたのは高木だった。



 次第に賢一のなかの記憶が蘇ってくる。そうである。これはあの惨劇後の現実である。だんだんと記憶が戻ってくる度に賢一はひどい寒気を感じた。



「大丈夫? 寒いの? 冷房切ろうか? 蒸し暑くなるけど……」

「いや、いいです。大丈夫です」

「ほんと? なんか顔色悪いよ?」

「だって……ボクは……ボクたちは…………」

「どうしたの?」

「先輩を騙して潰そうとしたじゃないですか!」



 賢一の声に感情がこもった。



 高木は一瞬驚いたがそっと微笑み、ため息をついてすぐに返事を返してきた。



「でも守ってくれたじゃん?」

「え?」

「だ・か・ら、私を守ってくれたじゃんか。ありがとう」

「え? そうでしたっけ……あれ……でも」

「落ち着きなよ。お茶でも飲む?」



 高木は席を立ってどこかへ行ったかと思うと、湯呑を両手で包んで賢一に差し出した。賢一は戸惑いながらも湯呑に入っていた烏龍茶を飲み乾した。



「どうやら何かを思いだしたようだけども? それでこれからキミはどうするの?」

「どうするって……悟君はどこに?」

「さっき図書室に行ったけども誰もいなかったよ。不思議なことに物もなかった」

「物もなかった?」

「うん。バスケットボールもバケツも黒板消しも使われた紐も。証拠隠滅かな?」



 高木は「証拠隠滅かな?」と言うとクスクス笑いだした。やがて手のひらを顎にあてて賢一の顔をじっと眺めた。そして再び喋りだす。



「私はこのとおり無事だし。なんとも思ってない。それより気になるのだよね。キミはこれからどうするの? 明日彼と会って何を話すの? 部活はどうするの?」



 高木の目はいつしか真剣なものに変わっていた。賢一はその表情を肌で感じて高まる鼓動と言いようのない緊張で言葉に詰まった。やっぱりそうなのである。賢一も悪しき計画に加担した人間の一人。その罪は拭えないはず。そのはずだが目前にいる被害者は何一つ傷ついていない。むしろ賢一を興味深く見つめている。



 やがて賢一はひとつの答えを閃いた。



 閃いたと言うよりはずっと思っていたことなのだろうか。賢一はこの日この時この瞬間をこの先輩と図書室で過ごしていたあの時から待ち望んでいたのだ。しかしいざ言葉にと思うと緊張してしまう賢一だった。やはり彼は優柔不断な男子だった。やがて高木が先に言葉をかけた。



「何よ? 何か言いたいことがあるの?」

「あ……はい……。先輩は頼んだら何でもしてくれるのですか?」

「さぁ? 頼みごとによるね。何かあるとでも言うの?」

「あの…………ボクたちの…………文芸部に入ってくれますか?」

「!?」




 高木は目を大きく開いて驚いた。賢一の鼓動はこれまでになく激しく脈打った。




「ふふ……ふふふ! アハハハ! 何これ? どういうことぉ?」



 高木が腹を抱えて笑いだした。高木の笑い声がどっと保健室に広がっていく。賢一は少し怒りを感じたがさっきまでの緊張はなくなっていた。開放された心地。賢一はいたって冷静になれた。その気持ちのまま言葉をかけた。



「ボクたちは……正直不安です。今までも何もできてなんかいません。もしも……もし生徒会の先輩がボクたちの先輩をしてくれるのならばすごく嬉しいです!」



 高木は下を向いていた。賢一に「もう一杯飲む?」と尋ねて賢一の湯呑を強引に奪いとり、お茶を入れて「ほら!」と言って賢一に手渡した。



「いいよ! やってあげるよ! 面白そうじゃん!」



 高木の突然の言葉に賢一の時間が止まった。高木の爽やかな笑顔が輝く。



「え……ええ!?」

「何驚いているのよ? これからよろしくね! 伊達君!」

「いや……まさかこんなことになると思って……」

「なかったというの? まぁ無理もないか。ただし条件つきね!」

「は、はい!」

「彼が私の入部を拒んだ場合はこの話は無しで。それでもいい?」



 高木の思わぬ突発的な返答に賢一は驚愕をしていた。ダメもとでやったことだ。それがこんなにアッサリと上手くいっていいものなのだろうか? 賢一にとっては人生初の勧誘。しかも相手は生徒会の先輩。賢一はややパニック状態になった。



「お~い。返事しろ~」

「あ、は、はい! 悟君に聞いてみます!」

「さてね。彼は明日、学校に来るかな?」

「たぶん来ると思います……なんとなくですが」

「ふうん。楽しみだね。じゃあまた明日図書室で」



「ほら、もう遅いし私も伊達君もお家に帰らないと」と高木に言われた後に肩をさすられ賢一は学校を出ることにした。学校前の信号をわたったところで高木とは別れた。あれほどの出来事があったのに……妙に冷静な先輩だ。



 外の雨は降り続いている。賢一はジャージ姿のまま家路をたどった。



 自宅に帰宅した賢一は母親にジャージ姿のことをたずねられたが「雨に濡れてしまったから生徒会の人にジャージを借りたよ」と言って夕食を食べてからすぐ自分の部屋に入った。そう言うしかない。まさか今日の出来事をそのまま家族に話すことなどできない。賢一は高ぶる興奮をどう抑えるのかをひたすらに考えた。



 賢一がベッドの上に横たわり目を閉じる。今日は星空を眺めることもできない。こうして目を閉じて瞑想するしかないだろう。そう自分に言い聞かせながら心を落ちつかせる方法をとってみた。それにしても急展開に次ぐ急展開な1日だった。明日という日がどんな1日になるのだろうか。予測しても期待より不安が大きい。悟には学校に来て欲しいものだが……どうなるか。やがて賢一は眠りについた――


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