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放課後HEROES-children of the revolution-  作者: いでっち51号
第1章「ふたりきりの文芸部」
13/41

第12幕

 日曜、母親に起こされて目が覚めた。母の話をよくよく聞くと賢一は悟の家に朝の9時に行く約束をしていたらしい。机の上に置いてある時計は10時を30分過ぎていた。この事を把握した賢一は勢いよく目が覚めて急いで外出の準備をした。幸いな事に昨日の夜から今朝にかけて普段着のまま机に伏せて寝ていたので更衣をする手間は省けた。しかしそれでも準備には時間がかかってしまった。走り気味に玄関の外まで出ると、自転車に飛び乗って猛スピードで悟の住むマンションへ走り出した。



 賢一の母は、金曜日に賢一と話した際に、賢一が朝9時に悟の家へ行く約束をしていたことを聞かされていた。小さい頃から友達をつくることがなかった彼のことをよく知る母親である。この日のことは話を聞いた時より気にかけていた。



 このような事があったので、昼間まで寝ている賢一は幸いにも運良く午前中に起きられたのかもしれない。ある意味幸せな少年である。悟のマンションの前に着くと急いで自転車を駐輪場の片隅に停めた。マンションの出入口をみるとそこに悟がいた。目が合うと笑顔で賢一に向けて手を振ってきた。賢一が遅刻した事に怒ってはないようである。



「やぁ、よう寝ていたかい?」

「ごめん、待たせてしまって」

「いいよ。お腹空いてない?」

「ううん……そうだね。なんとなく」

「ま、適当にどこかいこうかね?」

「うん。いいよ。どこにいくの?」

「適当に街のどこかで決めようや」




 目覚めてから間もない賢一は正直にお腹がすいているとは言えなかったが遅刻をしてしまったこともあって、空気を読まずにはいられなかった。ふたりで街を目指していくほど目に映る車と人の数が増えていく。街に向けて自転車を走らせるのはいつ以来になるのだろう。いや、生まれて初めてのことだ。そんなことをあれこれ考えながらも、耳は悟の話を聴いている。妙な期待に胸が踊る賢一だが出発からテレビゲームの話題を嬉々と賢一に話す悟もそのように見えた。



 街の中心にあるファッションビルの駐輪場に自転車を停め、二人で街を散策。当初の目的の靴屋とは関係ない本屋さんの中に入ってゲーム攻略本や最近の文庫あるいは漫画や中学生の勉強の参考書など、悟がジャンルごとにオススメな物を紹介してきた。悟の物知り様に賢一は感心したが特に本を購入はしなかった。



 やがて街中のマクドナルドで昼食をとることにした。時刻は午後2時を随分と過ぎていた。悟が「お腹すいてない?」と賢一に聞いてから、軽く1時間以上は経つ。随分と時間が経過したからか、寝坊した賢一も少しはお腹が空いてきた。



 悟は賢一の食べるバーガーの2倍程大きいバーガーと賢一が注文したセットの2倍程にあたる量のセットを食べていたが悟曰く賢一が小食なだけだとのこと。少しカルチャーショックを受けた賢一がいた。昼食を済ましてからも街の散策は続いた。



 主に街中の洋服売り場を歩きまわったが、悟がこのたび新しく購入する夏服を一緒に探していくことに延々と付き添わされた。オシャレにも全く乏しい賢一に対してなのか自身のオシャレに関する知識や理念等を熱心に賢一へ語る悟は妙に印象的だった。しかし賢一にとっての目的はあくまで靴を購入することであり、正直なところ悟の熱弁に付き合うのは結構しんどいと思っていた。悟はこの機にいくつかの洋服を購入したが賢一は特に洋服を購入することはなかった――


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