~プロローグ~
――少年はヒーローの仲間になることを夢見ていた。これはそんな彼の物語だ。
1998年4月、伊達賢一は吉島中学校に入学した。日常に変化を求めて陸上部に入部するも僅か一ヶ月で退部。それからというもの学校で誰とも話さず教室の片隅で机に顔を伏せて過ごす1日。家に帰ってからはゲーム三昧の日々。クラスでは地味を通り超え、教室の中に存在しているのかどうかわからないような少年となった。
賢一は小学生の頃にいじめを受けていた。そこを具体的に書くとこの物語が深刻なものになってしまうので、そのへんの具体的な話は割愛したい。ともあれロクに人を信じることも出来ない少年はいつしか無口な男子になった。また彼は元々自分に自信を持っている少年でもなかったので、自己主張をするにも大きな壁があった。当然スポーツや勉強ができる訳でもなくまるで冴えない男子。そんな彼が入学時に自身の変化を求めたのが陸上部だった。しかしその陸上部でも先輩の何でもない一言で傷つき、退部届を提出した。ちなみにこれは同級生の嫌味めいた画策どおりに彼が動いた結果でもある。
さて、この物語は伊達賢一とその仲間のお話である。彼が仲間と言える存在に出会えたのは吉島中学に入って間もないことだ。そこから物語がはじまるのだと思いたい。勿論さきほど述べた彼の性格や環境、その他諸々を踏まえれば彼のその後が大きく変わることなど想像ができないかもしれない。だけど末永くこの物語にお付き合いいただきたい。さぞ長い物語になろうがご配慮を願おう。
それでは「はなし」をはじめよう。