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言わぬが花

「さて開催は決定ということで。で、演奏会のプログラムなんだが、

演奏するのは、浜岡先生に指示されたあの8曲と、コンクール課題曲

だけでいいんだな。」

それ以上、俺は聞いてない。桜井先生からもらった去年のプログラムを見ると、

演奏会は、休憩時間を入れて1時間半以上2時間以内のようだ。

合計、9曲だけど、それでいいんだろうかな?


「国井先生、それでは全然曲が足りません。ちなみに去年は、1部はちょっと長めの

クラッシック系の曲3曲。2部はj-popやアニソンなど短くてなじみの曲を10曲、

2部は、去年は3年の部員が指揮をしました。で、3部にコンクールの課題曲と

自由曲をもってきました。」


全然、曲、足りてないじゃないか。

2年で2部で指揮をする太田に、一応、聞いた。コンクールの課題曲・自由曲

が指揮できるかどうか。答えは課題曲を、ふるだけならなんとか。だった。



「1部の曲の事では、大分もめました。まだ決まってません・・

自由曲ですが、浜岡先生は、ホルストの「惑星」の中の”木星”を選んだのですが、

これが、部員の中で不平を漏らすものも多くて、あまり練習、すすんでません」


なんだ、自由曲でも、もめたんだ。

俺は、ムカついた。結局、こういうゴタゴタが浜岡先生の心に、

ダメージを与えたんだ。

「わかった。演奏会でコンクールの自由曲はやらない。

休憩を入れて、1時間半。曲をふやすか、それとも構成自体 考え直しかだ。

明日、もう一度、全体会議だ。もう時間がないから、三日以内にいい案がでな

ければ、開催自体見直しだな。」

3人に八つ当たりしてもしょうがないのだが、さすがに俺はもどかしい。

俺に吹奏楽の知識と技術があれば・・・無力な自分が一番、腹立たしい。

ー・-・-・-・--・-・-・-・--・-・-・-・--・-・-・


次の日は、全学年テストだった。

これは、新1年生は中学生の、2,3年は前の学年で習った事の総復習テストだ。

俺は午後の時間に、許可をえて、浜岡先生の見舞いに行った。


先生は、少し痩せられたようだけど、元気で顔色もよかった。

いつものように、洗濯をして、洗濯機が回ってる間、浜岡先生と車いすで、

病院内を散歩した。もう少し暖かければ外の散歩もいいのだけど、

北海道の4月は肌寒い。


また、外の景色の見える廊下のテラスで、一休み。

俺は自販機でコーヒーを買って、先生にも勧めたが、先生は病院のほうじ茶がいいと

自分で、湯飲みについで飲んだ。

自分から行動するのは、元気になった証拠だ。俺は少しホっとした。


「いつも、本当に申し訳ない。片足だけの骨折なら、ギブスと松葉つえで、

なんとか学校へは行けるのだろうけど。」

いや、実際は浜岡先生には無理だろう。

先生の自宅は南ヶ丘で、バスの便もよくないし、終バスも7時だ。

自動車が運転できたとしても、学校内の階段を松葉つえで上り下りは無理だろう。


「・・・・・・吹奏楽部のほうは、どうですか・・・」

浜岡先生は、こちらを見ずに、ボソっと言った。

一杯、質問、不平、その他いろいろ言いたいが、我慢だ。

「どうも、私より生徒のほうが手順などを知ってるので、定期演奏会の事を、今、

考えさせてます。今年の定期演奏会は、例年より規模が小さくなると思います」

いや、開催すらあやういもんがあると、俺は思ってるが言わない。


「今更なんですが・・2月に課題曲がきた時に、課題曲・自由曲を決め、それから

定期演奏会の曲を決めておくべきでした。

プログラムなどは、父母に協力をを得ながら、精力的に進めないと

いけない時期、私はそれを怠った・・・教師失格ですよ。。」


浜岡先生は、背中を丸く縮こまってしまった。

5歳とはいえ、先輩の教員が落ち込んでるのに、俺はなにが言えよう。

ひとつだけわかるのは、大量退部者もでた、吹奏楽部員の間のゴタゴタだ。

それが、浜岡先生の落ち込みの主原因だ。


「先生、仕事の事は考えるのやめましょう。体に障ります。

怪我とはいえ、大きなストレスをかかえていては、治りが遅いそうですよ。」

部活動は、いわば教師のボランティアなんだけど、仕事の一部になってる。

手当は少ないうえに、休日も当然のようにつぶれる。

まあ、俺は運動部では自分が楽しかったからいいけど、今は、顧問がつらい。

何をどうすればいいのか、わからないしな。

部活の事でウツになるなんて、割に合わないもいいところだ。


「国井先生には、お世話になりっぱなしのうえ、吹奏楽部の部員たちが

面倒をかけてるでしょう。申し訳ない。

実は、今日、あたり国井先生が来られるかなと思って、定期演奏会前の

”各、先生方や生徒に頼む仕事”を 書き出しておきました。

本当は、すぐにでも、先生に引継ぎしないといけなかったのに・・」

「いや、先生はあの時は、熱が出てて、具合が悪かったから出来なくて、当たり前です」

すぐ、フォローしたんだけど・・


だぁ~~ますます落ち込んでいってる。お医者さん、助けて・・

俺はどうしたらいい?


わからない時は、ヘタな事をいわないほうがいいかも。


浜岡先生の書いてくれた指示書のようなメモに、お礼を言って、

先生を病室のベッドに戻して、病院を出た。

まだ、学校につくと5時。まだ部活真っ最中だろう。


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