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一寸先は闇

昨年度の吹奏楽の副顧問だった桜井先生にお願いして、

吹奏楽部関係のものは、すべて渡してもらった。

桜井先生は、吹奏楽部の制服の担当をしてたそうだ。


「だいたい、卒業して返却された上着と予備で間に合うのですけど、

たまに、規格外のサイズの部員の制服の発注をしてました。

といっても、ジャケットとタイ・リボンだけですけど」

下は制服のズボン・スカートだ。


桜井先生からもらった資料はあまりなかった。

その中に去年の定期演奏会のプログラムをみつけた。

”お、これは、役に立つ”と思って、中をみると、タイムテーブル と

書かれたプリントが入っていた。

これは分単位で、何をするか、どこに移動するか書いてあった。


でもな・・俺は授業の間の休み時間に、ちょっと考えた。

このプログラムって、後ろに企業やお店の広告がのっている。

こっちで作った原稿を印刷所に持ち込んだのだろう。

表紙は、なんとも奇妙な抽象画。中身は、校長の挨拶から始まって、

演奏会の曲順をかいたページ。曲の解説のページ、各パートのメンバーの紹介

と、もりだくさんだ。

これは、お金も時間もかかるってことだな・・


「先生・・」と声をかけられ、ハっときずく。次の授業のクラスの係がまっていた。

いけないいけない、ワークを授業前にかえさないと、いけないんだった。

慌てて授業に行く。

授業の最後に、小テストを行った。(昔と違って、この小テストも普通のテストと

一緒に、内申点に加味されるので、生徒はなんとも息苦しいだろう)

案の定、”小テストをする時は前の授業の時に言ってください”と生徒から

文句がでた。言ったはずだったんだがな・・・ウッカリしてたか。


教員にとって部活動は、実は正規の勤務ではない。雀の涙程度の手当がでるが、

限りなくグレーゾーンだ。

音楽は嫌いではないが、これほどまでに、吹奏楽部が面倒とは、思わなかった。

10分の小テストの間、俺はまた、部の事を考えてた。


やっとおまちかねの”昼休みになった”

今日は、4時間目に授業があったので早飯はできなかった。


生徒ではなく、今日は保護者が来校した。何??俺の指導になんかあったのか?


保護者は、”吹奏楽部父母の会”のとりまとめをしてる、飛鳥井さんと土本さんだった。

(3年生の部長、コンマスのご母堂だ)


”いつもお世話になって、・・・いえいえと”と型どおりの挨拶のあと、本題に入った。

「先生、去年はもうプログラムに乗せる原稿や広告の原稿が集まり、

印刷の段階にはいってる時期なんですが・・・浜岡先生は入院されてるし、今年は

いったいどうなるのでしょう」

どうなるか・・俺にもわかりません。一寸先は暗闇だ


プログラムは、俺が副顧問になる前から、もう原稿あつめしていないと、いけない。

広告取りなどの指示も一切なかったそうだ。

浜岡先生、もう、今年に入ってから、吹奏楽部の仕事が出来る状態じゃなかったのかも。

これからじゃ 今までのようなプログラムじゃ間に合わないんじゃない?


それに浜岡先生の怪我で、定期演奏会自体、危うい状態なんだけど。

俺自身は、定期演奏会をつぶしたくない。

もちろん、延期という形もあるけど、そうなると、3年生の受験の関係やコンクール

の練習とか、いろいろ面倒事がふえてくる。


楽しみにしてる部員もいるし、部員のモチベーションのアップにもつながる。

それに、浜岡先生の”心が元気になったら”、怪我なら指揮だけでもやってもらうほうが、

顧問を続けやすいと感じてるからだ。


俺は、とりあえず、去年のようなプログラムは無理と言った。

学校で印刷してもらうしかないか・・

飛鳥井、土本さんらは、ホっとしながらも、”じゃあ、演奏会の費用、足りなくなったら

どうしたらいいかしらね”と不安げに帰って行った。

そうだった。会場はお金がかかるんだ。当たり前だけど、どうする・・


決めた。俺は腹をくくった。俺は音楽の専門家でも、物知りでもない。入門書を読んだくらいじゃ、

実務は無理というのがわかった。

後は、部員たちに決めさせよう。


定期演奏会をするかしないか。

するとしたら、どんな演奏会にするか。

そうした場合、どんな仕事をしなければいけないか。


今日の放課後は会議だ。集合をかけよう。


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