表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

船頭多くして・・

「 というわけで、浜岡先生は、しばらくは吹奏楽部の話題は

避けて下さい。との精神科の先生の話でした」

あくる日、俺は教頭に報告。教頭は渋い顔をした。


「弱りました。それまでは、国井先生が、一人で指導していくわけですか・・

念のため聞きますが、楽器を何かやってたとかは・・」

「もちろん、ないです。スポーツならいろいろやってたんですけどね。

音楽は高校の時も選択教科じゃなかったです」


俺は自信をもって答えた。だからといってどうなるものでもないけど。

「6月の定期演奏会、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないです。先生の心の状態もよくはありませんが、それ以上に

足の怪我ですね。特に膝をやられてるので、怪我が治っても、リハビリを

しなければ、動けないでしょう。

体を動かさない期間が長いですから、体力もおちます。

正直、二か月で現場復帰は、厳しいかもしれません」


俺は平然と答えたが、内心はかなりあせってる。

演奏会まで誰が合奏をみるのか?

あの「吹奏楽部に入ってみよう」って本には、合奏では全体の指導をする

と書いてあった。どこをどう指導するのかは、わからないが。

ー・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


今日は 授業数は2時間と、比較的楽だったので、授業の下調べに、

たまった書類の整理、それ以外に校務として、生徒指導部の仕事がある。

俺と50代の横山先生の二人で担当してるが、これもなかなか忙しい。

去年は、喫煙事件に校内での喧嘩、いろいろあったので、指導室で生徒に

説教・・いや指導 する事も多かった。


横山先生曰く

”いや~去年、問題を起こしたのは1年が多かった。普通は一年生の時は静なんだが

今年、どうなることやら”



昼休みに生徒が来ることを予想して、今日は昼飯を早めに食べた。

相変わらず、コンビニのもんだけど。


昼休みに、やっぱり生徒が二人相談にやってきた。

それが吹奏楽部の部員じゃなく、サッカー部の3年二人だ。


「おお、お前ら、どうした?」


3年のキャプテン筒井にマネージャーの佐藤。

ただ話がしたくて来たわけじゃない。何かの相談にきたようなんだけど、どこか

とまどってる様子だ。


俺は指導室で話を聞く事にした。

スチールの机と折りたたみの椅子だけの、殺風景な部屋だ。

(生徒を指導する時は、”取調室”のように感じる時もあった)

二人は、とまどいながらも、キャプテンの筒井が、打ち明け話のように

ボソボソ喋りだした。


「今は副顧問でない国井先生に相談していいか、迷ったんですけど、

俺ら、すごく困ってるんです。」

サッカー部の部員たちは、明るく強く元気よすぎ、が取り柄だったのにどうしたんだ?


「まあ、俺に出来ることは、少ないかもしれないけど、何があったんだ」

筒井はキャプテンらしく統率力もあり、細かい事を任せられる判断力もあった。

その筒井が、弱ってる・・


「あ、今年きた体育の藤原先生がサッカー部の副顧問に

なりました。なんでも、藤原先生は、体育大学でもサッカー専門で、

悪いけど、顧問より、サッカーの考えが新しいっていうか・・

で、練習中、顧問と副顧問の意見が対立しちゃうんですよ。

練習方法一つとっても。

確かに藤原顧問のいう事はわかるんですけど、難しいくてついていけない時もあるし、

顧問の村山先生の説明のほうが、動きやすいんです。

俺ら どうしたらいいすっか?」


”船頭多くして舟進まず”だ。それにしても、まだ4月だぞ。早々に対立するとは。

端的に言えば、二人とも顧問失格だ。

部員の前でそんな対立をするのは。


「困ったな。とりあえず、去年の副顧問のよしみってとこで、

二人に話しかけてみるよ。それから考えてみよう。

部員のほうは、今度、対立する場面に出くわしたら、全員一致して中立の立場でいる事。

部員内で顧問派、副顧問派なんてできたら、サッカー部は終わり。

一回戦敗退を覚悟するんだな」


俺には、これといった解決方法はわからなかった。藤原先生にそれとなく言って

顧問の先生の愚痴を聞く。顧問は50前で指導にかけてはベテランだ。

きっと藤原先生に不満がたまってるかもしれない。

まあ、部員たちには悪いけど、そのうち、顧問と副顧問が、

自分たちで気づいて、話し合ってくれればいいだけの話なんだけど。

俺は吹奏楽部の事で手いっぱいで、脳内に余裕がない状態だ。

すぐには、サッカー部のため動けない。


船頭が多くても舟は進まない、でも吹奏楽部は船頭もいない舟だ


浜岡先生の心が治るまで、俺が顧問だ。

先行き不安になりそうな所、そう言い聞かせて、音楽室に向かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ