表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

瓢箪から駒

プログラム作りで、草稿が出来たそうで、

これからはPC同好会と、打ち合わせしながらの作業になった。

プログラム係りの3年の東と、なぜか2年の和歌山が、担当に

なってる。”お願い係り”の時に、一緒にPC同好会に行っただけだが。


吹奏楽のほうの練習は、順調にすすんでるようだ。

ただ、パートアンサンブルのほうは、どうなのかと、

俺はそれぞれのパート練習を覗いて回った。


結果、1年のいるパートでは、アンサンブルに苦労してた。

童謡など簡単な曲を演奏するだけなんだけど、それも苦労してる

楽器未経験者が多い。

1年生の指導に俺の助言をもとめてきた部員がいたが、

俺にアドバイス出来る事は、

”肺活量をふやすため、走ること。腹筋を使うための筋トレ

あと、重い楽器をもつ部員は、腕立て伏せ” というくらいだ。


俺のアドバイスは、コンマスの土本にまでなぜか届いた。


「国井先生のアドバイスにより、明日からランニング、筋トレ

女子は腹式呼吸の特訓を、パート練習前にいれます」


”え~面倒、””たるい”なんて声が聞こえたが 土本の

「ダイエットになります」の一声で、士気があがった。

飛鳥井部長に聞いたところ、このランニングと筋トレは毎年恒例だったそうだ。

部のゴタゴタと冬期間ということで、とりやめてたそうだ。


ついでに、飛鳥井部長に酒井の事をお願いした。

「去年とか、いろいろあったようだけど、頼む。酒井の今までの事、許して

やってくれ。アイツもいろいろあるんだ」

俺は頭を下げた。浜岡先生のストレスの元の元は、酒井と飛鳥井の対立が

発端だったという話だ。


「酒井さんは、意見はある面、間違ってはいないんですけどね。

タイミングが悪いというか。部をまとめる僕としては、酒井さんの

意見ばかり聞いてられなかった。国井先生の、酒井を指揮者側に立たせた

事がよかったんです。あれで少し、目が覚めたんじゃないですか?」


言い方は、丁寧だけど 雰囲気がキツい。

酒井美香。。お前、どんだけ自己主張が強かったんだよ・・

俺はため息をつき、再度、飛鳥井に頼んだ。


ー・-・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・

5月の中旬になって、やっとプログラムの見本が出来て来た。


「これは、文字ヲレイアウトして写真を入れただけです。

細かいカットは、まだ相談中でして。

あと9ページ目、最後のページの下半分があまりそうなんですが、

検討してください。余白でもいいし、イラスト・写真でもいいと思います」


練習中の部員のかわりに、俺が見本をもらい、係りのものに渡した。

ちょっと早いとは思うが、6月中旬には定期テストがあり部活は1週間前は

禁止だ。なるべく、そのまえに片づけたいと、俺は思ってるのだが・・


「ここは、もう決まりだよ。全員映らなくていいから浜ちゃんが

指揮してる写真をいれよう。なんたって、ウチらの指揮者様は浜ちゃんだし」


係りの全員一致、さっそく写真探し。

ちょうど、去年のコンクール前の写真が、データで残ってたので、

同好会に渡そうとすると、”私いきます”と和歌山が、名乗り出た。

いや、誰でもいいんだけど・・


「せんせ、ここだけの話だけど、裕子こと和歌山裕子は、PC同好会の

誰かに恋してるみたい。国井先生、さぐってきてよ」

「自慢じゃないが、俺、35歳独身恋人なし、そういう事には疎いから無理だ」


”やっぱりね~”なんて、部員が笑う。


「お前ら、余計な事いってないで、試験前にもっと練習しとけ。

あと、プログラムが出来上がったら、二つ折りにして、閉じる作業が

あるからな。大変だぞ。プログラムは700部作る。覚悟しとけ」


俺はテスト作りと採点で、6月は覚悟しないといけない。

相当、忙しいのは毎回の事だが。

ー・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・--・-・-・-・


俺は地獄の試験作りに入る前に、病院の浜岡先生のところにむかってた。

車をとめ、病院に向かうと、なぜか、神崎にばったり会った。


「あ、先生。もしかして浜岡先生のお見舞いかな?

俺も一緒にいっていい?」

だめだとも言いづらい、浜岡先生のストレスの元なんだし。

どう断ろう、いっそ、俺が病院に通ってる事にしようか?

嘘くさいな、どこから見ても健康体の俺だしな。


困ってるまに、神崎はどんどん先に進んでいった。

「俺さ、先生に言われてから、ボランティアっての?やりはじめたんだ。

おもしろいもんじゃないけどさ。今日は病院内のお楽しい会の手伝い。

この間は、雑巾縫いとか、したんだ。周りはばあちゃん、ばっか

いろいろ体験するって、いいもんだ」


一人の喋り続ける神崎は、いつもの飄飄としたかんじではあるが、

口調が少し、明るいかな。

「おい、浜岡先生の所にいったら、おとなしくしとれよ。っておい、

聞けよ・・」神崎の足は速く、俺は大分遅れをとった。


結局、二人で浜岡先生の所にきてしまった。

どうなるんだ・・

浜岡先生、ちょっと緊張した顔で

「君はペットの神崎君だね。よく来てくれたね。どうした?」

「どうしたは、こっちのセリフですよ。先生。歩道で事故にあうって、

どんだけ不幸体質なんですか。みんな心配してるんすよ」


あーあ、俺からすれば、先生に対してすごいタメ口だ。


「俺さ、先生にちゃんと話そうと思ってさ。

あんときはカッコ悪いから言えなかったけど、うちの母親が

”部活をやめて勉強に専念すれ”ってうるさくてさ。

毎日、責められるから面倒になって、辞めちゃったんだ。

本当は、勉強、嫌いだからあんま、してない。

すみません、ごめんさい先生」


神崎は、頭を下げた。勉強しない事に謝るんか??


「そうか、神崎も大変なんだな。ところで、勉強がキライって事は

卒業したら、就職かい?」

先生は、ちょっとほっとしてる?ような顔のような。

「まだ、きめてないっす。国井からボランティアを勧められたんで、

この病院の ボランティアグループに入ってます。

そうそう、それで今日もお楽しみ会の手伝いで、俺、トランペット

ひさびさに吹いて、会場をもりあげたんすよ。

上手く吹けなかったけど、そこがまた受けたみたいで。俺、ペット

少しでもやってて、よかった。

俺のへたくそな演奏でも、喜んでくれる人がいて、感謝してくれる人がいる

って、すごいじゃないですか。感激もんすよ。」


浜岡先生は、少しの間呆然としてたが、

「そうかそうか、それはよかった。頑張りたまえ。」

「怪我がなおって、早く復帰できるといいですね。

あ、お見舞いの品も何ももってこなかった。購買に行って

買ってくる、先生、欲しいものない?」

「いやいや、神崎君の顔を見ることができただけで、大満足だよ」


どうするんだ。精神科の先生が注意したのに、地雷ふみまくりの話ばっか

だったぞ。定期演奏会で1曲でも、浜岡先生に指揮してもらうつもりだったのに

もう無理か・・


”と、バスの時間に遅れる。国井先生、俺、先に帰ります”と神崎は

風のようにかえっていった。看護師長から、”廊下は走らずに”とか注意されてら


浜岡先生は、うつむいたままだった。

俺はおそるおそる声をかけたら、いきなり手を握ってきた。目がウルウルしてる


「国井先生、神崎の事、ありがとう。私はうれしいよ。あの子は部でも

怠慢で練習嫌いだった子だけど、”楽器やってよかった”って。

感激だよ。これ以上の言葉はない。

俺は、浜岡先生の気持がわかりかけた。ようは、”楽器をやってよかった”が

浜岡先生の理想なんだ。

定期演奏会の成功でも、コンクール優勝でもないんだ。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ