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沈黙は金

その夜、俺は深く落ち込んだ。

ちょっと知ってるだけってので、余計な事、言ったかもしれない。

部内の雰囲気は、こわさなかったものの、部員たちはキョトンとしてた。

浜岡先生ならな~。きっと上手に具体的に指導できるんだろうな。


「ルパン三世のテーマ曲」を知っていたから、つい・・

他の曲で知ってるのは、「アナと雪の女王」で、

曲もサビの部分しかしらない。

(なんだかな~。やっぱ畑違いもいいとこだ。)

俺は一人暮らしの何もない部屋でゴロゴロして、TVを見てた

何かの助けか、タイミングよく「アナと雪の女王」字幕版が、始まってた。


へ~~。これってミュージカルっぽいんだ。

”Let it go” ありのままに。。だったっけ。

ありのままの俺は、グランド走ってるか、ラケットをふってるかだ。

いくら事務方の仕事を中心っといっても、勝手がわからん。

俺はダンダン腹がたってきて、枕にしていたクッションに拳を入れた。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・--・-・・-・-

次の日、合奏始まる前に、制服の確認をした。

2,3年生は問題ないのを確認(極端に背が伸びたり、太ったりした部員はいなかった)

1年生用にと、もってきた制服をパートリーダーにそれぞれの1年用に選んでもらった。

1年生も喜んで制服を試着してる。

やれやれ、これで一つ仕事がかたずいた。


合奏の終わったあと、浜岡先生の入院してる病院へ行った。

洗濯も自分で出来るなら、もう いろいろ大丈夫だろう。


浜岡先生は、退屈してたんだと、週刊誌のパズルを解いてたところだった。

俺は酒井の事を報告した。

「酒井は、まあいろいろあったようで、熱を出して学校を休んだんです。

二日目にsaxパートで仲のよい”智っち”と一緒にお見舞い。

つらかったんでしょうかね~。泣いちゃいましてね。酒井美香。

結局、それがいいキッカケになったようで、パート内でも上手くやってるようです」


俺の話を黙って聞いてた。

「で、いろいろあった って何?」

「いやそれが、推測と噂で。ただタイミング的にそうかなと・・」

出来るなら言いたくないのだが。

「言いにくい事ですか?」


「サッカー部の川野に彼女が出来たらしいです。その川野ってのは、酒井の

幼馴染だったらしく。これは、女子の噂話をたまたま聞いただけですから、

どこまで本当か、眉唾的ではあるんですけどね」


ただ、その話を聞いた後くらいに、酒井は熱を出して休んだからな。


「そっか。川野君に彼女がね・・」

「え・川野の事、知ってるんですか?」

「まあ、酒井の幼馴染って事で、一言二言話す機会があったよ」

浜岡先生、意外と細かくフォローしてる。


教員は職業柄、生徒の事を細かく知る必要が出てくる時もある。

生徒指導の時は特にそうだ。

書類に記入の必要のない些細な事は

必要に応じて脳内の引き出しにしまってあったりする。


生徒指揮の合奏の事を相談した。

俺は、何も指導できないから、生徒にまかせっきりになるけど、それでいいかどうか。


「国井先生、生徒指揮の子は真面目な子でしょ?」

ええ、と俺がうなづくと

「生徒指揮を希望する部員は、熱心な音楽愛好者でね。その太田君

も、同じく真面目で熱心。

今頃、家でもCDと楽譜に埋もれて、いろいろ勉強してるでしょう。」

浜岡先生は、私もそうだからと、自分を指さし笑ってた。


指揮で思い出した。

「そうそう、3年進級時に退部した部員なんですけど、そのうち

3人は音大に行くとか、教育大の音楽科を受けるとかで、勉強で忙しくなるから

って理由でした。そのうち一人は指揮を勉強したいからだそうです」


先生はそれを聞いて大笑いした。

「ははは、室井のやつ、はまったな。さて、これからどうするのか。

指揮科に入るのは難しいらしいけど」

その室井って子、去年の生徒指揮やってたんだな


それ3人以外、やめた部員の生徒の話は しない事にした。


帰り、ナースステーションによって、相談をもちかけた。

精神科の先生に会いたいのだけど と。

そうしたら、「カウンセリング希望ですか?」と言われた。

「違います、浜岡先生の事についてなんですけど、前に部の話は

厳禁と言われてたので、今はどうしたらいいか、相談したいんです」


”ちょっと待って下さいね、まだおられるかも・・”

応対してくれた看護師は、リスのように小柄で顔のつくりも小さい。


”・・はい、そうです。ええ、すみませんがよろしくお願いします”

と、PHの電話を切り、「ちょうど、帰られる直前に捕まえる事が出来ました

急いで外来の方へ行ってください」

俺は、たぶん、業務以上に親切に対処してくれた看護師さんに、お礼をいい、

”嫁にするなら、ああいう子がいいな”なんて、ニヤつきながら外来へ急いだ。



外来のカウンセリング室では、先生白衣も脱ぎ、ふつうのおっさんに、

値段の安そうなジャンパーをはおってた。


「本当にすみません。お帰りのところ。少しでいいので、話を聞いて

ください。先生に吹奏楽部の話題をださないように言われたので、

そうしてます。でも、浜岡先生から切り出されると、こちらも答えないわけには

いかないので、まあ、簡単ですが、説明してます。

本当は、定期演奏会で1曲だけでも指揮してほしいのですが、それも言わない

ほうがいいでしょうか?」


帰りを急ぐ先生のために、俺は現状の説明と質問を早口で言った。

先生は、ふむ、と言いながら思案顔。


「浜岡先生は、去年から定期的にカウンセリングに来ておられますが、

最近は、カウンセリング中表情も明るく、明るすぎず、いい傾向になってきました。

怪我のリハビリもはじまり、十二指腸潰瘍もすっかり治ったという事です。

ストレスのおおもとの、吹奏楽部は先生の対応は大変いいですよ。

まだ、部の事を頼むのは時期が早いかもしれません。

動けないのに、期待をかけると、負担になるでしょう。


かといって、”あなたがいなくても、ちゃんとやっていけます”というのを

あからさまに態度に出すのもよくありません。難しい処ですが。


めどとしては、左足のリハビリが出来るようになってからでしょうか。

そこは、カウンセリングしながら、検討です」


とりあえず、浜岡先生には今日の応対でよかったようだ。

・聞かれた事は簡潔に答える(ネガティブな事項はさける)

・指揮の復帰を、今は要請しない。

で、質問のある時は・・答えてもらってない。質問の内容によるんだろうな。


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