7
一時間もしないうちに三島に着き、僕たちは新幹線を降りた。そこからホテルまで専用のバスが出ているというので、そのバスに乗った。三十分ほどでホテルに着いた。バスがホテルの敷地内に入ったところで、僕は、
「ずいぶん広いね」
雨宮さんに言った。なんだか、敷地内に大きな建物が二つも三つも並んで建っているのである。
「そうなんです。このホテルには、広大な敷地の中に、宿泊施設だけでなく、レストラン、ビール醸造所、温泉施設、サッカー場、美術館などがあります。ホテルというよりレジャー施設と呼ぶべきですね。ここ、静岡ではけっこう有名らしいですよ」
バスを降りると、僕と雨宮さんは早速ホテルへチェックインした。部屋は七階、最上階である。エレベーターに乗って七階へ行き、部屋に入った。
部屋は入ってすぐに六畳ほどの洋間があり、その左手が寝室になっていた。洋間にはどこのホテルもそうであるように、テレビとソファがあった。その向こうにある南窓からは富士山がでかでかと見えている。
「関口さん!見てください、すごいですよ」
雨宮さんはキャリーバッグを床の上に放り出すと、窓際へ駆け寄り、富士山を眺めはじめた。僕も彼女に誘われるままに彼女のすぐ後ろまで行き、窓の外を見た。富士山は御殿場の街――それは家々と林と工場との集まりだった――のすぐ向こうで、白く冠雪した頂上を青空へ突き出している。
雨宮さんが夢中になって窓ガラスに顔を近づけるあまり、口元のガラスが白く曇った。雨宮さんはコートの袖口でキュッキュッとガラスの曇った部分を拭くと、こちらを振り返った。
「どうします?通常ならこの後、敷地内にある施設でパターゴルフなどしていただく予定なのですが――んっ」
僕は彼女の肩に腕を回し、キスをした。がつっ。唇より先に、彼女の出っ歯の前歯が僕の歯に当たって音がした。そのままソファの上に押し倒した。唇を離すと、下から彼女がその綺麗な二重の眼で、じっと僕を見あげてきた。
「――まだ明るいですよ」
その声の冷たさに、僕は、そっか、まだ明るいね、とつぶやき、彼女の肩に回していた腕を、ソファとの間から抜き取った。何事もなかったかのように、彼女から離れた。




