11
それから僕は仕方なくタクシーでホテルから三島駅まで帰り、アパートに帰った。ホテルを出ると外は真っ暗で、風が冷たく吹きすさんでいた。
雨宮さんからの小包みがアパートに届いたのは、それから数日後のことだった。包みを開くと、中には請求書と、なんにもラベルが貼られていない、アルミニウムの350ml缶が入っていた。雨宮さんからの簡単な手紙も付いていた。
「関口様 お世話になっております。請求書と夢の入った缶をお送り致します。
まず、請求書についてですが、夢の代金と旅行費、合わせて六十四万円となっております。本来なら請求する権利はあるのですが、同行した私の分の旅行費は私が自費で負担致しました。請求書にある通り、〇月×日までにお支払ください。
次に同封した銀色の缶についてですが、この中に関口様の夢の情熱と才能が液体状になって詰められております。ジュースを飲むときと同様に、プルトップを開け、一滴残らず飲み干してください。数時間で夢のエネルギーが体に行きわたり、以前と同じような状態に戻ります。
追伸 悔しかったら、小説を投稿するなりなんなりして、お金を稼いで返金してみてください。このクズ野郎!」
それ以来雨宮さんと会うことはない。請求された金は、結局自力では全額返すことができず、親に少し借りて、返した。




