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ゲームの神はやりたい放題  作者: よもぎだんごろう
序章 キャラメイク?
3/5

別神

最初に投稿した時と基本プロットは同じですが全く別物になりました。

第1部から書き直しております。

没個性な神々に対し批判いただきましたので気合を入れ書きなおしました。

いかがでしょうか。

 神々の住む天界にはそれはそれは荘厳な和風の神殿があった。

 その神殿の奥の、だれも知らない小さな隠し部屋。

 向かい合った壁にそれぞれドアがあり、あるのは小さな机と大きな丸い鏡だけ。

 右側の真っ赤なドアが開いて、1柱の女神が入ってきた。

 緩やかに波打つ真紅の髪は腰まで届き、魅惑的な黒い瞳に高い鼻梁、身につけるのは赤いサンダルと同色の薄い布。

 左肩から斜めに流した布は腰に巻きつけられ、それほどの薄さを感じさせるのに男なら誰もが見たいと思う部分を全て隠している。

 おそらく下着などつけていないことだろう。

 歩くたびに踏み出した左足がから太ももから出る。

 そんな恐ろしく挑発的な誘惑的な姿であるのにどんな見境の無い変質者であっても飛びつくのをためらわせる神々しさが有る。

 これが腐の女神だった。

 持ってきた篭をテーブルに置き、肉感的な真っ赤な唇にどんな男のハートも撃ち抜けそうな笑みを浮かべて、金属の鏡を覗き込んだ。


 フン。


 鼻先で一つ笑った腐の女神は鏡に映る姿に語りかける。


「いつまでもうじうじして殺さないから、あなたの分の魂も取ってきてあげたわ。2つと命じたのだけどあのストーカー男ったら4人分も取ってきたのよ。どの子も清く正しく美しく、あなた好みの女の子たちよ」

「そんな子を殺すなんていけないことだって言ったじゃないの」


 フン、また一つ笑い眺めた鏡に映る姿は、腐の女神と全く異なる印象の女神だった。

 一言で表現して大和撫子。

 つややかで真っ直ぐな黒髪を腰までたらし、真っ直ぐ見つめる瞳は腐の女神と同じ黒だが純粋で受ける感じがまったく異なる。

 だが、こんなことは許されないだろうと思われるが、その美しい顔に粘土を着けてデスマスクを作れば同じものが出来上がるかもしれないほど顔の造りは似ていた。

 いや同じだったが、誰もそれを認めようとはしないことだろう。

 それだけ印象が違った。

 背格好から見て体型も腐の女神と全く同じようだが、平安時代の狩衣のような白い和風の装束で体を包んでいる。

 もちろん足は白い足袋、白い草履。


「何きれいごと言ってるのよ。誰か殺さないと使徒がいなくなっちゃうじゃない。まさか自分で転生するなんて馬鹿なこと思ってなかったでしょうね? とにかく4人全部あなたにあげるわ。じゃあね」


 白い装束の恋愛の女神は4つの魂が入った篭を黙って持ち上げて白いドアから外に出る。

 残された鏡に映る腐の女神の後姿は辛そうに歩く恋愛の女神と異なり楽しげだった。


 転生させる魂が4つも有るので女神は直接転生の祭壇で新しい命に転生させることにした。

 その魂が入るべき4つの体はすでに用意されている。エロジジイ神たちが新しい世界を創るのにあたって参考にしたゲーム”剣と魔法の世界”には派生ゲームとして乙女ゲーム”白の世界”があった。

 ”剣と魔法の世界”と同じ舞台で、主人公として設定された4人のうちから自分のキャラクターを選び、ストーリーを進めて幸せになる。

 太古より愛を司る女神はこのゲームの中で、主人公に助言を与えるやさしい女神と一緒にされて信仰を集めてしまった。

 これだけなら他の神々が力を失っていく中では良いことなのだが致命的な問題が一つ。

 ”白の世界は”18歳以上の追加仕様で腐女子が喜ぶ痛いゲーム”赤の世界”に変貌するのだ。

 そして女神は変身する……こちらのほうがファンが多い。

 そして女神は腐を兼ねることになる。

 もともと、恋愛などという物は何の制約も受けないものだから。

 ただ古き女神の最後の抵抗として、別神格ではあるのだが……基本的にあれとこれは元が同じなのだ。

 見た目も変わるのだが、酔っ払って別人格などというのに実はかなり近かった。

 そんな訳で恋愛の女神は自分のしでかした不始末のために”白の世界”のハッピーストーリーを参考にして主人公に当たる4人分の体を作り上げた。


 そのストーリーとは。

 小さな村で生まれた娘が王子に見初められて王妃に……主人公、村長の娘アリス。

 エルフの少女が旅の果てに……主人公、冒険者シルフェット。

 呪われた獣人の少女が……主人公、ミーニャ

 そして魔族の少女が敵対する……主人公、ティアフィーリア


「おおっ!すばらしいではないか!!」


 作業に集中していた恋愛の女神に大声で脅かせたのは、悪役予定の元正義の神。

 勝手に横に置かれた篭の仲から魂を一つつかみ出して眺めていた。


「魔王候補を探しておったのだが、これと言う者がいなくてなぁ。ここで待てば良き魂が手に入ると腐の女神に言われたのだ。この魂なら、清く正しく美しく、うむ、我の好みだ」


 にこにこしながら勝手に魂を撫で回すこの正義の神様、一本気でいい神なのだが欠点としてかなり自分勝手で思い込みのきついところが有る。

 もちろん何柱かおられる正義関係の1柱なのだが……。


「しかも魔族の素体まで用意されているではないか、我が使徒としてもらいうけるぞ」

「その子は!」

「案ずるな、我が守ってやるのだ、必ず幸せにしてやろう。魔王だけに許された特権でステータスは全て10に出来る。すばらしいではないか、では転生!」


 この正義の神は他人[神]の言うことを聞かないという欠点もあった。

 そして余計なお世話をするという欠点も……。


「後3人だな、手伝ってやる。我が手伝えばステータスは代わらぬが、どんな誘惑にも負けない強き心が手に入るぞ。それ、転生! も1つ、転生! 最後に、転生!これで終わりだ。ではさらば!」


 上機嫌で正義の神が立ち去るのと入れ替わりにやってきて、同じく立ち去ろうとした女神を呼び止める者がいた。


「ちょっとまってくださ~い。あぁぁ、遅かったですかぁ」


 走ってきたのはドジ女神、わざとらしくハァハァ息を乱しているが明らかにタイミングを見計らっての登場だが、力を使い果たした恋愛の女神はそれに気が付かない。


「先ほどお姉さまが、家へ立ち寄られたときにソン君がおいたして、ごめんなさいっ!」


 ぺこりと頭を下げて差し出したのは1つの魂。

 恋愛の女神はそんなところに近寄りたくもないが、腐の女神は同じ邪神同士で付き合いがあるのだ。

 そして元邪神たちはかの女神達が同一だと知っている。


「これは?」


 先ほども……しかし。


「家にあった地獄行きの魂とお姉さまの持っておられた魂と、ソン君がいたずらして取り替えちゃったのです」


 ソン君というのは石像に魂を吹き込まれた猿でドジ女神のペット。

【天にひとしい大聖人】とうそぶいた隣国の猿神の親戚筋である。


 それはとにかく、正義の神はよく確認しないで魂を転生させてしまった。

 アリス、ミーニャ、シルフェットのうち誰かに極悪人の魂が入ってしまった。


「その極悪人というのは?」

「わかんないです。多分テロリストか殺人狂だと思うんですけど、ソン君がロリちゃんのところから捕えられた魂をとってきましたから。ロリちゃんからは地獄行きが一人足りないと言われただけなんです」


 そう、本家の石猿も泥棒の神、人騒がせな神として知られている。

 恋愛の女神としてはドジ女神にごめんなさいと頭を下げられれば許すしかない。

 石猿はいたずらする存在であるし、そのような者がいるところに大切なものを持って行って盗られた責任も、鑑定もせずに転生させた責任も全て恋愛の女神にあるのだ。


 とにかく、今ドジ女神が持ってきた魂を転生させねば、その魂は地獄に落ちることしかできなくなる。

 しかたなくゲームの中では主人公の邪魔をする敵役だが、隠しヒロインとしてもストーリーがある醜い少女レイナに転生させた。

 レイナはもともと美少女として生を受けたが、火傷で醜くなるのだ。

 だから恋愛の女神の加護があっても、魅力のステータス値は10にならず、1しかつけることができない。

 ゲームではやけどの治療をして初めてヒロインとなることができるのだ。

 仕方なく女神はゲーム同様に、レイナのやけど治療のために治療薬を入手するレイナ専用のミッションを作った。


 女神は本来1人しか使徒を作らないところを5人も成り行きで作り、さらにミッションまで作った。

 さすがに多くの神力を使いやっとのことで自分の神殿まで戻ってきたが、念のために自分の使徒たちの最終確認をして愕然とした。

 ドジ女神に干渉されていたのである。

 そこで初めてすべての出来事が腑に落ちて、鏡のある小部屋に飛び込んだ。


「ずいぶん存在が薄くなったわね、おつかれさま。安心して消えてもらっていいわよ」

「あなたの仕業ね」

「ふふふ、さぁどうかしらね」


 恋愛の女神の使徒たちは、ドジ女神の使徒のハーレム要員として運命づけられていたのだ。

 腐の女神は司るBLとかGLとかが大嫌いな恋愛の女神は腐の女神が主導権をとってドジ女神を訪れたときにあえて意識をそらしていてそのような細工をされていることに気がつかなかった。


 ドジ女神は少し前に自分の使徒として勇者を召喚した。


「……だからあなたがはゲームそっくりの世界に私の使徒へルマンとして転生して魔王を倒すのよ」

「めんどくせぇ、ハーレムはあるんだろうな」

「魔王に勝ったら王女たちを好きなようにできるんだよ」

「最初からがいい。旅の途中で増えていく仲間のハーレムはあるんだろうな」

「旅の仲間は自分で探しなさいよ。サポートに一人だけつけてあげるから」

「それはいい女なんだろうな!」

「違うわ、猿だけど役に立つの」


 女神は最初、石猿をつけてやる気だった。


「自由に出来る女もいなくて魔王退治なんて、めんどくせぇことを誰がするんだ」

「どうしてもって言うなら腐の女神様にお願いして、恋愛の女神のところから女の子を取ってきてあげる。それから獣人になるけどかわいい女の子も付けてあげる」


 猿がだめならピンクのメス豚でも……。


 たまたまクズが勇者になったようだが、人災の邪神の使徒である。

 きわめて高い素質を持った彼は、おいしい餌をぶら下げてやれば偏執的にがんばるのである。

 餌として恋愛の女神の使徒をぶら下げた理由はそのほうが見ていて面白いからで、なによりも純情ぶっている恋愛の女神に対してできる嫌がらせとして効果的だと思ったからである。

 しかしそのことについてそんな深くは考えていなかったし、まして恋愛の女神が消滅しそうになるほど衰えるとも思っていなかった。


 ドジ女神が弄ったのは、少女達にあった恋愛パラメーターのリンク先である。

 人の感情などというものは本来数値化できないものだが、乙女ゲームにおいては恋愛パラメーターという変化する数値で愛情というものが管理されている。

 恋愛パラメーターの数字が0を中心として大きくなれば好き、マイナスに小さくなれば嫌いと言う状態になるのだ。


 だから【魅了】などというスキルは相手の自分に対するこの数値を強制的にプラス方向に動かすのだ。

 逆に【忌避】というスキルはマイナス方向に作用して、対象を自分から遠ざける。

 乙女ゲーム内においては主人公と呼ばれる恋愛ゲームの攻略者は【恋愛神の加護】によってあらかじめ運命付けられた攻略対象者の数値を恋愛値として見ることができる。

 つまり主人公は攻略対象の自分に対する数字を、ゲームとして自由に誘導して恋愛を楽しむことが出来るのだ。


 恋愛の女神はあせった。

 このままだと女神の使徒として青春を謳歌できるはずの少女たちが攻略対象者としてドジ女神の勇者の毒牙に曝される。

 恋愛相手という運命を変更するようなことができるのは、サイコロの神と……自分つまり腐の女神のみ。

 自分自身が当てにならなければ、サイコロ神かその使徒を頼るしかない。

 サイコロ神の神は彼の結界に閉じこもっていて連絡が取れなかったので、見守ることしか出来ないのかとあきらめかけたとき、新しい世界に向かってサイコロ神の加護を受けた魂が飛んでいくのがたまたま女神の目に入った。


 刻が止る。


 ここはどこなんだ?

 俺は転生するはずじゃなかったのか?

 気がつけば何も無い空間に浮かんでいた。

 どちらが上か下か、それさえも分からない。

 俺は必死に恐怖に耐える。

 自分自身の体さえ認識できないのだ。

 何も……無い。


 限りなく清らかで強い何かが俺の前に現われた。

 視覚も聴覚も何も無いのにそれが分かる。

 か・み・さ・ま・だった。


「ダイスよ、あなたに使命を与えます。私の使徒たちをドジ女神の勇者たちから守ってください。彼女たちをあなたが覚醒して12年間で守りきったとき、あなたには恋愛の女神として最高の報酬を約束しましょう」


 女神から依頼の詳細が流れ込んできた。

 まず俺は3人の勇者より先にアリス、シルフェット、ミーニャの3人の少女と出会い、恋愛関係を結ばねばなければならない。

 俺は10に引き上げられたステータスの魅力の効果と【恋愛神の加護】によって彼女達を一瞬で恋愛値+100、つまり恋愛ゲームで言う完全攻略の状態に出来る。

 その状態ならばドジ女神の勇者などからの干渉を撥ね退けられる。

 それを12年間、清く正しく美しくで保てばよいのだ。


 そして12年たって全ての使徒たちが神々から解放されるとき、恋愛パラメーターはなくなって俺たちの関係はすべて白紙に戻る。

 ただし問題なのはやはり少女の一人がテロリストらしき犯罪者の魂を持って転生してるということだ。


 刻がまた動き出す。


 俺は【恋愛神の加護】を得て、父オットーと母カカの第一子としてその世界に誕生した。


 おぎゃぁぁぁぁぁぁ!



 神はどんなことだろうと結んだ約束は守らねばならない。


 恋愛の女神は自分の神殿に戻り、残された力を振り絞ってダイスに与える報酬の準備をはじめた。



天に等しい大聖人はもちろん有名な斉天大聖。

だからソン君の君は太上老君などとつける君だったりして……わからないですよね。

あの猿神は眷属が多いのです。

ピンクの豚はもちろんあれのメス版が出てくるのですよ。

超やっかいなやつが……名前もチョウ・ヤッカィ。

意外とかわいいですよ……たぶん……いろいろすいません。

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