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日系異世界人のノスタルジー  作者: 樫葉 こはた
宰相府でアルバイト!?
4/6

父と兄…でもメインはもふもふ

 お久しぶりでございます…。


 部屋に入ると、そこにいたのはやはり父さんとチハヤ兄さんだった。それに、我が家の飼い犬である大型犬のルー。

 お利口で優秀なルーはこの春から軍で軍用犬として働いていて、軍の宿舎に住んでいるチハヤ兄さん同様、あまり家には帰ってこないのだ。チハヤ兄さんと相部屋?ということになっていて、2人(1人と1匹?) で暮らしているらしい。部屋の待遇が良いだけではなく、ちゃんとルーのお給料も出ているというのだからうちの国の軍は妙なところで律儀だと思う。

 ルーはもともと、子犬から成犬になりかけの頃に家の庭に迷い込んだところを、お気に入りのぬいぐるみをオキゾクサマのお嬢様に取りあげられた私に見つかり、我が家の一員になった。小さい頃はよく遊んでもらったし、一家の中では私に1番懐いていると思う。

 チハヤ兄さんは、私がルーに会いたがっていると思って連れてきてくれたのだろうか。もふもふしたい。

 すっかりルーのことで頭が一杯になってしまっていた。いけないいけない。ここまで案内してくれたバネットさんにもお礼を言ってないじゃないか。


「あの、バネットさん。案内してくださってありがとうございました。」


「サユキ。よく来たね。それから彼はバネットさんじゃなくてボネットさんだ。」

「うぇ、っ、と…あの、ごめんなさい。ありがとうございましたボネットさん。」

「なんの。覚え辛ければ、ジョルジオとお呼びくださいね、お嬢様。それでは私はここで失礼いたします。」

「ああ、ありがとうジオ。」

「いえ。」

「さて。おはよう、サユキ。」

「オハヨウ父さん。兄さんも。兄さんはどうしてここに?ルーを連れてきてくれたの?」

「ああ。ルーの”任務”の付き添いだ。」

「任務?」

「サユキ、とりあえず座ったらどうだい?チハヤも。」

「はーい。」

「はい。」

 ソファーに座ったけど…ルーは”お仕事中”という姿勢を崩さずにピシッとしえている。そんなルーも格好いいけど、私と目が合ったときにちょっと尻尾を振ってくれたのが最高に可愛かった。これから1週間は王城にいる訳だし、軍部棟か兄さんの宿舎に行けば会えるかな。軍部の宿舎は部外者立ち入り禁止だった気もするけど、そこは父さんのナナヒカリで入れてもらおう。


「サユキ、ルーと見つめ合ってるのは大変可愛らしい光景だけど、とりあえずお茶を一口飲んで落ち着いたらどうかな?ルーを足下に連れて行ってもいいから。」

 私がルーを見つめている間に、お茶の用意が済んでいたらしい。宰相府のお茶は普段家で出る緑茶とは違ってこの国で普段から飲用されているタイプの香りの強いお茶みたいだ。私はこれはこれで好きだけど。


「ルー。サユキの足下で”待機”。まだ“任務解除”じゃないぞ。」

兄さんの指示で、ルーがピシッとした顔のまま私の足下まで歩いてくる。こらえきれず尻尾が触れているのがものすごく可愛い。


「えーと、それで父さんルーの任務ってなんなの?」

「ああ、今日から1週間、サユキには宰相府に住み込んでもらうだろう?その間だけ、ルーを護衛にしようと思ってね、軍から借り受けてきたんだよ。もともと我が家の一員な訳だし、護衛が四六時中張り付いているのはサユキがいやがると思ってね。」

「宰相府内では滅多なことは起こらないはずだが。軍にはサユキの護衛に付けるような女性は少ないし、男の護衛を付けるのは兄さんが猛反対だった。男の護衛は私も反対した。その点、下手な軍人より強く感覚も鋭いルーなら安心だ。同室で一晩中護衛ができるだろう?」

 ルーと一緒!なんて素晴らしいんだろう。同室ということは、ルーも私の滞在する部屋に一緒に泊まるということか!

「ルー!ルー!一緒に寝ようね!しっかり守ってね!」

ルーは”守る”と聞いて、伏せの体勢からピシッとおすわりをして、得意そうな顔をさらにキリリとさせた。尻尾はちぎれんばかりのスピードで左右に振られている。格好付けた顔が台無しだけれど、非常に可愛い。もふもふは正義である。


「そういうわけなんだサユキ。本格的な始動は明日だから、今日は着替えて宰相府の中を見学するか、部屋に行ってのんびりしてもいいし…好きに過ごしていいよ。明日は一応陛下に謁見の予定だからね、今日は早く寝るように。」

 今、心なしか「一応」が「謁見の予定」じゃなくて「陛下」にかかっているように聞こえたけど…深くは考えないことにしよう。


「わかった。でも、バネ…ジョルジオさん?がここに来がてら宰相府の中を案内してくれたから、宰相府探検はいらないかな。午後は部屋で荷解きすることにする。でも、とりあえずお腹がすいたし、キモノ脱いで楽な服に着替えてご飯が食べたい。」

「サユキ、着替えて午後は軍部棟を見学に来ないか?ルーの使っているものがまだ軍の宿舎の部屋においてあるんだ。食堂は軍部棟よりの第3食堂に来ればいい。」


「分かった。えーと、着替えたら宰相府の前で待ち合わせでいいの?キモノの処理に手間がかかるから、ちょっと待たせてしまうと思うけど。」

 そもそも、部屋はどこにあるんだろう。また誰かに案内してもらうんだろうか。

「さっきルーと部屋の安全確認に行ってきたところだ。私が案内しよう。サユキが面倒でなければ外で待っていることにする。」

「それがいいんじゃないかな。サユキ、キモノの処理は、部屋にいるはずの人に頼めばやってくれるから。荷解き…は荷物を勝手には触らないだろうから終わってはいないと思うけれど、頼めばそれもやってくれるはずだよ。」

「じゃあ、兄さんと軍部棟探検をすることにする!キモノはお任せするとして、荷解きは自分でやろうかな…。」


「そうか。じゃあ、行くぞ。」

「はーい。父さん、またあとで。」

私が立ち上がった兄さんの後について歩き出すと、ルーが着いてきた。

ルーって本当にお利口さん!



もふもふは正義です。

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