誠二くんへ…
誠二くんへ。
この手紙を書いてるのは夜の十時。誠二くんはまだ夢の中かな。私の夢見てる?
誠二くん、元気にしてますか?
誠二くんと離れ離れになってもう二週間。
私の方はけっこう新しいこともあってあっという間だったけど、誠二くんはどうだったかな?
最初はね、何もやる気になれなかった。部屋に閉じこもって動く気にもなれないくらい。誠二くんとの写真を眺めて時間が過ぎていったんだ。
それからフルートの先生のジャンっていう人に出会ったんだ。
優しく教えてくれてるよ。私の腕もこっちではまだまだみたい。
そのジャンって先生がなんとなく誠二くんに似てるんだ。
優しくて、守ってくれそうな。
でも心配しないでね?
素敵なおじさんって感じだから恋愛対象じゃないよ。
なんとか頑張っていけるかなって、今のところは思ってる。
そうそう、近くに少し有名なレストランがあって、そこの料理がすごくおいしいんだ。
でも誠二くんには苦手なものがたくさんかな。フランス料理も勉強して誠二くんにふるまうからね。乞うご期待!ちゃんと誠二くん用にアレンジするから心配しないでね。
吹奏楽部はどう?
新入部員はたくさん入部してくれたかな?
最後のコンクールに一緒に出れないことが少し残念だな。
梓ちゃんと舞ちゃんは元気?しっかりとやってくれてる?それだけが心配…。
亜美ちゃんのことも!私が居ないことを良い事にいろいろされてない?誠二くんのことは…信じてるから大丈夫だろうけど。
紗耶香ちゃんも元気?紗耶香ちゃん良い子だからずっと仲良くしてあげてね?私の親友だから、ね。
先生や他の人たちにもよろしく伝えてね。
この前、カメラ買ったんだ。撮ってもらったのも自分で撮った写真も送るね。他の人に見せたらいけないのもあるからね。えへっ。
これからもいっぱい撮っていっぱい送るね!それはもう寂しさを感じさせないくらい。
でも、寂しいよね。
ねぇ誠二くん。
会いたいよ。
誠二くんに触れたい。誠二くんの笑顔が見たい。誠二くんの声が聞きたい。
誠二くんに会いたい。
「うっ……誠二くん……」
少ない言葉かもしれないけど、想いは綴ったつもりだった。この手紙に想いを乗せて…。
届くといいな、私の想い。