クリスマスプレゼント
「雪降るかなー?」
今日はクリスマス。
誠二くんがお泊まりに来るんだ。プレゼントも用意してる。
外は少し曇り空ですごく寒い。
…多分、今日が最後のお泊まりになるんだろうな。
夕食は近くのレストランを予約してるんだ。クリスマス限定のコース料理。少し背伸びした内容だけど特別な夜にしたかったから。
忘れられない一日にしたい。
今日の約束は夕方から。もうそろそろ誠二くんを乗せたバスが着く頃なんだ。
「う~、寒い!」
暑いのは我慢出来るけど寒いのは無理!十分に着込んで外に出たけど寒いものは寒いよね。
迎えに行くために寒空の中を歩いて行く。
所々にクリスマスのイルミネーションが飾られている。この雰囲気って好きだな。
「綺麗だな…。でも…はーーーーっ…。吐く息まで凍っちゃうよ。寒過ぎ」
あはは…一人で何してんのかな。
あっ、あのバスだよね。
ブロロロロロ……プシュー…。
「めぐ、寒かっただろ」
「平気だよ。着込んで来たから」
別に強がらなくてもいいのにね。
「嘘つけ。震えてるぞ、めぐ」
「あっ…」
そう言って私の手を両手で包んでくれた。
「その手袋まだ使ってくれてたんだね」
私が去年あげた手袋。
「ボロボロになるまで使うよ。そしたらまた作ってくれよ」
「毎年あげようかな。でもそしたらいっぱいになっちゃうね」
「それだけ二人で一緒に居たってことだよ」
誠二くん…。
「ふふっ、行こう」
それから誠二くんと並んで歩いていく。片方の手は誠二くんのコートのポケットで手を繋いで…。
まだレストランを予約した時間まで少しあるんだけど…。
「荷物家に置きに行く?」
「あっ、そうしようかな。実はこの荷物持ってレストランに入るのって気が引けてたんだよね」
そしたらちょうどいいくらいの時間かな。
荷物を置いてレストランに着く頃には辺りは暗くなっていた。
小さい時には記憶はあるけど、最近はオシャレなレストランに行った記憶はない。だから少しだけ緊張してる。
「こういうとこ慣れてないから緊張するな」
どうやら誠二くんも同じみたい。似た者同士なのかな。
レストランの中はほとんどがカップルで賑わっていた。みんな大人で私たちは少し浮いた感じがする。
「うぅ~…」
誠二くんは前に出された料理を見て唸ってる。好き嫌いが多い誠二くんは前菜とか食べれないもんね。
「もう~、コース料理なんてかっこつけるから」
「う~…めぐ~」
「私もそんなに食べれないよ?」
そんなことを言いつつも食べてあげる私。甘いかな?
「そんなんじゃ子供に好き嫌いなく食べなさいって言えないね」
「パパは食べなくてもいいんだよって言うから大丈夫」
なにそれー。
「ダメだよぉそんなの。それじゃ私がきちんと食べさせなきゃね」
「……めぐ…。それってもしかしてオレとめぐの子供…?」
―――!
「えっ!?あっ、いや、その…」
そ、そうだよね。何を普通に話してたんだろ。私ったら…。
「ずっと一緒にいるなら自然にそうなるよね。めぐと別れるつもりなんてもちろんないし、死ぬまでだって一緒に居たいと思ってるよ」
誠二くん…!
「そ、それじゃ、け、結婚も?」
そういう…ことだよね?
「そうだな。もっと、自分に自信がついたなら…プロポーズしてもいいかな?」
あぁ…!
「嬉しい…!」
私…幸せだ。
「…グスンッ…誠二くん、泣かせるの上手だよね」
「本当の気持ちだから…」
神様…ありがとう。こんな幸せをプレゼントしてくれて。
その後も誠二くんが食べれない物は私が食べて、逆に食べれる物はあげて食事を済ませたんだ。
「うぅー…やっぱり寒い!でも、星きれいだね」
家を出た時には曇ってたのにな。今は晴れてて寒空の中で星がいっそう光を際立たせてる。
「ホントだ。なんか空に吸い込まれそうだな」
「なーんか、ロマンチックだね」
そんな事を話しながら家へと歩いて行く。
「自信がついたらって、具体的には?」
「そうだなー。ちゃんと自立して、少しでも余裕を持てるようになったら…かな。分からないけど、自分に納得が出来たら」
「そっかー。ならまだまだずーっと先の話しだね」
「な、何だよー、その言い方。意外と出来る男なんだぞ?」
クスッ…知ってるよ。
「頑張ってね!誠二くん」
そんなこんなで家まで帰って来た。
「ちょっと待ってね。誠二くん」
私は先に家に入って誠二くんを出迎える。
「おかえり。誠二くん」
「めぐ…。へへっ、ただいま」
えへへ…。もし、ホントに一緒に暮らすことが出来たならこうやって毎日迎えてあげたい。
「お風呂の準備してくるね」
まだ家の中が暖まってないから早くお風呂で温まりたいな。
「お風呂お先にいいよ」
「じゃあ先に済ませて来ようかな」
そして誠二くんが先にお風呂に入って、続いて私が済ませた。誠二くんはお決まりのコーヒー牛乳。
「部屋暖めて来るね」
私は自分の部屋を暖めに行く。
あっ…。
クリスマスプレゼントどうしようかな。今持って行こうかな。
んー…寝る前に部屋で渡そう。
私は部屋のエアコンをつけて誠二くのいるリビングに戻った。
「あっ、めぐ」
「お待たせ。もう少し時間かかるかな」
「めぐ、これ、クリスマスプレゼントだよ」
「えっ!あっ、ありがとう!」
誠二くんが待ってましたと小さな箱を取り出した。去年は一日付き合ってもらったんだよね。
「開けていい?」
「もちろん」
なんだろう…。
あっ…。
「えへへっ、似合う?」
「あぁ、似合ってるよ」
誠二くんがくれたのはかわいいシンプルなシルバーリングだった。私はそれをはめて誠二くんに見せたんだ。
左手の薬指に…。だってサイズがぴったりなんだもん。
「気に入ってくれた?」
「誠二くんがくれた物だもん。もちろんだよ。すごく嬉しい」
「実はさ…」
「え……!?」
誠二くん…!
誠二くんが今まで見えなかった左手を差し出した。その薬指にも私のと同じリングがはめられていたんだ。
「へへっ、ペアリングなんだ。めぐが大好きなお揃いだよ」
これヤバいよ…私泣きそう…。
「嬉しい…」
「あと、指輪の裏を見てみて」
「裏?」
誠二くんに言われたようにリングを外して裏を見てみると、ローマ字で文字が彫ってあった。
「め……ぐ…み…?」
「そうだよ。こっちには”SEIJI”って彫ってあるよ。オレたちだけのペアリングだよ」
「すごい…素敵…」
本当に…嬉しい…。
「二人のエンゲージリングだよ」
誠二くん…。
「これが…これがあるなら例えどんなに離れても大丈夫だよね?」
「え?あぁ!もちろんさ!」
「少し待ってて?」
私もプレゼントあげよう!
部屋に置いてあったプレゼントを取りに行った。
もう部屋は暖まっていた。
プレゼントを手にして急いでリビングに戻る。
「はい!誠二くん!私からもクリスマスプレゼントだよ!」
「ありがとう!開けていいかな?」
「うん!気に入ってくれるといいけど」
私が渡した小さな箱の包みを丁寧に開けた。
「これ…チョーカーだね!ありがとう!」
私があげたのはシルバーのクロスが下げられているチョーカー。その横には小さなコンパクトもついてるんだ。
「開けてみて?」
そのコンパクトを開けてみるように言った。
「あっ…」
「寂しくなったらそれ見て私を思い出してね」
中には浸りのプリクラを貼っておいたんだ。誠二くんに私の事をいつでも思い出してもらえるように。
「いつでもそばに居れば寂しくなんてないさ」
誠二くん…ごめんね…。
「誠二くん、大好きだよ!」
軽くキスをして、誠二くんに抱き締められたまま私の部屋に入った。
「誠二くん、しよ?」
部屋に入るなり私は誠二くんに激しくキスをした。
「ん!?………はっ…めっ…めぐっ!」
いきなりで驚いたのか誠二くんがキスを止めた。
「めぐ、どうしたの?」
「イヤ…なの?」
「そんな、イヤなんてことは全然ないけど」
もう、こんな時間がいつとれるか分からない。もう来ないかもしれない。
「私のこと、何度でもいっぱい愛して…」
私のその言葉に誠二くんは黙って唇を重ねてきた。
誠二くん…。
…
……
………
…………
……………
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
「はぁっ…はぁっ…めぐ、さすがにもう無理…」
「あっ…はぁっ……ご、ごめんね。大丈夫?」
たくさん誠二くんと愛し合った。どれくらい時間が経ったのかもわからないし、何回したのかもわからない。
「もうすぐ両親が帰って来るの。今度は長く居るみたいで、こんな時間がいつとれるかわからなかったから」
「そうだったんだ…。今度はちゃんと挨拶しようかな」
「…うん…」
でも、誠二くんが私の両親に会った時は、別れの現実を知る時だったんだ。