進路
「そう…春に…」
「すみません。年明けには両親が話しに伺いますので、詳しい事はその時に」
「分かったわ。担任としても、吹奏楽部の顧問としても…残念だわ」
「…ご迷惑おかけします」
バタン…。
今日は進路相談の日。私は本田先生に学校を辞めることを話した。
年末にお父さんとお母さんが帰って来るから詳しいことはその時。私自身もいつまで居れるのかわからない。
自分で言うのもなんだけど、私は吹奏楽部でも主力だったから、すごく迷惑をかけてしまう。
誠二くんはどんな進路を考えているんだろう。自分がフランスに行くことばっかりでちっとも気にしてなかった。
たとえ私がフランスに行かなかったとしても、進学や就職で離れることだってあるんだよね。紗耶香ちゃんやみんなとも。
寂しいよね…。
「めぐ、帰ろうか」
部活が終わって誠二くんがいつものように送ってくれる。
「めぐ、進路ってどうするの?」
「えっ!?」
わ、私が聞かれちゃった。
「そんなに驚かなくても…」
「ご、ごめんね。私はまだ決まってないかな」
「そっか。めぐは頭良いからまだ焦らなくても大丈夫だよな」
「そ、そうだよ。私頭良いし」
「…………」
あっ…。
「ご、ごめんね」
誠二くんがじとーっとした目で見ていた。
「はぁー、どうするかなー」
まだ決まってないみたいだな。
「でも、めぐは楽団とかに入ったりするんじゃないの?」
「…うん。多分そうなるかな」
「じゃあ…めぐもめぐの親みたいにいろんなところを…?」
「…そう…かも…」
「そっか…。そうなると寂しいな…」
誠二くん…。
「私がいろんなところを飛び回るのはイヤ?」
「そりゃあ…寂しいしイヤだよ。でもめぐの大事な将来なんだし、オレがいろいろ言うもんじゃないだろうし」
「……私は…」
「ん?」
私は…!
「私は誠二くんに止めて欲しい!私がどっかに行っちゃうっていうなら、それを誠二くんに止めてもらいたい!」
「い、いきなりどうしたんだよ」
あっ…い、いけない…。
「ご、ごめんね。今日はここまででいいよ。またね」
私ったら…なんで…。
「あっ!おいっ!めぐ!」
私は逃げるように走り去った。
私のバカ…。
誠二くんは何も悪くないのに怒鳴っちゃったりして。誠二くんは何も知らないのに。
「はぁー…」
どうしよう…。
「めーぐ!」
「あっ、紗耶香ちゃん」
「さっき誠二に会ったよ」
あっ…。
「誠二くん、何か言ってた?」
「わけ分からないって感じだったよ。でも怒ってたりはしてなかったから安心して」
そっか…。よかった…。あとでメールしよう。
「でも、もうそろそろ話さないといけないんじゃない?」
「うん……。ねぇ、紗耶香ちゃんは進路どうするの?」
「私は遠くだけど大学に進学したいと思ってるよ」
遠く…。
「そんなに遠いの…?」
「あははっ!そんな顔しなくてもめぐ程じゃないって」
「……もうっ。紗耶香ちゃん!」
「ふふっ、離れても帰って来るのはここだし、どんなに離れてもめぐとは一生親友だよ!」
……そうだね。
「紗耶香ちゃん、大好きだよ」
「私も!向こうに行ってすぐ忘れちゃったりしたらめぐでも許さないからね!」
どんなに離れても…か。
誠二くんもそんなふうに思ってくれるかな。
どんなに離れても心は繋がってるって。
ねぇ、誠二くん。