椿くんの自宅 訪問
「来ちゃった…」
「どうも…」
今日はなぜか椿くんの家に遊びに来てるんだ。
「後ろの方たちは?」
椿くんと話してるのは部長の村田先輩。
「お邪魔するわよ」
「つじく~ん、こんちは~」
「ここが誠二くんの家ね」
「お邪魔します」
紗耶香ちゃんに誘われて来たんだけど、部長とパーカッションの理恵先輩とアリサ先輩もいたんだ。
田口理恵先輩。スラッとしててショートの髪できれいな感じの人。スタイルがいいな。
新居理沙先輩。ツインテールが目立ってて、たれ目でおっとりしてる。なぜか椿くんを”つじくん”って呼んでる。
何で私がいるんだろう?紗耶香ちゃんと一緒ならいいけど…。
「誠二!ちょっと!」
椿くんのお母さんかな。
何かこそこそ話してる。
いつの間にか紗耶香ちゃんは椿くんと仲良くなってたんだ。今日のことは部長が理恵先輩に話しを持ちかけてそれから紗耶香ちゃんに話しが行ったみたい。
「とりあえずどうぞ」
椿くんがみんなを迎え入れる。私もみんなについていったんだ。
椿くんの部屋は二階でそこに案内された。
「そんなに広くないですよ」
あんまり物は置いてないみたい。
とりあえず座ろう。
お菓子が用意されてた。ちょっと食べたいかも。
「ふーん、ここが誠二の部屋ね」
部長が部屋を見渡してる。
「みんな!」
「「「はい!!!」」」
え?え?
「物色タイムよ!」
…え?
物色タイム?
部長の合図で私以外のみんなが椿くんの部屋を一斉に探り出した。何か打ち合わせでも?っていうくらいに息ぴったり。
「こらこらこら!千秋先輩!ベッドの下には何もありません!理恵先輩!ゴミ箱漁らないで!アリサ先輩!ベッドに潜り込まない!紗耶香!引き出しを開けるな!相田さん!」
ビクッ!
わ、私!?
「――は、お菓子でも食べてて」
びっくりしたぁ。私何もしてないもん。
みんなすごいなぁ。
……お菓子食べよう。
「やめてくれーーー!!!」
このお菓子はやめられないよ。
すごくおいしい。
…………
「おかしいわね。男の子の部屋にあるはずのものがないわ」
「何にもないですよ!ゲームするんでしょ!準備しますからおとなしくしといて下さい!」
何もなかったんだ。それはそれで少し残念かも。
あれ?
紗耶香ちゃん?
「先輩!わたくし小学生の卒業文集発見いたしましたぁ!」
「なっ…!」
「でかしたわ!紗耶香ちゃん!アリサ!」
「りょ~かい~」
ガシッ!
「ちょっ、アリサ先輩離して!」
アリサ先輩が椿くんを捕まえてる。
私も手伝った方がいいのかな?
「あったわ!誠二くんのよ!」
「や、やめて!」
「おとなしくしなさい誠二。めぐー!」
あ…ちょっと見たい。
「あー!あー!あー!あー!」
「うるさいわよ!めぐぅー」
見ちゃお。
「椿くん、失礼します」
「うわわわ…!」
すごく慌ててる。そんなに見られたくないのかな。
「えーと、なになに?」
部長が読んでいくみたい。
「僕の将来の夢は子供をたくさん作ることです。そのためには夜にいっぱい体力がいるみたいなので…体を鍛えたいです?」
「「「………」」」
「な、何を教わってきたのかしら?」
「くっ…」
かわいい夢。
「かわいい夢ですね」
「んー!めぐっ!かわいいー!」
「ありがとう…相田さん」
え?え?
お礼されちゃった。かわいがられたいのかな?
「誠二ー!何を一人で楽しんでやがる!」
あっ、堀川勇介くん。椿くんとよく一緒にいる人。かっこいい方だと思うんだけど、紗耶香ちゃんから関わるなって言われてる。
「勇介、出来るなら代わってもらいたいよ」
「先輩!こいつの部屋なんかより夢と希望がいっぱいのオレの部屋はどうっすか?」
「男の子の夢と希望ね」
「そんな部屋に女の子呼ぼうなんて最低」
「気持ち悪い」
「へんた~い」
???
「夢と希望は多い方がいいですよ?」
だよね。
「勇介、前言撤回だ。お前とは代わりたくない」
「うわーーーーーん!!」
あっ、堀川くん行っちゃった。
泣いてたような…?
「先輩!今日はなんなんですか?」
あれ、川口さんも来ちゃった。そういえば幼馴染なんだよね。
「あら、美香ちゃん。もしかして休みの日はいつも誠二くんの家に?」
そうなのかな?
「いえ、勇介が泣いて出て行くのが見えたんで」
そうなんだ。
ヒソヒソ…。
「ね、美香ちゃんのも載ってるんじゃない?」
「そうですね…」
部長と理恵先輩がこそこそ話してる。
「美香はクラス違ったから載ってませんよ」
椿くんに聞こえてたみたい。
「えー!つまんないのー」
「つまんなくないです!ゲームするんでしょ!」
「はーい…」
理恵先輩すごく残念そう。川口さんにからみたがるよね。
その後、みんな椿くんとゲームしてた。私はよくわからなかったから見てただけだけど。アリサ先輩に椿くんが勝てないらしくてすごく悔しがってた。その様子が少し可笑しかったな。
「そろそろ帰りましょうか。明日からテストだし」
あっ、そういえば。
「テストォォォォ!?」
椿くん驚いてる。忘れてたの?私もだけど。
「なんでみんなそんな余裕なんですか!」
「だって、みんな優秀だから」
そうなの?
「えっ…紗耶香も?」
「どういう意味よ、悪い?ちなみにめぐは中学ではずっとトップよ」
言わなくていいのに…。
「そうなの?」
「一応そうでした」
「アリサ先輩は?」
「しつれ~、わたしは学年トップ~」
椿くんが驚愕の顔をしてる。
勉強してないのかな?
「さっ、帰りましょう。誠二はこの後大変みたいだし」
頑張ってね、椿くん。
――――
「めぐー!楽しかったね!」
「うん」
紗耶香ちゃんと一緒に帰ってる。少し楽しかったかな。
「めぐ、男の子の部屋初めてだったんじゃないの?」
「うん、みんなといるのは…楽しいね」
「…めぐ、みんないい人たちだからさ、もっといろいろ話してみれば?」
「うん…」
確かに仲良く出来そうな気がするな…。
「でも、誠二には気をつけてね」
「え?どうして椿くん?」
「あのー…うん。めぐはめぐでいいよ。はっきりわからないし…。美香ちゃんが…」
なんだろう?
「なーに?」
「いいのいいの!それよりテスト終わったらコンクールの準備に入るね!頑張らなくちゃ!」
コンクールか…。
どうなるんだろう。
課題曲と自由曲の二曲を演奏するんだ。どっちの楽譜ももらってる。
夏のコンクールで上位四校に入賞したらもう一つ大きいコンクールに行ける。そこでいい成績残せたら全国。
みんな気合い入ってる。
正直出たいけど、出たらまた…。だから出たくない。
出たいけど出たくない。
「めぐ、大丈夫だよ。私が守ってあげるから」
あっ…。
顔に出ちゃってたかな。
「紗耶香ちゃん、ありがとう」
でもやっぱり不安だな…。
その不安は的中したんだ。
でも。
私はこれで救われた。