お泊まり そして…
「うん、わかった。明後日だね。……うん。じゃあね」
ふぅ…ギリギリセーフだったぁ。
お父さんから電話があって明後日に帰って来るみたい。誠二くんがお泊まりに来るのは今日だから鉢合わせにはならないな…。
…ふふふ…楽しみだなぁ。
そろそろバスが着くくらいだから迎えに行かないと。ついでに晩御飯の買い物もしないと。
好きな人にご飯作ってあげるのってワクワクするなぁ。
それからバス停まで誠二くんを迎えに行ったんだ。
「ふぅー、暑いなぁ」
今はお昼過ぎで夏休みももう終盤を迎えてるところだから日射しも強くて暑い。バス停まではそんなに距離はないんだけど…。
バス停に着いて少し待つとバスがやってきた。
「あっ、あのバスかな」
一台のバスが走って来る。
プシュー…。
…誠二くんはいないな…。
柳ヶ浦町からのバスじゃないみたい。
それからしばらく待つとまた一台のバスが走って来る。
あれかな?
プシュー…。
あっ…。
「めぐ、待っててくれたんだ」
「誠二くん!」
今度は誠二くんがバスから降りてきた!
バスの中の冷気が少しひやっとした。
「暑かっただろ?」
「ううん。ねぇ、今晩の夕食何食べたい?」
「何ってー、めぐが作ってくれるの?」
「そうだよ!何でも言ってみて!」
大体の料理は大丈夫!誠二くん好き嫌い多いからそんなに変なのは言わないだろうし。
「うーん…」
いきなり夕食のこと言われても困るかな?
「じゃあ、家に行く途中だし一緒にスーパーに寄ってそこで考えようか。そしたら食べたいの思いつくかもしれないよ?」
「そうだな。とりあえず行こうか」
それからいつも行ってるスーパーに向かった。
そして誠二くんと一緒に食材を見て回る。
こうしてると…」
「なんだかこうやってスーパーで食材なんか見てたら、一緒に暮らしてるみたいだね」
うふふ…。
「そうだなぁ。一緒に暮らしてたら毎日こんな感じなのかな?」
そしたら私は幸せだなぁ。
しばらく一緒に見て回って誠二くんのリクエストで唐揚げを作ることに。
それだけじゃそっけないから肉じゃがも…。ご飯に合うおかずが食べたいらしくて。
そして食材を買って私の家に向かう。
「めぐの家って近いの?」
「ここからはすぐだよ」
暑いから早く着きたいのかな。でもエアコンはつけっぱなしで出て来たから準備ばっちり!
しばらく歩くと私の家が見えてきた。
「あっ、誠二くん。あれが私の家だよ」
私は自分の家を指差した。
「え?」
え?ってなに?驚いてる?
「あ、あれがめぐの家?」
「そうだけど?」
変な事言ったかな?
「お、大きいね」
「そうかな?そんなに言う程大きくはないと思うけど」
誠二くんの家のほんの三倍くらい!
家の前に着くと誠二くんは呆けてた。
「ほえ~…」
「暑いし、早く入ろうよ?」
「う、うん」
ガチャッ。
うーん、涼しいー!
「お邪魔します」
「えへっ、どうぞ。誠二くん」
とりあえず涼しいリビングに誠二くんを案内する。
誠二くんはじろじろ家の中を見回してた。そんなに珍しいものもないと思うけど。
食材を冷蔵庫に入れて…。
「誠二くん。私、部屋のエアコン入れてくるから待っててね」
「うん」
そして私は二階の部屋へ。
こ、この部屋で誠二くんと寝るんだ…。
ほわわ~…。
い、いけない。エアコン入れて、少し片付けて…。
誠二くんは何してるかな?呼びに行こう。
そしてまだリビングへ移動。
ん?
誠二くん家族写真見てる。
「お母さん、美人でしょ?」
「うわっ、めぐ、驚かさないでくれよ。でも、優しそうだな」
「普段はね。音楽のことになれば厳しいよ」
「そう言ってたね」
「誠二くん、部屋に来る?」
それから誠二くんを連れて自分の部屋に。
「おぉ~…」
おぉ~って何?
「めぐは水色好きなんだな」
私の部屋は水色が多い。水着も浴衣も水色だったし。
「透き通るようで神秘的だから好きなんだ」
特に物は置いてないんだ。机とテーブルとソファーくらい。あとはテレビとコンポがあるけど。
「今日はここで寝るんだよ。そのベッドで一緒にね」
「ベッドで一緒に…」
ん、やらしい顔。
「今、エッチなこと考えてたでしょ」
「そ、そんなことないよ!何も考えてないって」
ふふ…からかっちゃおうかな。
「えーっ、考えてないのぉ?」
「むむっ…」
ふふ…。少しムッとしたかな?
え?
「きゃっ!」
誠二くんに押し倒されちゃった。
「めぐ!」
「んっ……はっ…」
んっ…激しいキス…。
「…はっ…めぐ…オレもう…」
まだダメ!
ドンッ!
「残念!また後でね。ご飯の準備してくるから待っててね」
ふふ…もったいつけちゃおう。
「うう~…」
かわいい!おあずけくらった子供みたい!後でね!
誠二くんを部屋に残してご飯の準備にキッチンに行った。
まずは下ごしらえから。
お米をといで、唐揚げのお肉をさばいて味を染み込ませて…。肉じゃがの野菜を刻んで、お味噌汁のダシをとって…。
誠二くん…。
部屋で変なことしてないかな?
見られてまずいものはないけど…。
様子見に行ってみよう。
そろーっと…。変な事してたらお仕置きしてあげるんだから!
音を忍ばせて部屋に…。
そろ~り…。
ん?何か見てる…。
…中学のアルバムか。私が塞ぎ込んでた時の写真…。
そんな私を変えてくれたのは…。
「そんな私を変えてくれたのは誠二くんなんだよ」
「め、めぐ!びっくりしたぁ。ごめん、勝手に見ちゃって」
「いいよ。その写真、隣に写ってるの紗耶香ちゃんだよ」
「え?あっ、ホントだ。こんなに無邪気に笑ってるのに、今はあんなに邪気ばかり…。めぐはもうご飯の準備出来たの?」
「まだだよ。もう少しかかるかな。戻るけど、あんまりいろいろ見ちゃやだよ?いろいろしたらお仕置きだからね」
「み、見ないよ!大丈夫!」
あやしい…。
「じゃあ戻るから。少し待っててね」
そうやって部屋を一旦出るけど…。
そろ~り…。
…………。
「誠二くん!」
「は、はい!」
やっぱり何か探そうとしてる!
「やっぱり一緒に下りてきておとなしくしてなさい!」
もう!油断出来ないんだから!
誠二くんを連れてリビングに戻る。
「テレビでも見てて」
目の届くところに居てもらわないと。
さーて、夕飯の準備しよっと。
・・・・・・
「~~♪~♪~♪~」
おいしい料理作ってあげるからね~♪
誠二くんのためにお料理。楽しいな。
同棲って毎日こんな感じなのかな?だとしたら何でも頑張れる気がするな。
・・・・・・
あとは唐揚げを揚げて、肉じゃがを煮込めば…。
ガバッ!
「きゃっ!」
な、なに!?
「へっへー」
誠二くんが後からいきなり抱きついてきた!
もう!いたずらっ子め!
「せ~い~じ~く~ん~!」
「ぷぷっ、怒っても怖くないよ」
ムカッ!
「ご飯作ってあげないよ?」
「うっ…ご、ごめん」
「素直に謝ったんなら許してあげる」
「もう出来そう?」
「もう少しかな。出来たらすぐ食べる?」
まだ少し時間早いけど。
「いただこうかな」
「じゃあもう少し待っててね」
さぁ、仕上げなきゃ。
誠二くんは料理が出来上がるまでテーブルについて待ってた。
・・・・・・
「お待たせー!」
白ご飯に唐揚げに肉じゃがにお味噌汁!
「す、すごいね…。これ全部作ったんだよね?」
「いつも一人でご飯作ってたんだからこれくらいは出来るよ!」
誠二くんの口に合えばいいんだけど…。
「じゃあ、さっそくいただきます」
「どうぞ!」
もぐもぐ…。
ど、どうかな?
「…うまい!」
えっ!
「うまいよ、めぐ。ホントに!」
「誠二くんのお口に合ったみたいでよかったぁ」
ほっとしたなぁ。
「めぐはいいお嫁さんになりそうだよね」
そ、それは…。
「せ、誠二くんは私みたいなお嫁さんなら、し、幸せ?」
「そりゃそうだよー!」
ゴクリ…。
「わ、私は誠二くんとなら…」
け、結婚してもいい!
「え?なんだって?」
「な、何でもないよ!そうだ!お風呂の準備してくるね!」
わーーーーーー!きゃーーーーー!
な、何言ってるんだろ!?私!
…で、でも私みたいなお嫁さんなら幸せって…と、遠まわしなプロポーズ?えへへ~、だったらいいなぁ…。
「フーン♪フンフーン♪」
ジャアーーー…。
鼻歌混じりでお風呂の準備ぃ~♪
い、一緒にお風呂入ろうかな。…さすがに恥ずかしいかな。
とりあえずご飯食べよう。
戻ると誠二くんはほとんど食べ終わってて、私も誠二くんとお話ししながら夕食を終えたんだ。
「片付けはオレがやるから、今度はめぐがゆっくりしててよ」
「じゃあお言葉に甘えようかな。私はお風呂の様子見に行って来るね」
やっぱり誠二くんは優しいな!
今日の恵はすごくご機嫌!
お風呂の様子を見て戻って来て、誠二くんの片付け風景を眺めてた。もう外は少し薄暗くなってきてた。
「ふぅー…」
普段あんまり片付けとかしないよね。お疲れ様。
「誠二くんありがとう。お風呂はどうする?準備は出来てるよ」
「じゃあ借りようかな」
「うん!お先にどうぞ」
それから誠二くんをお風呂に案内してあげたんだ。
私は…。
着替えて…。
ふふふ…。
「誠二くーん!湯加減はどうー?」
「うーん!いい湯加減だよー!」
うふふふ…。
ガタンッ。
「めっ!めめめっ、めぐ!?」
「背中流してあげるね」
バスタオルを身体に巻いて浴室に突入ー!誠二くんはすごく驚いてる!
「いやっ、あの…」
「ふふ…このタオルの中が気になるの?」
「気になら…ないわけじゃないけど…」
「じゃあ…」
バサッ!
勢いよくタオルを剥ぎ取った。
「うわっ!」
………。
「えへっ、残念でした」
タオルの下は水着でした!
「去年の夏に着てたのと同じだけど。今年は海に行けなかったからね」
「驚かすなよー。でも、嬉しいような残念なような…」
「ふふっ、背中流すよ」
誠二くんが前を隠して椅子に座る。
ゴシゴシ…。
ピトッ。
「うわっ、め、めぐ?」
誠二くんを背中から抱きしめた。
「誠二くんの背中、おっきいね」
「…………」
「ずっと私のこと、この大きい背中で守っててね」
誠二くん…。
―――!
「せ、誠二くん…!」
「い、いや、これは条件反射だよ!し、仕方ない!」
「真面目な話しをしてたのに…」
誠二くんの前を隠してたタオルが…。
う~…。
「もうっ!仕方ないなぁ」
「うわっ、ちょっ、めぐっ!?」
…
……
………
…………
……………
んっ…。
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
「めぐのせいだからな」
「そんなつもりなかったもん。エッチ…」
今は湯船に一緒につかってる。
とりあえずここでしちゃったんだ…。
「のぼせちゃうよ。出ようか」
「うん」
・・・・・・
「ふぅ~」
誠二くんは先に着替えてリビングに戻った。
髪を乾かして…寝間着に着替えて…。
リビングに戻ると誠二くんはソファーでくつろいでた。
いいなぁ、なんかこういうの。
「誠二くん、何か飲む?」
「うーん、コーヒー牛乳」
さすが誠二くん。ベタなところをついてくるな。買っておいてよかったよ。
「はい。コーヒー牛乳」
「あ、あるんだ」
ふふん、めぐを甘く見てもらったら困るな。
「いただきまーす」
誠二くんは左手を腰に当てて一気に飲み干した。
「ベタなことやってるね」
その一言で長々とコーヒー牛乳の魅力を語られるハメに。
「わ、わかったよ。誠二くん」
その後は一緒にテレビを見ていた。クイズ番組で一緒に考えたり、ドラマを見てそれについて話したり、バラエティ番組で盛り上がったり…。
そんな何気ない日常的なことがすごく幸せだったんだ。
「ふわぁ~ぁ…」
「ふふ、誠二くん、眠そうだね」
だいぶ夜も更けてきたしね。
「めぐは眠くないの?」
「こういうこと滅多にないから寝るのが勿体なくて。誠二くんとこうやってお話ししたり、テレビを見たり、一緒にご飯食べてお風呂に入って…何気ないことだけどすごく幸せなの」
「オレも同じこと考えてた」
…そっか。嬉しいな。
「なぁ、めぐ」
「なーに?」
「まだ先になるけどさ、ちゃんと仕事とかするようになったら…その…一緒に暮らそう」
―――!!
そ、そんな…。
「せ、誠二くん…!………うっ……ひっ…グスンッ……」
「な、何か変な事言ったかな?」
「グスンッ…ううん。違うの。すごく嬉しいの」
「まだ先のことだよ?」
「それでも…。私、こんなに幸せでいいのかな…。誠二くん、大好きだよ」
「…オレも大好きだよ」
「えへへ…寝ようか」
いつかこんな毎日がやってくるんだ。今日はもう誠二くんと寝よう。
それから部屋のベッドに二人で潜り込んだ。
「今日はこうして寝ていい?」
誠二くんに寄り添って寝たいの。
「うん、いいよ」
えへへっ。誠二くんがこんなに近くに居て、すごく安心出来る。落ち着くな。
もう、わた…し…。
「…すぅ…すぅ…」
「…おやすみ、めぐ」
翌朝。
「んっ…ふぁ~…」
あっ…私、昨日すぐ寝ちゃったんだ。
隣では誠二くんがまだ寝てる。かわいい寝顔だな…。
チュッ。
おはようのチュウだよ。
誠二くんが起きる前に朝ご飯の準備しようかな。
そっとベッドから出てキッチンまで。
昨日の残りのご飯があるけど…私は朝からパン派だからパンで。
コンソメスープも作ってっと…。
「めぐ、おはよう」
あっ!
「おはよう誠二くん。もっと寝ててよかったんだよ」
「起きたらめぐがいなかったからさ…」
「探しに来たんだ!かわいい!顔洗っておいでよ。朝ご飯食べるよね?もう出来るから」
それから誠二くんは顔を洗いに洗面所に向かった。
私も朝ごはんを仕上げよう。
・・・・・・
「あっ、誠二くん。朝ごはん出来てるよ」
戻って来た!
「ありがとう。いつも一人でこんな生活してるの?」
「もう慣れっこだよ」
「でもやっぱり大変だろ。一緒に暮したら何でも一緒にしようね」
誠二くん…。
「うん!さっ、食べて?」
「いただきます」
食べ終わったらまた誠二くんが片付けをしてくれた。
それから誠二くんは先に帰る準備をしてリビングでお話ししてたんだ。
…予想外だったんだ。
…ガチャッ。
―――!
不意に玄関が開く音が聞こえた。
「えっ!?う、うそ!?」
「なに?めぐ、どうしたの?」
何で!?どうして!?
「どど、どうしよう」
「ど、どうしたんだよ?そんなに慌てて」
間違いない。鍵開けて入ってきた…。
「お、お父さんとお母さんだ…」
「えっ!?めぐのお父様とお母様!?」
なんで~?
「恵ー!いるのかー?」
やっぱり…。誠二くんがいるのに…どうしよう。
そんなことを考える暇もなくお父さんがリビングに現れた。
「恵ー!…ん?君は?」
あー…。
「はっ、初めまして!め、恵さんとお付き合いさせていただいてます!つ、椿誠二です!」
………。
「な、何!?お付き合い!?」
お父さんの驚きよう…。こんなに驚いてるの初めて見る。
あぅー…。
「あらあら、何の騒ぎかしら?あら、あなたは?」
お母さん…。
「あ、あの!椿誠二です!恵さんとお付き合いさせていただいてます!」
「あら、あなたが…。ふふっ、かわいいわね。めぐちゃんが羨ましいわ」
こ、ここまでは何とか…。
「恵、付き合ってるよいうのは本当か?」
「う、うん…」
お願い!いろいろ聞かないで~!
「ゴホンッ…。椿くん…だったかな。恵とはいつから?」
「は、半年くらいになります」
「は、半年…。それならもう…」
あーあーあー…。
「あなた!余計な詮索は無用ですよ!」
さすがお母さん!
「椿くん。めぐちゃんをいつもありがとうね。でもめぐちゃんは……。いいえ、何でもないわ」
え?なに?
「めぐ、何かあるの?」
「わ、わからないけど…」
なんだろう?なにか言いかけてた…。
「椿くん。今日はちょっと恵に大事な話しがあるんだがお引き取り願えないないかな?」
「えっ?は、はぁ…」
大事な話し?誠二くんを返す程の話しなの?
「めぐ。そういうことみたいだから…」
「あっ、う、うん」
それから誠二くんを玄関まで送りに。
「ごめんね。明日帰って来る予定だったんだけど…」
「仕方ないよ。仕方ないよ。めぐと過ごした一日はすごく幸せだったよ。またね」
「うん。またね…」
そして誠二くんは帰って行った。
はぁ~…。
夕方までは一緒に居る予定だったのに…。
「帰って来ていきなり何?お父さん」
くだらないことなら怒ってやる!
「恵。来年の春に私たちとフランスに来るんだ」
……え?
「なに…それ?どういう…」
「フランスに一緒に行くんだ」
「何で?どうして?イヤ!イヤだよ!」
この言い方…当然旅行なんかじゃない!
「向こうで知り合った人に恵の事を話したら是非とも面倒を見たいとおっしゃってな」
それって…。
「日本を離れて勉強しろってこと?」
「そうだ」
「…どれくらい?学校は?」
「期間はわからないわ。でも、一年や二年で済まないのはわかるわよね?学校は…めぐちゃんには悪いけど辞めてもらうことになるわ」
そんなの…。
「絶対イヤだよ!」
「それはさっきの椿くんがいるからか?」
「そ、それは…」
そう。
誠二くんと離れるなんて絶対にイヤ!!
「お母さんでいいじゃない!」
お母さんだってフルート奏者なんだから!
「私たちは各地を飛び回ってるのよ?あなたにはしっかり勉強して一流のフルート奏者になって欲しいの」
「よく考えるんだな。私たちは恵が何と言おうと連れて行くつもりだ」
「残り半年と少しよ。めぐちゃん、今を十分に楽しみなさい」
「話しはそれだけだ。私たちはまた明後日に発つ」
そんな…ひどいよ…。
「…うっ……ひっく……」
「めぐちゃん…」
つい昨日なんだよ…。
昨日、誠二くんが一緒に暮らそうって…。
なのに…。
「大っ嫌い!!」
ドタドタ!
…バタン!
私は自分の部屋に閉じこもった。
「……ひっ…ひっく……誠二くん…!」
(―めぐ、一緒に暮らそう)
…………
(―私、こんなに幸せでいいのかな。―すごく幸せ)
(―一緒に暮したら何でも一緒にしようね)
…………
「…っ…あぁっ!……うっうっ……あぅっ……うわぁーーーーーーーん!!」
誠二くんとの未来が見えたばかりなのに!
こんなのひどいよ…!
どんな顔して誠二くんに会えばいいの?なんて言えばいいの?
教えて!
誰か教えてっ!
…紗耶香ちゃん!
…………
紗耶香ちゃんとも…美香ちゃんとも…梓ちゃんや舞ちゃんとも…。みんなと離れちゃう…。
何より誠二くんと…。
イヤっ!考えたくない!
…………
考えたくないよ…。