誕生日
「お誕生日おめでとう。誠二くん。これ、手作りだから食べて?」
今日は誠二くんの誕生日。手作りケーキを作って来たんだ。誠二くんは好き嫌いが多いからチーズケーキ!
「めぐ、ありがとうな」
「うん!」
放課後、部活が終わった後の部室でお祝いしてる。
「ロウソクに火つけるね」
今年で十七歳だから十七本!
「ハッピバースデートゥーユー~♪ハッピバースデートゥーユー~♪ハッピバースデーディア誠二く~ん♪ハッピバースデートゥーユー~♪」
「ふーーーっ!」
「おめでとー!!」
「ははっ、何か照れるな…。でも、ホントありがとう」
喜んでくれたみたい!
「はい、あーん」
食べさせてあげる。
「い、いいよ。恥ずかしいからさ」
ふふっ、顔真っ赤にさせてかわいい!
「いいからいいから」
「うん…あ、あーん」
パクッ。
「どう?おいしい?結構自信あるんだけどなぁ」
「うん、うまい!おいしいよ!」
よかったぁ!
「じゃあ、はい、あーん」
「あー、んっ!?」
あっ、口の周りについちゃった。
「ごめんね、誠二くん」
口元についたケーキを拭って私が食べる。
「…めぐ」
「なーに…んっ…」
不意打ちなキス。
「もうっ、誠二くん…」
チュッ。
「お返しだよ」
「なら、お返しのお返しだ」
ちゅう~~…。
「あっ…はっ…あっ…誠二くん…ダメだよ、こんなとこで…」
「誰もいないからさ…」
「少し…だけだからね?」
…あんっ…誠二くん…。
ガララッ!
「あっ!誠二せんぱーい!探しましたよ!お誕生日おめでとうござい…ま…す…」
あ、亜美ちゃん!!
み、見られた!
「あ、亜美!何してるんだ!こんな時間まで!」
「そ、そそ、それはこっちのセリフです!お、お二人とも!こ、こここ、ここはが、学校ですよ!?」
あわわわ…!
「あ、亜美ちゃん!こ、これはね…」
…い、言いわけが見つからない…。
「めぐ!虫は取れた!?」
く、苦しい言い訳だよ、誠二くん。
「う、うん!ありがとう!誠二くん!」
でも、これに乗っかるしか…。
「あ、明らかに、キキ、キスしてましたよね!?」
あうー…。
「そ、それに、めぐ先輩の制服、み、みみ、乱れ過ぎですよね!?」
「む、虫に驚いちゃったんだな、ははは…」
…ダメ?
「騙されません!」
…だよね。
「亜美。今見た事を全て忘れるんだ」
「…イヤです。無理です。言いふらします」
そそ、それはマズイよ!
「亜美ちゃん。言いふらすのはちょっと…」
「誠二先輩とめぐ先輩が部室で、エ、エッチな事をしていたと理恵先輩たちに言います」
そ、それは一番ダメな人だ…!
「言わないでもいいですけど…」
「ホ、ホント!?」
「条件があります」
…こ、この子は!
「い、一応聞いてみようかな」
「誠二先輩」
や、やっぱり誠二くん絡み。
「なんだ?出来る範囲なら聞いてやる」
一日…、ううん、一時間なら誠二くんを貸してあげる。
「亜美にキスして下さい」
「そ、それはダメーー!!」
そんなの許さない!
「亜美。それはさすがに無理だろ」
「そうだよ!ダメだよ!」
「じゃあ言うだけです」
うっ…。
「な、何か他のことにしようよ!そうだ!ケーキあげる!」
「ケーキ…?」
は、反応した?
「そ、そうだよぉ。私が作ったチーズケーキだよぉ」
「めぐ先輩が作ったんならいりません!」
し、しまった!余計なことを!
「どうするんですか?誠二先輩!」
「仕方ない…」
えっ!?えっ!?しちゃうの?ダメッ!ダメだよ!
「言えばいいじゃないか」
え?
「オレはめぐを裏切らない。何があってもだ。みんなから何て罵られようともそれだけは絶対だ。ごめんな、めぐ」
誠二くん…。
「いいの!誠二くんと一緒なら何でも耐えられるよ!」
「めぐ…」
「誠二くん…」
ちゅう~…。
「なななっ!?亜美の目の前で!もも、もう亜美怒りましたからね!明日を楽しみにしてやがれです!」
亜美ちゃんは逃げるように部室から出て行った。
「ちょっとかわいそうかな?」
「弱みでオレを釣ろうとしたんだから、あれくらいは」
「でも、みんなに知られたら…」
「大丈夫。オレが守るからさ」
うん、誠二くんがいるなら大丈夫。
・・・・・・
翌日。
「めぐ、亜美ちゃんから聞いたんだけど…」
「あっ…う、うん…」
亜美ちゃん、ホントに言っちゃったんだ。
「ホントみたいだね。でもみんな、ふ~ん、みたいな感じでしか聞いてなかったよ」
「え?紗耶香ちゃん、そうなの?」
もっと騒がれると思ってたけど。
「理恵先輩もあの二人ならそれくらいするでしょ。だって」
あ…はは…それは素直に受け入れていいのかな…。
「でも気をつけなきゃダメだよ。さすがに学校では…」
紗耶香ちゃんはそこまで言って顔を赤らめちゃった。
「う、うん。気をつけるよ」
せめてキスくらいにしよう!
…そういう問題じゃないかな。
約一ヶ月後。
「誕生日おめでとう、めぐ。これ…」
「わぁ!ありがとう!」
今日は私の誕生日!
誠二くんからプレゼントもらったんだ。
「開けていい?」
何だろう?
あっ…。
「わぁ、かわいいネックレス!ありがとう!誠二くん!」
「めぐに似合うかなって思ってさ」
誠二くんがくれたネックレスはシルバーでハートが形作られていたんだ。
「つけてみるね」
さっそくつけてみることに。
「えへへ…似合う?」
今、制服は夏服でちょうどハートが胸元に隠れるくらい。誠二くんに見えるように少しだけ制服をめくって見せる。
「似合ってるよ。やっぱりそれにしてよかった」
「えへへ。ありがとう」
チュッ。
お礼のキスだよ。
「めぐ…。その…何ていうか…胸元が素敵だよ。ネックレスのせいかわからないけど…」
えっ…せ、誠二くん?
誠二くんが迫ってくる。ここはまた部室なんだけど…。
「あっ…んっ…だ、ダメだよ…。また亜美ちゃんが来るかもしれないし…」
「亜美はめぐにプレゼントなんか渡さないだろうし、大丈夫だよ。めぐがかわいすぎるのがいけないんだからな」
んっ…。
深い…深ーいキス…。
わ、私も、もう…。
「めぐせんぱーい!どこですかー!」
あ、あの声!梓ちゃんだ!
「んっ…せ、誠二くん。梓ちゃんが…」
「あぁ、見つかったらマズイね」
ふぅ、止めてくれた。少し残念だけど…。
「いないなー。帰ったのかな?校門で待ってたんだけどなー」
梓ちゃんが探してる。出て行こうかな。
「あ、梓ちゃ……んっ…!?」
誠二くんに口を塞がれた。
(せ、誠二くん!?)
(しぃ~~…)
人差し指を口に当てて黙るように言う。そしてちょうど通路からは死角の位置にしゃがみこんだ。
な、何をする気なんだろ。
「……あっ………!」
私の胸元に誠二くんの手が…。
(ダ、ダメッ…誠二くん…)
(なんか…こういうシチュエーションって興奮するよね)
(ダメだよ…!んっ…)
口を誠二くんの唇で塞がれた。
ん…いいかも…。
―――!
「んー!んー!んー!」
バンバンバン!
誠二くんの背中を叩いた。
「いてて…どうしたんだよ、めぐ」
「ま、舞ちゃん…」
「え?…うわ!」
気がつくと舞ちゃんがドアの隙間からじぃ~っと見てた。
「えっと…いつから見てたのかな?」
出来るだけの笑顔で。
「キ、キスするところからです」
ならギリギリセーフ!…だよね。
「の、覗き見とは趣味が悪いなぁ。舞ちゃん」
「す、すいません。でも…お、おかまいなく続けて下さい」
へ?
「み、見てみたいです。ど、どんなこと、す、するのか」
あのー…。
「見せられるわけないよ!」
「ひっ…!す、すいません!すいません!」
あー…怒鳴っちゃったな。
「めぐ、怯えてるじゃないか。舞ちゃん、この先は自分が好きな人に教えてもらうんだよ」
「す、好きな人ですか」
「そうだよ。オレとめぐみたいに愛し合ってからさ」
う、うまいこと言ってる。
「じ、じゃあ、相田先輩。お、教えて下さい」
「ん?舞ちゃん。オレが言ってたことわからなかったかな?」
「だ、だって、私、相田先輩が好きなんです」
あうー…。
「そ、そういう好きじゃなくてさ、こう…一緒に居たいなぁ、とか、抱き締めたいなぁ、とかさ」
「わ、私、相田先輩と…キッ、キスしたいです。こ、これって、ち、違うんですか?」
「…………」
誠二くんが固まった。私の出番だな。
「ま、舞ちゃん。ほら、私と舞ちゃんじゃ子供作れないでしょ?だからダメなんだよ」
「め、めぐ?」
あれ?変なこと言ったかな?そんなに驚いて…。
「こ、子供ですか…」
「そうだよ。だって子供を作るにはさ、男と女が…」
あ、あれ?私、何言ってるんだろ?
「男と女が?」
あ、あれ?あれれ?
「あ、あのねっ…その…あ、愛し合ってないといけないから!私はもう誠二くんと愛し合ってるから、舞ちゃんも他の男の人にさ…」
「そ、そうなんですか…」
な、納得してくれたの?
「こ、子供が作れないと、あ、愛し合ったら、い、いけないんですね」
「な、中にはそうじゃない人もいるけど、普通はそうだよ」
何か話しがどんどん違う方向に…。
「な、なら、誠二先輩。お、教えてください」
「なっ!ど、どうしてそうなるの!?」
「あ、相田先輩が愛してるなら、わ、私も愛してます」
えー…それは違うよー…。
「ダ、ダメですか?」
「舞ちゃん。よく聞いてね。誠二くんは私の恋人なの。他の人の恋人にはそういうこと言ったらダメなんだよ」
「そ、そうですか…」
そんな残念そうな顔されても…。
「まぁ、あれだ!舞ちゃんも男の好きな人を見つけるんだよ!」
ナイス!誠二くん!
「…せ、誠二先輩が好きです。お、男なら…」
ふぇ?
「それは私が誠二くんも好きだからでしょ?」
「そ、それもありますけど、せ、誠二先輩の、か、顔見てたら、ど、ドキドキするんです。お、同じ人、す、好きになったら、い、いけないんですか?」
そ、それ告白じゃないの!?
「あ、あのね。いけないってことはないんだけど、オレはめぐが好きだから舞ちゃんとは愛し合えないな」
「そ、そうですか。な、ならどうすればいいんですか?」
どうすればって…。む、難しいな。誠二くんは諦めてって言うのは簡単だけど…。人を好きになるのは人の自由だし…。舞ちゃんともライバル!?
「舞ちゃんはオレとキスしたい?」
なっ!?
「し、したいってわけではないんですけど…」
ん?
「ならさっきのオレとめぐを見てドキドキしてるだけだよ。めぐのことを好きっていうのはホントだと思うけど」
そうなのかな。
「あ、相田先輩とは、キ、キスしたいです」
も、戻った!
「…めぐ…許す」
「えっ?」
「してあげて」
「えっ!?誠二くん本気!?」
「女の子同士だし、少しだけ教えてあげれば納得するかもしれないし」
納得とかそういう問題じゃないだろうけど、この場が収まるなら…。
そもそも何でこんなことに…?
せ、誠二くんだ!誠二くんが好きな人に教えてもらえなんて言ったから!
ま、まさか…。
誠二くんの方を見ると誠二くんは苦笑い。
私を使ってこの場を収めようと…!
「はは…」
後でおしおきだからね!
「舞ちゃん、目を瞑って?」
「み、見たいです!し、瞬間を!」
………。
「あー、もう!じゃいくよ!」
そして優しく舞ちゃんにキスしたんだ。
チュウ…。
あっ…舞ちゃんの唇柔らかい…。
「こ、これが、キッ、キスなんですね!ド、ドキドキしました!せ、先輩の顔が迫ってきてっ、あーっ!私っ!どっ、どうしよう…!」
興奮し過ぎだよ…。でも…。
「も、もう一回する?」
「い、いいんですか?じ、じゃあ目を瞑ります」
そして…チュウ…。
「せ、鮮明に、せ、先輩の唇を感じました。す、すごいです」
「ま、まだする?」
「めぐー。戻ってこーい」
はっ…!
あ、新しい自分に目覚めるところだった。
新しい私の誕生日になるとこだったな…。