後輩と
「めぐ先輩、たまには休みの日に私たちと遊びに行きませんか?」
「え?」
部活中に突然梓ちゃんがそんなことを言った。
「コクコクコクコク…」
舞ちゃんはひたすら頷いてる。
かわいいよ、その仕草。
「えっとー…どうしたのかな?いきなり」
「ただ、めぐ先輩と遊びたいだけですよー。いつも誠二先輩と一緒に居るから。たまには女同士で遊びましょうよー」
「コクコク…」
そうだなぁ…。
「誠二くんに聞いてからね」」
「ここで誠二先輩は関係ないですよー!たまにはいいじゃないですかー!」
えー、休みの日は誠二くんと一緒に過ごすって決めてるし。
「せ、先輩は、せ、誠二先輩がいないと、な、何も、決められないんですか?」
むむっ、舞ちゃんがそんなことを言うとは。
「そっ、そんなことないよ?誠二くんが寂しがるかなって思ってるだけで」
きっとそうだもん!
「一日くらい大丈夫ですよ!」
「その一日が貴重なんだよ?」
「わ、私たちなんて、ど、どうでも、いいんですね」
うっ…そんなに潤んだ目で見ないで…。
・・・・・・
そしてその日の帰り道。
「…と、いうわけで誠二くん。今度の休みは三人で遊びに行ってくるね」
「うん、わかったよ」
あ、あっさりだ!
「もも、もっとこうさぁ…あぁ、めぐ寂しいよ!…とか、行かないで!…とか…」
「後輩と遊ぶだけだろ?行っておいでよ。オレもたまには勇介の相手でもするからさ」
せ、誠二くん、もうめぐ離れを…?
い、いいもんいいもん!思いっきり楽しんで来るんだから!
「ぷんっ!」
「お、おい、めぐ。そうふくれるなよー。もうー…」
チュッ。
誠二くんがキスしてくれた。
にへっ…。
あー、ダメダメ。
「そ、それくらいじゃ…」
チラリ…。
誠二くんをチラ見。
「こっち…」
誠二くんに物陰に連れて行かれて…。
「んっ…」
熱い抱擁とキス。
「えへへ…」
「ふふっ、めぐはかわいいな」
「やーん」
誠二くん好きだよぉ。
「いつでもどこでも人の目はあるものよ、二人とも」
ビクッ!!
「さ、紗耶香ちゃん。脅かさないでよー」
見られた…かな。
「めぐー!私のかわいいめぐが汚れていくわー!」
「紗耶香、もう遅い。オレとめぐはこの間…」
せせせっ、誠二くん!?
「あーーー!忘れ物しちゃった!誠二くん!行くよ!」
言わせない!引きずってでも!
「うわっ!ちょっ、めぐ!…紗耶香!オレとめぐは愛の契りをーー~…」
―――――
と、いうことで。
「今日は何をするのかな?」
休みの日。
誠二くんが「行くな!」って泣きついてきたのを振り払って、梓ちゃん、舞ちゃんの二人と遊びに来てる。
ホ、ホントだもん!
「な、何しましょう」
「決めてないでーす!」
むぅ…私は誠二くんとの貴重な一日を割いて来たのにぃ!
二人とも柳ヶ浦町に住んでるから今日はアーケードに来てる。誠二くんとデートした場所。
「とりあえずブラブラしましょうよー!」
私は誠二くんとラブラブしたいよ。
「あ、相田先輩。い、行きましょう?」
「めぐ先輩!せっかくなんだから楽しみましょうよ!」
…そっか。そうだね!私を見捨てた誠二くんなんかほっといて楽しもう!
わ、私が泣きついたんじゃないもん!
(誠二くんも一緒に行こうよー!ねー、誠二くーん)
(たまには女同士で遊んで来なってー)
ふ…ふふ…誠二くんがいなくったって平気だもん!
「さー!遊ぶよ!二人とも!」
「あ、相田先輩…激変…」
「遊ぶぞー!」
っていってもまずは街をブラブラ…。
女同士でここを歩くのなんて初めてだな。いつも誠二くんと一緒だったからなぁ。
「めぐ先輩!あそこ寄りましょう!」
「なーにー?」
「わ、私は無理かもです」
えー、コスプレ専門店…。こんなとこあったっけ?
なんか寄りにくそうな雰囲気なんだけど…。
「つい二日前にオープンしたらしいんですよ!面白そうじゃないです?」
私はそういう趣味は…。
―――!
メ、メイド!文化祭の時に美香ちゃんが着てた!誠二くんが私なら絶対似合うって言ってくれた!
「行くよ。舞ちゃん」
「えっ!?い、いやです」
「梓ちゃん」
「はい。めぐ先輩」
ガシッと、舞ちゃんを捕まえて…。
「なっ!い、イヤです!無理です!ダメです!」
舞ちゃんの声をこんなにはっきり聞いたの初めてだ…。そんなにいやなのかな?
「行ってみようよぉ。舞ちゃん」
「は、恥ずかしいです…」
キュンッ…!
か、かわいい…。私にも前はこんな恥じらいがあったはず。なのに今は…。
「あ、梓ちゃん。私もやっぱり恥ずかしいな…」
「めぐ先輩。今さらですよ。無理があります」
ムッキャー!
もういいよ!
「舞ちゃん。観念してね」
「ひっ…ぐすん…」
ここは心を鬼にして…。
ご来店ー♪
・・・・・・
う、うわぁ…。
中に入るとメイド服はもちろん、ナース服やスチュワーデスやチャイナ服とかいろいろあった。あとはよくわからないけれど、多分アニメのコスチュームも並んでたかな。着ぐるみなんかもあった。
「すごいね。梓ちゃん」
「はい…。あっ、めぐ先輩。試着出来るみたいですよ」
試着…してみようかな。もちろんメイド服を。
「めぐ先輩、目が輝いてますけど」
「えっ、や、やだなぁ。試着はさすがに恥ずかしいよー」
…着てみたい。出来ることら誠二くんに見てもらいたい。
(誠二くん。どう?似合う?かわいい?)
(す、すごく似合ってるよ!かわいい!あぁ!めぐ、大好きだ!めぐーー!!)
(あーん!)
…なんちゃって。
えへへ…にへへへ…。
「め、めぐ先輩?ニヤニヤして気持ち悪いですよ?」
はぅっ!わ、私ったらなんてことを想像して…。いや、妄想して…。
誤魔化す!
「ま、舞ちゃん!舞ちゃんは!?」
「舞ならあそこに…」
舞ちゃんは着ぐるみをじーっと見ていた。
「舞ちゃん、これ気に入ったの?」
「か、かわいいです!」
そう言って見ていたのはペンギンの着ぐるみだった。
店員さんは…いた!
「すいません、あれ試着したいんですけど…」
「はい、かしこまりました。ではあちらの試着室へどうぞ」
うふっ。
「舞ちゃん、おいでー」
「えっ、な、何ですか?」
「やっぱりせっかく来たんだから、試着くらいするべきだと思うんだ。ねー梓ちゃん」
「そ、そうだよ!舞。身も心もペンギンになってみないと」
「い、意図がつかめません」
「わかってるくせにぃ。さー、これ着てみよう!店員さんには話したからさ」
「いっ、イヤですイヤです!こっ、こんなの着るなんて、い、一生の恥です!」
後ずさりしながら必死に抵抗の意を示す舞ちゃん。
「梓ちゃん!」
「はい!」
「いっ、いやあぁぁっ!」
二人がかりで無理矢理にでも着せてあげる!
…って、先輩たちの影響かな。私って意地悪になってる。でも…面白い!
そして…。
「か、かわいい…」
「舞、かわいすぎるよ」
ふわふわのペンギンの着ぐるみから顔だけ出してよたよた歩いてる。
「み、見ないでください!」
そう言ってペンギンの羽で顔を隠す。その仕草がまたかわいいの…。
パシャッ!
「とりあえず一枚ね。舞ちゃん」
携帯のカメラでコスプレショット!
「ひっ、ひどいですぅ!」
「ひどいだなんて…。ほら、鏡で見てごらん。素敵な自分に出会えるから」
「えっ…」
そうやって舞ペンギンを鏡の前に立たせた。
「あっ……」
「ね?かわいいでしょ?」
これでひどいなんて言われないよね。
「こ、こんなのイヤだぁ!」
あ、あれ?
「うわぁぁぁぁぁん!」
「ご、ごめんね、舞ちゃん。もう脱いでいいからさ」
おかしいなー。気に入ると思ったんだけどなー。
そして元の服に着替えて試着室から舞ちゃんが出てきた。
「ひっ…ぐす…か、顔から血が出るほど、は、恥ずかしかったです」
血って…。そ、それは相当恥ずかしかったみたいだね。
「あ、相田先輩と、あ、梓ちゃんは?」
「え?」
「な、何か着てください。わ、私だけなんて、ひ、ひどいです」
実は待ってました!その言葉!
「し、しょうがないよね。梓ちゃん何着る?私は…そうだなぁ…あれかな」
私はメイド服を指差した。
「似合いそうですね。私は何にしよう…」
「私が選んであげようか?」
梓ちゃんに似合いそうなのは…。
「え、遠慮しておきます!変なのになりそうですから」
えーっ、あのアニメのキャラクターっぽいやつ似合いそうなのに。
まあいいか。とりあえず私はメイドに♪
試着室へ…。
ゴソゴソ…。
メイドカチューシャも付けて…。
…………
こ、これ胸元開き過ぎじゃ…。ううん、これくらいが刺激的で…。下手したら全部見えそう…。
よ、よし!
シャアア…!
「完成!どう?」
似合ってるでしょ?
「うわぁ。めぐ先輩かわいい…。でも…」
うん?
「す、すごいです。でも…え、えっちです」
「そ、それはねぇ、ほらっ、大人の魅力?二人ともあと一年すれば私みたいに」
やっぱり胸元のせいだよね。
「その胸、何が入ってるんですか?」
「さ、触らせて下さい」
そして二人が歩み寄って来る。
「えっ!だ、ダメダメ!もう着替える!」
ゴソゴソ…。
もっと普通なのないのかなぁ?
衣装返さなきゃ。
「あ、あの、ありがとうございました」
「すごくお似合いでしたよ。恋人がいらっしゃったら大変お喜びになるでしょうね」
「…………」
・・・・・・
「あれ?めぐ先輩、その荷物は何ですか?」
「か、買っちゃった」
だってー、誠二くんに喜んで欲しいんだもん。
「い、いくらしたんですか?」
「……二万円」
ち、ちょっと痛いけど、誠二くんのために。
「高っ!もっと安いのあったでしょ?」
「あ、あったけど…」
店員さんにいくつか見せてもらったけど、これが一番魅力的だって言われたもん。
「大体なんに使う…」
「そ、そんなことより梓ちゃんは?」
「え?めぐ先輩待ってたんですよ。今から着替えて来ます」
「ご、ごめんね。行ってらっしゃい」
何のコスプレするんだろー?
「舞ちゃんもせっかくだから何か買っちゃおうよ」
「か、買いません!いりません!」
「さっきのペンギンとかさー…」
「お待たせしましたぁ」
梓ちゃん!あっ…ナース服か…。
「ど、どうですか?」
「すごく似合ってるよ!将来は決まったね!」
「これで将来を決められるのもどうかと…」
ナース服かぁ…。
(どこかお身体の具合が悪いんですか?)
(オレは病気なんです…)
(それでは診察しましょうね)
(恋の…恋の病なんです!オレは君が好きだ!めぐーー!!)
(あーん!)
…うふふふ。そういうのもありだね。
「め、めぐ先輩?さっきから変ですよ?」
「ふぇ?あっ、似合ってるねー!梓ちゃん!」
「さっきも聞きました!もう行きましょう。舞も出たがってますし」
「コクコク…」
「そうだね、じゃあそのまま行こうか」
「着替えます!」
・・・・・・
そして次はご飯を食べることに。
「じゃあナクドマルドに」
ハンバーガーのファーストフード。
「いいよ」
「わ、私もそこでいいです」
そして店に入って注文。
チーズバーガーとポテトとオレンジジュース!
さー、食べるぞー。
「私、めぐ先輩のイメージが変わりました」
「わ、私もです」
私が一人で。梓ちゃんと舞ちゃんが隣同士に座ってる。
「どういう意味?」
「いや、結構他の先輩たちと似てるんだなって」
「コクコク…」
と、言うと?
「もっとおとなしい人だと思ってました」
「コクコク…」
それはね…。
「前はそんな感じだったよ。殻に閉じこもってた。それを誠二くんが変えてくれたんだー。誠二くんは私のヒーローなんだよ!」
「ヒーロー…ですか」
「そう。実は私、中学の時いじめられてたんだ。それから塞ぎ込んでた時期があって、柳ヶ浦高校に来たのも地元が嫌だったからなの」
ちょっと苦笑いしながらだけど話せるかな。
「高校でも誰とも関わらないようにしようって思ってた。いじめの原因がフルートだったから部活でも遠慮して演奏してたんだ。実際に今の吹奏楽部でもちょっとあったんだけど、誠二くんが助けてくれたんだよ。そして、守ってあげるから自分をもっと出してって言ってくれたんだ」
懐かしいな…。
「じゃあその時から付き合ってるんですか?」
「ううん。それがちょうど一年前くらいのこと。その時は誠二くんのただの優しさだったのかもしれないけど、私にとってはまさに暗闇の底に射した光だったんだ」
「なんか、素敵な話しですね」
「それから私が誠二くんに惹かれていっったんだ。いろいろあって二月のバレンタインデーに私から告白したんだよ。まさか私を選んでくれるなんて思わなかったけど」
「え?選んで?」
あっ…。これは言っちゃいけないかな。
「ううん!とにかく今の私がいるのは誠二くんのおかげ!…ってなんかノロケ話しになっちゃったね」
いいお話しだよね…。
「そして明るくなっためぐ先輩が他の先輩たちに毒されていったんですね」
「コクコク…」
あ、あれれ~?今のは私にとって結構いい話しだったんだけどなぁ。
「は、早く食べよ!」
きっと伝え方がいけなかったんだよね!私なら涙してしまいそうな話しなのに。
・・・・・・
「食後の運動をしましょう!」
食べ終わって外に出たところで梓ちゃんがいきなり言った。
「運動?」
「な、なにするの?」
「ずばりボウリングです!少し歩いたところにボウリング場があります!」
そういえば見たことあるな。
ボウリングかぁ。スポーツ全般苦手なんだよなぁ。あんまり乗り気じゃないなぁ。
「あ、相田先輩。い、行きますよ」
えっ!舞ちゃんからは私と同じ匂いを感じてたのに。やる気満々だ!
…まぁ、たまにはいいかな。
「そんなに長くは出来ないよ?」
それでもいいからとボウリング場に連れて来られ…。
「めぐ先輩、靴のサイズはこれでいいんですか?」
「うん」
梓ちゃんは何でもテキパキこなすなぁ。
「よ、よいしょ」
「大丈夫?舞ちゃん」
重そうにボールを運んで来た。
「へ、平気です。お、重さはこのボールで、よ、よかったですか?」
「うん。ありがとう」
私も何かしないと…。年下にばっかり働かせてちゃダメだよね。
うーん…。
飲み物でも奢ってあげようかな。
「梓ちゃん。舞ちゃん。何飲む?」
「あっ、私いらないです」
「わ、私も」
…………。
「二人とも喉渇いてるよね?何飲む?」
「いいですよぉ」
「コクコク…」
…………。
「二人とも…。何…飲むのかなぁ?」
ニコッ。
「お、お茶が飲みたいです!」
「コクコクコクコク…!」
ふふふ…。
「うん!わかった!買って来るねー!」
もう、二人とも素直じゃないんだからー。
「はい、お茶だよ」
私は自動販売機でお茶を買って来て二人に渡した。
「さ、投げよー。梓ちゃんからね」
「は、はい!」
ん、素直でよろしい。
「あっれー!どうしたんですか?三人で!」
この声は…。
振り向くと一応恋敵の亜美ちゃんが立っていた。
「亜美ちゃんこそ何してるの?ボウリング場に一人で」
「通りがかっただけですよ」
ボウリング場を通りがかるって…。
「亜美!一人なの?一緒にやる?」
亜美ちゃんとか、亜美ちゃんとねぇ…。
「めぐ先輩と…。一緒にしてあげてもいいです!」
むっ…!
「あ、亜美ちゃん。無理しなくてもいいんだよ?通りがかったってことは用事があるんじゃないの?」
見えてるよ、足元。貸し靴まで履いてやる気満々なんだよね。
「た、たいした用事じゃないですよ!たまたま!ホントにたまたま表で梓を見かけて」
知ってたみたいだね、今日のこと。
「そうなんだ。でも用事があるならそっちが大事だよ。さ、梓ちゃん、舞ちゃん、投げよう!」
チラッ…。
あらぁ、顔真っ赤にしちゃってー。
「めぐ先輩。亜美がかわいそうですよ」
「コクコク…」
やりすぎかな。
「まぁ、人数が多いほうが楽しいだろうし。やろうか、亜美ちゃん」
「そ、そこまで言うなら仕方ないですね」
ふふっ、みんな素直じゃないなぁ。
「めぐ先輩!亜美と勝負です!」
なんかこんなことになる予感はしてたんだけど。
「スコア勝負だよね。いいよ」
こっちの方が燃えるかな。
「勝った方が一日誠二先輩を好きに出来るというのはどうでしょう?」
えっ!?
「そ、そんなのダメだよ。まずは誠二くんに聞かないと」
「逃げるんですね」
むっ!
「ひ、人聞き悪いなぁ。そういう問題じゃなくて、誠二くんを賭けるって事事態がナンセンスだよ。大体私にメリットないし」
「亜美に勝つ自信がないから…」
むむむっ!
「いっ、いいよ!やってあげるよ!絶対負けないからね!その代わり私が勝ったら誠二くんにちょっかい出すの止めてね!」
「うっ…。ま、まぁいいですよ。仕方ありません」
そこまで後輩に言われたら先輩としての面目がないもんね!
「めぐ先輩…。亜美、ボウリングうまいですよ?」
うっ…。
わ、私はあんまりしたことない…。
「梓ちゃん見てて!私と誠二くんの愛の力を!」
「けっ!です!亜美だって誠二先輩を好きな気持ちは負けません!」
負けられない!負けないから!
「ま、舞。私たちはこっちで投げようか」
「う、うん」
そして勝負開始!
私から!…えいっ!
ゴロゴロ~…。
ガコガコガコン。
七本倒れた!ま、まぁまぁじゃない?
次!
ゴロゴロ~…。
カコッ。
い、一本しか倒れなかった。一フレーム八本か…。
「ふふんっ…」
あ、亜美ちゃんに鼻で笑われた。そんなに自信あるのかな。
み、見せてもらおうじゃない。
亜美ちゃんが投げる。
か、構えからなんかうまそうに見えるな。
ゴロローー…。
ガコーン!
う、ウソ…。ストライク?
あっ!一本残ってる!
「ちっ!…まぁスペアは確実です!」
うぅ…。
ま、まだまだこれから!
「えいっ!」
「そりゃっ!」
…………
「二人とも本気だね」
「わ、わくわくする」
ゴロロー。
ガッコーン!
「きゃー!やったぁ!ストライク!見た見た!?」
「くっ…」
やった!やったね!私だってやれば出来るんだから!
「めぐ先輩が一番楽しそう…」
「そ、そうだね」
………
「まだ亜美が勝ってます!」
あと三フレームで二十ピン差か…。
「えいっ!」
ゴロロー。
ガッコーン!
「やった!またストライク!コツ掴んだかも!」
「負けません!」
あぅ…。亜美ちゃんもストライク。このままだと負けちゃう…。
が、頑張れ私!
ガコガコガコン!
「あっ!は、端っこ同士…」
スペアも無理だ…。
「亜美が勝ちます!いけー!」
………。
「あっ!誠二くん!」
「えっ!誠二先輩!?」
ゴロー…カコッ…。
ガーターだ。うふっ。
「め、めぐ先輩!卑怯です!誠二先輩いないじゃないですか!」
「てへっ、見間違えちゃったぁ」
「し、白々しい…」
亜美ちゃんが怒りでわなわな震えてる。
「せめてスペアを!」
ふふっ。
「あっ!」
「同じ手は通用しません!」
「もしもし誠二くん!?」
亜美ちゃんがピクッっとしたのがわかった。
「あぁっ!」
連続ガーター。
まだまだだね、亜美ちゃん。これが大人の戦い方だよ。
「ぐっ、一度ならず二度までもこんな姑息な手に…!もう通用しないですよ!」
だろうね。ここからはフェアにいくよ。
最後で決まるんだ。お互いスペアも取ってないから純粋な十フレームの勝負。
「楽しそうだね、二人とも」
「う、うん。あ、相田先輩ずるい…」
「負けられない勝負みたいだからね」
負けられない!!
「えいっ!」
ガッコーン!
「えいっ!」
ガッコーン!
に、二連続ストライク!次もストライクならほぼ負けはない!
誠二くん…私に力を貸して…。
「誠二くん!」
(めぐー!)
ガッコーン!
ス、ストライク…!
「きゃー!やったやったーー!」
「う、うっそー!最後の最後でターキー!?」
後は亜美ちゃん次第…。
「おもしろくなってきたね。舞」
「ど、どきどき…」
勝ったはず!
「あ、亜美だってー!」
ガッコーン!
ス、ストライク…。
ガッコーン!
ま、また!?
九本で引き分け…ストライクなら負け…。
お願い…!
「亜美だって!誠二せんぱーい!」
ガッコーン…!
・・・・・・
「ス、スプリット…!?そ、そんな…」
は、八本?勝った?勝ったの!?
「きゃーー!!勝った!勝ったよ誠二くーん!」
「ぐっ…く…く…」
と、いうことは…。
「亜美ちゃん、もちろん覚えてるよね?ゲーム前のや・く・そ・く!」
「な、何のことでしょう?」
むっ…。
「言ったよね?誠二くんにはちょっかい出さないって。ねぇ!梓ちゃん!舞ちゃん!」
ジロッ…にこっ。
「は、はい!ごめん亜美。このめぐ先輩には逆らえない…」
「コクコクコクコク…!」
うふふ…。これで誠二くんが迷惑することもなくなる。
私ってば誠二くんのためにも頑張ったんだ。今度頭撫でてもらおう。
「亜美ちゃん?いいね?」
「や、約束は約束ですからね…」
ふっふーん。
よしよしいい子。これからはかわいがってあげようっと。
「こ、近藤誠二くんは諦めます」
………。
「…亜美ちゃん?」
近藤誠二くんって誰かなぁ?
「な、なんですか?誰も誠二先輩のことなんて言ってなかったですよ。めぐ先輩が勝手にそう捉えていただけであって亜美が言ってたのは近藤誠二くんのことですから!」
こ、この子は…!!
「そ、そうなんだ…。うふふふ…」
ひくひく…!
「そ、そうですよ!あ…あはは…」
ど、どうしてくれようかなぁ!
「こ、これは亜美が一本だね」
「あ、相田先輩ずるいこと、し、したから。こ、これくらいで、いい」
むっ、た、確かに負けてた勝負だったけど…。
「こ、今度、近藤誠二くんを紹介して欲しいなぁ!」
「残念!遠距離なので!」
「……うふふ……」
「……あはは……」
負けないからね、これから第二ラウンド開始だよ!
「あ、あれ?二人ともあれ見てください!」
梓ちゃんが何かに気がついて指を差した。
「え?」
「なに?梓…あっ!たっ、倒れてる!引き分け!めぐ先輩!引き分けです!」
「えぇっ!?」
二本残ってたはずの亜美ちゃんのピンが一本倒れてた…。
そんな…結局引き分けって…。
ん?引き分けならまぁいいか。
「引き分けなら誠二くんを好きにするっていうのはなしだね」
「ま、まぁそういうことですね。いささか納得出来ないこともありましたが、最後のターキーは間違いなくめぐ先輩の力でした」
「亜美ちゃん…」
「めぐ先輩…」
ガシッ!
私たちは固い握手を交わした。
「舞。何か丸く収まったよ」
「つ、つまらないね」
なんにしろ負けなくてよかったー。
それから亜美ちゃんも一緒に洋服を見たりショッピングをしたりしたんだ。プリクラも撮った。
なんだかんだで私が一番楽しんでたのかな。たまには女の子同士でこういうのもいいかも。
誠二くんとは二人っきりで甘い時間を過ごすんだ。
このメイド服で!
(あぁ、めぐ!かわいい!すごくかわいいよ!めぐぅ!)
うふふふ…。
楽しみにしててね。誠二くん。
・・・・・・
「せ、誠二くん。どうかな?」
「ど、どうしたんだ?めぐ。そんな変な格好して…」
………。
あ、あれ~?