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デート

 ゴソゴソ…。

 これ…。

 ・・・・・・

 ううん、やっぱりこっち。

 ・・・・・・

 でも…。

 今日何来て行こう…。

「あーん!どうしよー!」

 今日は誠二くんとデート!そう思ってるのは私だけだろうけど。

 待ち合わせは午前十一時に誠二くんが住む柳ヶ浦町のアーケードの公園の噴水前。

 緊張してあんまり眠れなかったんだ。

「やっぱりお気に入りの服にしよう」

 少しメイクもして…っと。

 ・・・・・・

 こんなもんかな…。

 まだ十時…。

 少し早いけど行って待ってようかな。早く会いたいし。

 よしっ!行こうっ!

 バス停に向かって歩いて行く。

 その足は自然に急ぎ足になってた。

 あっ!

 バスが停まってる!

 柳ヶ浦町通るみたい、急いで!

「乗りまーす!」

 乗り口のドアを叩いて乗せてもらった。

「はぁっ…はぁっ…」

 いい具合に体温まったな。

 今日は何しようかな。一日付き合ってって約束したけど…、こういう時ってどうしたらいいんだろう。お昼食べたりはもちろんだろうけど…。

 映画?今何が上映されてるかなんてわからないしな。ショッピング…。欲しい物とかないし。

『次は柳ヶ浦町アーケード~、柳ヶ浦町アーケード~』

 着いちゃったか…。

 運賃を払ってバスを降りる。

 待ち合わせの公園はすぐ近く。

 待ってる間に考えよう。私が誘ったんだし。

 公園の噴水…。

 あ、あれ?

「誠二くん!」

 誠二くんはもう待っていた。

「相田さん、早いね」

「誠二くんこそ。私は、は、早く会いたかったから…」

「え?早く会いたかった?」

「あ、あの…。早く遊びたくて!約束は一日だし」

「あぁ、そういうことか」

 誠二くん、今日もかっこいい。

 ジーンズにジャケット。細身の体によく似合ってる。

「今日はどこに付き合えばいいの?」

 どこに…どこ?結局決めてない。元々こっちのこと知らないしな。

「特に決めてないよ」

 正直に言おう。

「え?そうなんだ」

 どうしよう…。私は会えただけでも嬉しいんだけど…。

「誠二くん、少し街をブラブラしよう?」

「あ、あぁいいよ」

 そしてアーケードの法に向かったんだ。

「えへへ…」

 自然に顔がほころんじゃうな。隣に誠二くん。一緒に並んで歩いてる。学校以外で。

 嬉しい…。

 でもこれが恋人同士なら手を繋いだり腕を組んだりして歩くんだろうな。

 誠二くんと腕組んで歩いたら…。

 きゃー!どうしよう!

 あっ…。

 誠二くんが何?って顔で見てた。一人でトリップしちゃった。

「せ、政治くん。あそこの雑貨屋寄っていい?」

「ん?あぁいいよ」

 誤魔化し成功…かな?

 誠二くんと雑貨屋に。

「いらっしゃいませー」

 うふふ…周りから見たらカップルに見えるのかな?一緒に店に入ったりしたら。

 しばらく店内を見て回る。

 あっ…。

 相性占いの本…。

 誠二くんとの相性は…これ、誕生日占いか。

「誠二くん、誕生日いつ?」

「え?六月二十二日だけど?」

 六月二十二日…。

 相性…八十五パーセントか。いいんじゃない?

「相田さんの誕生日は?」

「私は七月十七日だよ」

 誠二くんも見るのかな?

 あっ!その本…!

「相性いいね。オレたち」

 それ、体の相性占いなのに…。

「え、えっちだね。誠二くん」

「え?えっち?……うわっ!」

 わざとじゃなかったんだ…。誠二くんはえっちって聞いてるからな。

 相性いいんだ、誠二くんと…。キスしたり…あんなことか…。

 ぼー…。

 誠二くんとキス…誠二くんとキス…誠二くんと…。

「あの…相田さん?」

「私たち、相性いいんだぁー?」

 誠二くんと…誠二くんと…。

「あ、あの!お腹空かない?」

 え?お腹?

 はっ…!私、何考えてたんだろ。誠二くんと二人っきりのときに…。

 カァァ…!

「お、お腹、空いたかも」

「じゃあ少し早いけどお昼にしようか」

「うん」

 誤魔化せたかな?顔赤くなってなかったかな!?でも早起きしたからお腹空いたっていうのも本当なんだよね。

「相田さん、何食べたい?」

 店を出て何を食べようか話す。

「誠二くんが好きなものでいいよ!」

 へへ…これで誠二くんの好みがわかるかも。

「困ったなぁ。オレ、好き嫌い激しいよ?」

 そうなんだ。

「たとえば?」

「野菜、魚介、なまもの全般!」

 ………かわいい。

「誠二くんって案外お子様なんだね!」

 誠二くんは少し驚いた顔をした。

「誠二くんのお嫁さんになる人は大変だね!」

 私なら…嫌いなものでも食べやすいように調理して…。誠二くんの健康管理もしっかり…。

「相田さん」

「え?」

「あそこのファミレスでいい?」

「あっ、うん!」

 最近、妄想癖ついてきたかも…。

 ファミレスに移動して席に着いた。中はカップルや家族連れで賑わっていて、おいしそうな匂いが漂っていた。

「相田さん、メニュー」

「ありがとう」

 うわぁ、どれもおいしそう…。

 誠二くんは食べれるもの限定されるんだよね。

「決まった?」

「誠二くんと同じものでいいよ!」

「うーん…」

 また困らせたかな?

「じゃあハンバーグ定食でいい?」

「うん!」

 ベルで店員さんを呼んで誠二くんが注文した。

「この後どうするの?」

「誠二くんは何かしたいこととかないの?」

「今日は間さんに付き合ってるんだから、相田さんがしたいことしていいんだよ?」

 でも…。

「それじゃあ誠二くんつまらないでしょ?何かあったら言ってね」

「お待たせしました。ハンバーグ定食お二つですね」

 しばらく誠二くんと話してたら料理が来た。

「いただきます」

 モグモグ…。

 ん、おいしい。

 なんか…男の子の前で食べるのって恥ずかしいな…。

 ん?

「せ、誠二くん。あんまり食べてるとこ見ないでよぉ」

 なんか見られてたな。

 ん?

 ガッツポーズ?

「どうしたの?」

「な、何でもないよ」

 変なの…。

 あーっ!

「もう、誠二くんったら。私が食べてあげる」

 誠二くんは添えてある野菜とかには一切手をつけていなかったんだ。

「あ、ありがとう」

 ふふっ…少し照れてる。かわいいな。

 食事を済ませて外に。

 食事代は誠二くんが払ってくれた。いいって言ったんだけど経は私が主役だからって。

「ふぅー、食べた食べた!」

 ふふ…満足そう。今度私も何かご馳走しないとな。わ、私の手料理なんかどうかな!?

 それから街中をブラブラしたりちょっと買い物したりしてた。

 私は何かしたいとかじゃなくて、こうやって肩並べて歩けるだけで満足なんだ。

 この場所…誠二くんの隣を私だけの場所にしたい…なんて、わがままかな?

「相田さん」

「なに?」

「あそこ寄ろうか。ゲームセンター」

 ゲームセンターか。私ゲーム苦手だけど…。

「うん」

 そしてゲームセンターの中には入った。

 あんまりこういうとこ来たことないんだよなぁ。

 あれもこれも、どういうゲームなんだろう。

 あっ!あれって…うん、そうだ。

「誠二くん、あれやって?」

「え?」

 確か…太鼓の鉄人、だったかな。

「一緒にやる?」

「ううん、見てるよ」

 出来ないもん。

 そして誠二くんがプレイする。

 ・・・・・・

「誠二くんすごーい!」

 完璧だった!

「ふふ…。相田さんもやってみなよ」

 えー…。

「ねっ」

 うっ…そんな顔で見られたら…。

「じゃあ一回だけ」

 パーカッションのつもりで。

 ドンッカッ、カカカッドンッ…。

 うわわ…!難しい…!

 パーカッションってすごいんだ。誠二くんってすごいんだ。

「うー…だめー…出来ないよぉ」

「ははっ、いい感じだったよ」

 誠二くんが笑ってくれてるんならいっか!

「じゃあ次あれやろっか」

 レースゲーム…。

 私は何も出来ないよぅ。

 誠二くんはホントにゲーム好きなんだな。

 それからレースゲーム、エアーホッケー、コインゲームなんかをして遊んだ。

 コインゲームおもしろかったな。誠二くんの隣に座って遊べたし。

「かわいい~!」

 クレーンゲームの景品にカエルのぬいぐるみがある。目がすごくかわいい。

「カエル好きなの?」

「そんなわけじゃないけどメがかわいいなって」

「待っててね」

 あっ、誠二くん取れるのかな?

 ウィーーーン…。

「誠二くん、得意なの?」

「多分、大丈夫」

 あっ、アームがかかった!あれ?隣のぬいぐるみにも…。

 すごい!二つ持ち上げた!

 そのまま…そのまま…。

 ゴトン…。

「はい、相田さん」

「すごぉい!いっぺんに二つも取っちゃった!」

「ふふ…」

 もうひとつ取れたぬいぐるみはおたまじゃくしのぬいぐるみ。これは誠二くんに。

「はい、これは誠二くんに」

「あ、ありがとう」

 初デートの記念だな。

 そうだ!

「今日の記念だね」

「うん」

「記念ついでにさ、誠二くん。あれ…一緒に撮らない?」

「え?」

 私が指差した方を見て政治くんが驚いた顔をしてる。

「プ、プリクラ撮るの?」

 やっぱり…私なんかとはイヤなのかな?お願いしよう。

「誠二くん、ダメ?」

 甘えてみよう。

「うっ…。い、イヤじゃないけど…。あんまり撮ったことないからわからないよ?」

「私が全部するから!ねっ!行こう!」

 半ば強引に誠二くんをプリクラに。

「やっぱり…この空間がなぁ。なんというか、照れくさいんだよなぁ」

 そんなこと言ったら私も照れくさくなっちゃう。

 頑張れ…私!

 お金入れて…背景はこれとこれ。明るさは普通でいいかな。

「誠二くん、あのレンズ見ててね」

「うん。……って相田さん!?」

「プリクラではこのポーズが当たり前だよ?」

 誠二くんと腕を組んで寄り添う形。ちょっと勇気を出してみた。

「そうなんだ…」

 ゴメンね。私のわがまま聞いてね、誠二くん。

 パシャッ。

「今度はアップでね」

「うわわっ…!」

 レンズの前に二人で肩を寄せて…。

 パシャッ。

「もう一枚!」

 パシャッ。

「また腕組んで?」

「う、うん」

 パシャッ。

 終わり…かな。

 誠二くんは…ふふ…疲れた顔してる。

「終わりだよ。お疲れ様!らくがきは私がするから誠二くん座ってていいよ!」

「うん、ありがとう。そうしようかな」

 さーて、らくがきらくがき…。

 今日の日付と…あとは…。

 えーい!書いちゃえ!

 初デート…めぐみ…せいじ…私の大好きな人…。

 ………。

 み、見せられない…。

 これはあんまりだよね。勢いでかいちゃったけど。やっぱり日付と名前くらいにしよう。全部に書いちゃったから消さないと…。

『らくがき終了だよ♪しばらく待っててね♪』

 えっ……えぇっ!?

 ちょっと早くない!?

 どうしよう!?どうしよう!?

 …見せる?

 ううん、無理無理!

『出来上がりだよ♪』

 出来た…。

 ・・・・・・

 あーー……。

 見事なもんだぁ…。

 写りが悪かったことにしよう…。

 ごめんなさい、誠二くん。

「お待たせ」

「あっ、出来たんだ。見せて?」

 うっ…。

「ダ、ダメ…」

「え?なんで?」

「う、写りが悪かったから見られたくないんだ」

 誠二くんの反応、ど、どうかな?

「女の子だからね。仕方ないかな」

 やっぱり優しい誠二くん。

 ごめんなさい。罪悪感でいっぱいです。誠二くん頑張ってくれてたのにな。

 いつか…見せることの出来る日が来たら。

「もう暗くなってきてるし、そろそろ帰ろうか?」

「もうそんな時間…」

 イヤだな…。

「相田さんの親も心配するだろうし」

「え…わ、私は…」

 ううん、いいや。家には私一人なんて。私がホントに帰りたくなくなっちゃう。

「バス停まで送るよ。バスの時間合わなかったらバスが来るまで待ってるよ」

 誠二くん…。

 ありがとう。でも…。

「ここでいいよ!今日はありがとう!」

「え?あ、相田さん!?待って…」

 引き止めないで…。

「これ以上は…帰りたくなくなっちゃうから…」

「え?」

「な、何でもないの!じゃあ、またね!」

 私は誠二くんの前から走り去った。

 名残惜しいけど…。

 …誠二くん…。

 振り向いちゃダメ…!

 ………。

 誠二くん…!

 私は立ち止まって振り向いた。

 あっ…。

 誠二くんが手を振ってくれてる。

 ブンブンッ…!

 私も手を振り返す。そしてまた振り向き走り出した。

 えへへ…誠二くん…。

 今日は楽しかったな。

「はぁっ…はぁっ………はぁー……」

 バス停までたどり着いた。

 プリクラ…。

 ふふっ…誠二くん、顔赤いな。かわいい。そんなに照れてたのかな。

 私の宝物にしよう。

 今日はありがとう、誠二くん。

 大好き…。

 空気は冷たくて、今まで隣に居た人の暖かさがわかる。

 もうすぐ年が明ける。十二月の寒空の中だったんだ。

  

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