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体育祭

 夏休みの間、みんなとは二、三回遊んだ。夏休み後半になると、誠二くんが宿題に追われて一緒に遊べなかった。

 ”誠二くん”

 そう呼ぶようになってから、違和感もなくなってきていた。

 夏休みが終わって新学期。

 最初の大きな学校行事が体育祭。

 三学年のクラス別に分かれて組になるんだ。学年で五クラスあるから全部で五組出来る。美香ちゃんと紗耶香ちゃんとはクラスが違うから敵同士なんだよね。

「よーし!みんな頑張るぞ!」

 三年生の先輩がみんなに気合を入れる。

「誠二くん、頑張ろうね」

「うん」

 私は運動オンチだから走るのとかは苦手。出場種目は二人三脚だけなんだ。

 でもね、誠二くんとなの!

 それだけが楽しみなんだ。昔っから運動会とかイヤだったから。

 誠二くんは二人三脚と百メートル走と借り物競走。

「相田さん大丈夫?」

 私が運動オンチなことわかってるから心配してくれてる。

「練習した方がいいかな」

「じゃあ練習しようか。向こうでやろう」

 そして組のテントから少し離れたところで。

「じゃあ練習するよ。肩貸して」

 そう言って誠二くんに腕を回された。

「ひゃあっ!」

「うわっ!び、びっくりしたぁ」

「ご、ごめんなさい」

 こ、これは練習どころじゃないかも。緊張してきた…。

「誠二ーーーー!!」

 え?紗耶香ちゃん?

「めぐに変なことしてたでしょ!」

 ど、どんな嗅覚してるんだろう。確かにちょっと声出しちゃったけどそれに反応するなんて。私って愛されてる!?

「二人三脚の練習してただけだ」

「そんなの本番だけでいいでしょうが!めぐから離れなさい!ねっ、めぐ」

 えー…っ。

 せっかく誠二くんとの練習なんだもん。

「練習…したいな」

「うー、めぐがそう言うなら。誠二!なるべくめぐから離れて練習しなさい!」

 そんなの無理だよ、さすがに。

 言うだけ言って紗耶香ちゃんは行っちゃった。

「じゃあ練習しようか。大丈夫?」

「うん、大丈夫。続きしよう」

 そして練習再開。

 お互いの肩に腕を回す。

 ドキドキ…。

 …近い。

 大丈夫かな?私、汗臭くないかな?

「いくよ。オレは左足、相田さんは右足からね」

「う、うん」

 いけないいけない。練習するんだ。えーと、右足から…。

「いくよ。いっちに、いっちに、いっちに、いっちに…」

 うまくやれてる…。

「いい感じだね。じゃあペースアップしようか」

 ペースアップか、ついていけるかな?

「うん、す、少しずつだよ?」

「うん、じゃあいくよ」

 いっちに、いっちに、いっちに、いっちに…。

「ペースあげるよー」

 いっちに!いっちに!いっちに!いっちに!

 あっ…ダメッ!

「ちょっ…まっ…誠二くん…!きゃっ!」

 ドスン…。

「あたたた…。…!」

「いたた…相田さん、だいじょ……」

 誠二くん、固まってる…。

「せ、誠二くん…手…」

 私の胸を思いっきり掴んでるんだけど…。

「ごごごごごめん!」

 すぐに手をどけた。

「…………」

「…………」

 初めて男の人に触られちゃった…。びっくりしたけど何故か冷静。

「えっち…」

「い、いや、あのね!決してわざとじゃないんだよ!わざとじゃ!」

 クスッ…。あたふたしながら焦ってる誠二くんが可笑しい。

「手、すぐにどけなかったよね?」

 少しからかっちゃおう。

「そ、それはさ!ほら!びっくりして!お、大きいとか思ってたわけじゃないから!」

 カァァ…!

 誠二くんの言葉に思わず顔が真っ赤になるのを感じた。

「…………」

「あ、あの、ごめんね?」

 誠二くんでよかった。他の人だったら泣いちゃってたかも。

「誠二くんにつき、許してあげる」

「え?ホント!?よかった!」

「でも」

「えっ…」

「次はもっとゆっくりね?」

「あっ…うん!」

 それからまた練習再開。

 いっちに!いっちに!いっちに!いっちに!いっちに…!

「い、いいよ。ペース上げて?」

「じゃあもう少し早くいくよ」

 いちに!いちに!いちに!いちに!いちに!いちに…!

「せ、誠二くんストップ!」

 やっぱりキツイ…!

「大丈夫?」

「はぁっ…はぁっ…うん…ちょっと休憩…」

「うん、いいよ」

『次のプログラムは二人三脚です!」

 えっ!も、もう!?

「相田さん行かなきゃ!」

「う、うん!」

 大丈夫かな…。不安…。迷惑かけたくないよ。

 そしてグラウンドへ集合した。

 ドキドキするな…。

「緊張してるの?」

 誠二くん…。

「少しだけ。体育祭とか苦手だから」

「ははっ、コンクールと立場逆だね。オレも一緒に走るんだから大丈夫だよ」

 そうだよね、誠二くんと一緒なら。

 そして本番。

『位置について…』

 ドキドキ…。

『よ~い…』

 ドキドキ…。

 パンッ!

 ―――!

 いちに!いちに!いちに!いちに!いちに!いちに!いちに!いちに…!

 もうすぐ…!

 いちに!いちに!いちに!いちに!いちに!いちに!いちに!いちに…!

 ゴール…!

「はぁっ…はぁっ…」

 順位は!?周りなんて見えなかった。

「やった!間さん一着だよ!」

 えっ…!やった!

「きゃー!やった!誠二くん!」

「うわっ!あ、相田さん!みんなの前で…!」

「やったーーーー!」

 よかった!誠二くんのおかげだ!

「ず、ずいぶん仲良しだね…!」

 あれ?美香ちゃん?

「恵ちゃん、みんなの前だよ。誠二も迷惑してるから離れて」

 え?

 ―――!

「ごごっ、ごめんなさい!」

 一着取った嬉しさで思わず抱きついちゃってた。

「ふん!」

 あれ?美香ちゃん行っちゃった。なんか怒ってた?

「美香ちゃん、何か怒ってた?私たちが一着だったから?」

「さ、さぁ…。ははは…」

 変なの…。

 それからいくつかプログラムが進んで借り物競走。

 誠二くんが出場したんだけど、紙を見て美香ちゃんを連れて行った。

 何の借り物?

 一着だったみたいだけど、違う組の美香ちゃんが上機嫌で誠二くんとこっちに戻って来たんだ。美香ちゃんは違う組に来たことに気付いて恥ずかしそうに戻って行ったけど。

 仲直りしたみたいだった。

「よかったね。美香ちゃんと仲直り出来たみたいで」

「う、うん。そうだね」

 誠二くんは少し引きつった笑顔だったけど、なんだったんだろう。

 私はその後応援だけ。

 誠二くんと一緒なら競技に出てもいいかなぁ。

 ずっと応援だったけど、みんな盛り上がってて楽しかった。

 誠二くんは百メートル走も借り物競走も二人三脚も全部一着だったんだ。誠二くんすごい!

 全部のプログラムが終わって優勝は紗耶香ちゃんがいる組だったんだ。

 紗耶香ちゃんは誠二くんに対して勝ち誇ってた。何か言い争っていたけど楽しそうだったな。

「紗耶香ちゃん優勝おめでとう!」

「めぐも一着おめでとう!」

 誠二くんと取った一着。

 体育祭、楽しかったな。


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