第40話:北に向かって
12月現在、余り投稿出来ておらず本当にすみません。
少しずつ投稿頻度を増やしていきたいと思います。
スミスさん達と到着した農園。
辺りには誰もおらず奥まで進んでようやく、ベラさんを見つける。
――それと少し離れた所で、作業をしている顔に見覚えのある二人。
どうして、あの二人が農園を手伝っているのよ。
私と目が合うなり、怪訝そうな顔をして黙々と作業に戻っていた。
「ベラさん、おはようございます」
「救世主様に伯爵様まで、こんな朝早くから、どうかされましたか?」
「それが……」
どう言おうか悩んだ私だったが、素直に今朝からの事を告げた。
もちろん、一部イルミナさんとの事は省略させてもらったが、意図は伝わったみたい。
「って事は、さっきの青年が王子様って事ですか!?」
起きてる事を理解したベラさんが、青い顔をして口元を抑えていた。
「大丈夫ですよ。王子ですけど、ただの王子ですので。殴ったりしてても、処罰されたりはしないかと……ですよね! スミスさん」
ベラさんを安心させる為に、私はスミスさんに助けを求める。
正確に此処で何が起こったのかは知らないけど、何かはあったのだろう。
「流石に保証はできませんが、兵士のお二人が手伝っている所を見るに、きっと大丈夫でしょう。後は我々が対処しますので、アゼル達と王子がどの辺りに居るかだけ教えていただけますか?」
「えぇ勿論です」
スミスさんの話を聞いたベラさんが少し落ち着きながら、急いで農園の奥の方を向く。
「アゼル達なら、向こうの奥の方で水が途絶えてしまった所から作業をするように言ってますので、その辺りに居ると思います」
「分かりました。後は任せて下さい」
スミスさんが返事をして進みだし、私とイルミナさんはぺこりと頭を下げて後に続いた。
*
暫く進み、私達は丘の様に盛り上がっている部分を歩く。
「この先に、もう少し広がっている箇所までが、管理している農園にあたる」
私とイルミナさんに説明する様にスミスさんが教えてくれる。
「随分と広いのですね」
「この街の分だけでなく、それ以上に収穫量が得られる様にしていますので」
イルミナさんが辺りを見渡しながら、私達と同じように傾斜を進む。
そして、もう少しで向こう側が見える直前に――。
次第に大きくなって来る――子供の叫び声が耳に入った。
一瞬何が起こっているのか想像してしまう。
けど深く考えるより先に身体が動き出し、私達は急いで目の前の傾斜を上がった。
目に入る一面の手入れされた緑。
その中で、少し離れた場所で動いたものに視線が向かう。
――走る二人の子供と、四足で駆ける二体。
その体は全体的に黒く、最近見た魔物を瞬時に思い出す。
「クルムドウルフ!?」
「何でこんな所に――」
思考を巡らせながらも、私は身体に魔力を流し始める。
農園が広い事がこんなにも嫌になるとは、思いもしなかった。
「スミス様は此処に、我々が」
「いえ、私が行きます」
重たい装備を纏った二人よりも、辿り着くだけなら私の方が早い。
それに、もう魔力は整った。
スミスさんからの返事を待たずに力強く地面を蹴ると、その一歩で地面が深く凹み、私の身体が勢いよく前に押し出されていた。
近づくと共にフィリアちゃんとカルナちゃんの二人を捉え、その奥から追いつこうと駆けている二匹のクルムドウルフを視界に収める。
「サリナお姉ちゃん」
私を見たカルナちゃんが安心した様な表情を見せるも、隣を走るフィリアちゃん同様に今にも倒れそうな程必死に走り続けている。
「任せて」
走りながら両手に魔力を集め二人を通り越した私は、左右から迫るクルムドウルフの体に向かって手を向けていた。
――その場で静止すると共に、両手から出た淡い光が魔物に触れる。そして流れた魔物の体が私の手にぶつかるも、軽く押し返すだけで、脱力した魔物が地面に転がってしまう。
「二人共、大丈夫!?」
「ぅんっ――」
振り返った私の身体にフィリアちゃんが飛び込んで来る。
「もう大丈夫だから」
優しく片手で背中を抑えると、フィリアちゃんがむせび泣いてしまう。
遅れて近づいて来たカルナちゃんの頭にも手を乗せる。
「サリナお姉ちゃん、私。何も出来なかった」
「走って逃げただけ、偉いよ」
「三人とも、大丈夫だい!?」
到着したスミスさんが私達に声をかける。
その後ろから、息を切らしたイルミナさんも遅れて辿り着く。
待って……アゼルは? サリスちゃんは……。
もっと奥か、それとも別の場所で……。
「カルナちゃん、アゼルとサリスちゃんは!? それともう一人」
「何も出来なくて……それで――」
「大丈夫だから、落ち着いて」
明らかに混乱しているカルナちゃんを落ち着かせ、言葉を待つ。
そして必死に乱れた呼吸を落ち着かせたカルナちゃんが、口を震わせながら声を出した。
「サリスが魔物に捕まって、それで森の中に入って……。その後をアゼルが追って、私達も行こうとしたらあの人に止められて、急いで戻ろうとしたら別の魔物が出て来てそれで――」
「カルナちゃん、アゼル達はどっちに行ったか分かる?」
ゆっくりと首を動かしたカルナちゃんが、北の方を指差した。
私達は一斉に同じ場所を向く。
――その視線の先には、聳え立つ大きな山脈が映っていた。
第40話をお読みいただき、ありがとうございます。
引き続き、今作の更新を頑張っていきます!
――海月花夜――




