第14話:試し
「カルナちゃん、何してるの?」
「だって、触っても大丈夫って」
確かに、私は触っても直ぐに何かあるとは言ってはいない。
だからって、そんな躊躇なく触るだろうか。
いや、子供なら触るよね。
「うん、私が悪かった。ごめん、カルナちゃん」
「ん? ……これでも私も、異変が分かる!」
少し首を傾げたカルナちゃんが、水に触れさせていない手で小さな握りこぶしを作り見せてくる。
「そんな、一回では……」
無理とは言いたくないけど、出来たら出来たでそれは凄い事だ。
「どう? 違い、分かりそう?」
私がゆっくり聞くとカルナちゃんが目を閉じ、殆ど見えていなかった表情が更に分かりずらくなる。
眉間にシワを寄せるとか、何かあっても良い筈の状況でカルナちゃんは、意図してか知ってか身体から力を抜いていた。自然と握っていた手のひらも開き、膝の上に置かれている。
「なんかヒリヒリする……」
「それは、その通りだと思うよ。今すぐ手を出しなさい」
やっぱり、子供の皮膚には良くない。
私の魔力で浄化される物が含まれているのだから、良いわけがない。
「もう少し……」
カルナちゃんが前を向いて、用水路と睨めっこを始めた。
まぁもう少しぐらいなら、問題ないか。
そして私が横を向くと、アゼルがベラさんとスミスさんに挟まれて何かを言われていた。
「良いって、一人で大丈夫だから」
「そうは言ってもね」
アゼルが行おうとしている事に、スミスさんが渋っている様子だった。
「どうしたんですか?」
私が話しかけると、アゼルが協力を求めてくる。
「救世主様からも言ってくれよ。もう一つの水源に行くんだけど、一人で行くなって言うんだよ。いつも一人で行ってるのにさ」
「そうなんですか? ベラさん」
「そう言われたら……そうなんですがね」
「今は少しでも、警戒しないとだからね。いつも行ってるから大丈夫は、危険過ぎる」
スミスさんの方が過保護に思えてしまうが、侮らず最悪を想定するのは凄い事だ。
大抵は気にしない事から、大きな危険に繋がるのだから。
「でしたら、私が一緒に行きましょうか? 魔物が近くに居るかぐらいなら分かりますし、最悪アゼルくん一人なら、抱えて逃げられますよ」
「えっと……それは、確かなんだよね?」
「マジかよ……」
私がそう言うと、スミスさんとアゼルが驚いていた。
あれ、身体強化について……話してなかった、よね。
二人の反応を見て私は言ってなかった事に、遅れて気づくのだった。
ちょっと試しに、やってみた方が良いかな。




