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第12話:賑やかな朝


 私の朝は早い、という訳ではなく。

 自然と起こされてしまった。


「おはようございます。サリナ様」


 長い黒髪を三つ編みにしたメイドさんが、扉から私の寝ているベッドの近くまで歩いて来る。


「あの……」


「本日も、井戸の調査でお間違いないでしょうか?」


「はい、そのつもりです」


 寝起き早々に予定を聞かれ、私はとりあえず答えていた。


「かしこまりました。それでは、今のうちに朝食を済ませた方が良いかと、思います」


「ん?」


 私はその言葉に違和感を覚えるまま、昨日同様に案内された部屋で朝食を食べ始める。

 ふっくらとしたパンケーキに加え、ベーコンと目玉焼きに、別皿に野菜が盛り付けられていた。


「いただきます」


 朝から用意してくれて、感謝しかない。

 一口食べると、柔らかい生地のパンケーキが口の中でほぐれ、掛けられていたハチミツがゆっくりと染み込んでいた。


「美味しい」


「ありがとうございます」


 それからメイドさんと話をする事もなく食事は静かに進み、私が食べ終わった頃だった。

 ――突然。

 屋敷の玄関がノックされる。


「確認して来ます」


 気づいたメイドさんが、素早く動き出す。


 そして、一分もせずに戻って来る。

 けれどその足音の数は、明らかに増えていた。


「居た!」

「サリナお姉ちゃん、おはよう」

「あっあの! お邪魔しますっ!」

「おはようございます、サリナさん」


 そこに現れたのは、アゼル、カルナ、フィリア、サリスちゃんの四人と。

 後ろから、スミスさんまでも姿を現す。


「皆さん、朝からどうしたんですか?」


 カルナちゃんだけでなく、他の子供たちに加え、スミスさんまで来てしまった。

 これが普通……の可能性もあるのか。

 カルナちゃんが居る屋敷に他の三人が向かい、再び子供だけで街を出ようとした四人に同行しようとしたスミスさんが一緒に来た流れが、容易に想像出来てしまう。


「おはよう。良く眠れたかな?」


「はい、問題なく。その代わりと言っては何ですが、今、とても驚いています……」


「それは朝からすまない。実は、井戸以外の場所で問題が起きたみたいでね」


 スミスさんが言葉を止めた所で、前に居たアゼルが口を開いた。


「救世主さん! 農園の水がおかしいんだ!」


「農園?」


 私は昨日訪れた、農園を思い出す。

 とてつもなく広い場所で、アゼルが怒られていた……。


「僕もさっき聞いたから、詳しい事は分かっていなくてね。悪いけど今日は先に、そっちを見てもらえるかな。もちろん、ギルドからの依頼って事にさせてもらうよ」


 スミスさんの提案を聞いた私は、悩む間もなく答える。


「分かりました。お引き受けします」


 私がそう伝えると、少し落ち込んでいたアゼルが嬉しそうな顔を見せた。

 他の三人も安心した様子を見せるけど、問題が解決する前からは止めてほしい。


「喜ぶのは早いですよ。まだ、見てもいないんですから」


 私の声は聞こえていないのか子供たちは喜び続け、スミスさんが困った顔を浮かべる。


「やるだけ、やってみますね」


 こうして私は、井戸の調査よりも先に農園に向かう事になるのだった。

 ――その原因が何なのか分からないけど、頑張ってみます。



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