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3  丘を越えて林

 全員で歩きながら、ミステリークエストが原因じゃないか?という話になった。


「久しぶりに電源付けたら笑い声の様な物を聞いて意識を失ったのか、気付いたらここにいた。」


 と俺が実体験を話すと、皆同じ感じだった、ガイジンだけテレビの中に吸い込まれた気がすると言ってたが、ガイジンはオーバーアクションだからなぁと一人で思っている。


 そんな話をしてる内に丘らしきものの一番高い場所、頂上まで着くと下り坂に林が見えた、あそこだ!


 おかしな事にゴールが見えると元気になるもので、早足になって全員で降りて行く。


 林の中は薄暗いので気を付けて進む、手頃な木の棒はまだ見当たらない、先に来た奴等が拾ったのだろうか?


 仕方ないのでもう少し奥へ進む、当然警戒はしている、慣れないので凄く変な汗が出る、暑い訳じゃないのに、身体がリアルを感じているようだった。


 やっと手にしっくりくる程度の棒が一本手に入った、見付けたのはガイジンなので、ガイジンが持った。


 一本じゃ足りないのでもう少し奥に進む。


 ガサガサッ 音がなった。


 藪の様な所から、子供みたいな見た目の緑色した奴が出てきた、手にはナイフを持っている。


 ヤバい!ゴブリンか?


 だが1対4だ、相手はナイフを持っているだけの小男だ!


「囲め!」


 俺がそう声をあげた!


 キョロキョロと周りを見ながらも武器を持っているガイジンを一番警戒しているようだ。


 俺達は囲みが成功し、距離をジリジリと詰めている、どっちにしろ戦わないとならない相手だし、スライムの次に弱い奴の筈だ。


 そろそろ間合いに入る、俺の前にはガイジンを警戒して後ろを向いているゴブリンが居る、ここは勇気を出す所だ、距離を一気に詰めて蹴りを放つ!ゴブリンは衝撃で倒れた、ガイジンが木の棒でゴブリンの背中を叩く、叩く、叩く!動かないゴブリンのナイフを持っている手首をジャッキーが踏んだ。


 全員で近寄って蹴る!蹴る!叩く!完全に動かなくなったゴブリンはナイフと黒い小石を残して消えてしまった。


 ビーダマが声に出して聞いてくる。


「たっ倒したら消滅するタイプでしたっけ?ミステリークエストって。」


「さあ?そこまで描かれてたか?ワイは覚えとらんで。」


 取り敢えず皆まだ興奮しているし、ハァハァと息があがっている。


 とは言え、何処から新しい敵が出てくるかも分からない、ボロいナイフと小石を拾って更に探す、ナイフはジャッキーに持たせた。


 俺が二メートル位の真っ直ぐな木の棒を見付けた、これは俺の物にした。


 ビーダマの棒が中々見つからない、途中でスライムが二匹出たが、核らしき物を、俺の持った長い棒で破壊したら溶けた、二匹共さっきより小さい黒い小石を残して消えた。


 木の棒とは言えない様な、何方かと言えば棍棒に近い先が太くなった棒をビーダマが拾った所で林を後にする。


 段々暗くなってきたからだ、危険な場所で暗いとか恐怖でしかない。


 腹も減ったし喉も渇いた、だが戦利品はボロいナイフと黒い小石が三つだけ、これは飯代位になるのか?


 修練の村に戻れば水位は飲めるだろうが、帰ってまたここに戻って来るのは、時間も掛かる、どうするか皆で相談する。


 一応一番活躍したと思われる俺が口火を切った。


「なぁ、今日の戦利品はたったのコレだけだ、コレで腹いっぱい飯食って宿にでも泊まれると思うか?」


 全員が首を横に振る。


「喉も渇いたし、腹も減ったがこの丘なら見渡しは良い、二人づつ見張りと寝る奴と分けてもう一日捜索しないか?」


 そう提案した、皆初めてのバトルに興奮もしたが、命の掛かったリアルバトルだ、少なからず疲れもあった。


 それじゃ最初に誰が寝て、誰が見張るか決めよう、どうもジャンケンは共通だった、掛け声は違ったが。


 チッケッタってなんですかー?


 取り敢えず俺とジャッキーが、勝ったので最初に寝ることにした、この長い棒は一番信用出来るからコレを頼りに見張りを頼んだ。


 時間を計る物がないから、大体2時間位の交代にしようと言って寝た、眠れないかと思ったがすぐ寝れたようだ。


 今度はガイジンとビーダマが寝た、特に何も起こらなかったので、警戒はしたが同じ様にまた起こして眠りに着く。


 普段なら2回、3回と同じようにしたら眠れなくなるものだが、不思議と簡単に眠れた。


 3度目にビーダマ達二人を起こした時には明るくなってきていた、時間が分からないから本当に適当だけど合計12時間位経ったのか?それだったら朝にもなってるだろう。


 腹も減り喉も渇いたが、もうひと踏ん張りだ、どうせならと大きく迂回して林の中に歩みを進めた。


 まだ朝になったばかりだ、昨日入った時より全然暗い、ゆっくり歩いて音をなるべく立てないように進む。


 暫く歩くと、少し音が聞こえてきた。


 ゴー スー ゴー スー


 ゆっくり近付いて覗くと、3体のゴブリンが木の幹に身体を預けて寝ていた、顔を見あわせた俺等は頷きゆっくり近付いた。


 ジャッキーがナイフで1体の目を一突きし、ビーダマがもう1体の頭に棍棒を落とし、俺とガイジンでもう1体の頭を打ち据えた。


 殆ど声を上げる前にゴブリン達は絶命した、スマンなこっちも意味の分からない世界で命が掛かってるんだ。


 木の幹に置いてあったナイフ3本と、粗末な布切れ、有り難い事に水の入った竹水筒の様な物まで見付けた。


 中身はまだ入っていた、無言でジャンケンの動作をしたら皆感づいて、小声でジャンケンをして負けたやつが最初に飲む取り決めをした。


 だってゴブリンが持っていた物だ、水かどうかなんて分からない、人柱になるやつを決めるジャンケンだ、何も無ければ何も無いで、全員水を飲めるだけの事。


 負けたのはジャッキーだった、決意を決めて口に含んだ、イケると親指を立てて知らしてくれた。


 ビーダマ、俺、ガイジンの順で飲んだ。


 黒い小石を忘れない様に拾って、竹水筒と黒い小石をジャッキーが布切れに包む、ナイフも全部ジャッキーが持った。


 更に林を進むとスライムの溜まり場があった、コイツラは核さえ破壊すればほぼノーダメージで倒せる、今の俺達にはとても都合の良い敵だ、6体程倒して黒い小石を拾った。


 驚くほど順調に進めている、こうなって来ると少し気が大きくなってしまう、小声だが話をしながら進んだ。


 グルルルルゥ゙


 嫌な感じの音がした先に大きな獣が居た!


 犬?じゃない狼か?デカい怖い!そいつは一気に襲いかかってきた、ヤバいヤバいソイツは、真っ直ぐ俺の方へ向かってくる。


 マジ怖い二メートルある長い棒を突く様にして前に出す、ガツガツと当たるがそのまま押されそうになった所へジャッキーがナイフを投げた!


 キャインと鳴いたソイツが距離を取った、ジャッキーが続けてナイフを投げる、外れた、また投げる、キャインと当たって鳴くソイツに三人が棒で襲いかかった!


 先に殴り掛かったビーダマの棍棒に噛み付いても、俺とガイジンの棒は防げない、残った1本のナイフを確実に当てたジャッキー、狼の身体が血に染まる。


 棍棒を噛みつく力も弱まり、目から光が失われる、口から棍棒を抜いたビーダマが頭に向けて棍棒を振りかぶった。


 ドゴッ


 鈍い音がして完全に動かなくなった狼は、消えて行くと思われたが消えなかった。


 初めての事にどうするか相談した、コイツはモンスターとか魔物とかじゃなくて獣の分類なのか?


 全く分からない、全員が、全員分からないのだ、そのままでは重すぎるので腹を裂いて内臓を出した。


 全員の意見は、コイツはきっと毛皮とかで金になるからコレを持って帰ろうだった。


 まだそこまで奥にも行ってないし、都合良く細いが長い棒を見付けた。


 丈夫そうな植物の蔓も何本か見付けてナイフで切った、獣なんか誰も解体した事がないから全員で行った、全員血だらけだ。


 ある程度上手く内臓を出して、木の棒に括る前に足を持って林の外まで運んだ。


 血の匂いに釣られて何が来るか分からないからだ、林を抜けて初めて足と棒に蔓を巻き付けた。


 もう一本は俺が槍代わりに使った長い棒だ、バンザイする形にした狼を其々が担いだ。


 内臓を取っても重い狼のお陰で、肩に棒が食い込んで痛むが我慢して、修練の村へ急いだ。




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