2 パーティーを組もう
取り敢えず、スライムはここ迄追ってはこなそうだし、今の状況を整理する。
えーっとゴールデンウィークに実家に帰って、部屋に戻って、埃被った昔のゲーム機を取り出した、最後に覚えてるのはミステリークエストを何度か挿し入れして、笑い声が聞こえた気がし、た?
んで今ここは修練の村??何だそりゃ意味分かんねえ、ミステリークエストの中だとでも?クソゲーだぞこれ確か!
ここで喚いても仕方ないので、気を取り直す、ここがゲームの世界なら酒場があって、冒険者の仲間を募る事が出来る筈だ。
おばちゃんに礼を言って別れ、キョロキョロと辺りを見ながら進む、そんなに多くない建物の中にビールの様な看板が付いた建物を見付けた。
「ここで正解だろ流石に」
中に入ると、まだ日中だと言うのに人が居る、寧ろここに全員居るんじゃね?と思う程人が居た。
「いらっしゃい、何の用?」
声を掛けてくれたのは酒場の女主人か?ワイルドな感じの、美人としか言えない女性だ。
「あっあの〜すいませせん、仲間をさっ、さか、探してるんですけど。」
「あらそうなの?それじゃタグ出して?」
タグを出せ?なんだそれ、初めて聞いた言葉に焦りつつ身体をまさぐると、パンツのポケットに硬い物が入ってるのに気付いた。
「コレで合ってますかね?」
そう言ってボールチェーンの付いた鉄の板の様な物を差し出した。
「それよ。」
一言だけ発してタグを受け取った女性がタグと言われる板を見ている。
「戦士ウニオね」
「はー!?」
思わず叫んでしまった、やはりそうだミステリークエストの中だここ!ウニオは俺の付けた名前だ、理由はウニが好きだからって今はそんな事どうでもいい!
驚いた顔をしている酒場の女性はタグを返してくれた。
「タグは首にでも掛けて無くさないようにして、それと仲間を探すなら店の中にいる人に適当に声掛けたら?」
そう言って興味を失ったようにソッポを向かれた。
周りを見る、確かに人は沢山いる、女性も多いし皆可愛い子が多い気がする。
えっとさっき俺は戦士と言ってたな、確かに戦士でキャラを作った覚えは何となくある、ウニオの名前もすぐ思い出せた。
えーっと戦士なら僧侶や魔法使いを探すのが無難か?それらしき被り物をしている人を探す、服装は皆同じ様なものだったが杖だったり、私は魔法使えますという様な帽子を被っている人も居た。
勇気を出して僧侶と魔法使いだと思われる二人の女性に声を掛ける事にした。
「あの〜すいません俺戦士何ですけど、一緒に組みませんか?」
ニヘッと下手くそな笑顔しか出来ない俺の中でも会心の笑顔を出して言ったと思う。
「やだー気持ち悪ーい」「いこいこっ」
二人は俺の前から去っていった。
気を取り直して、一人で壁の花になってる僧侶の様な女性に声を掛けようとしたら他の男が目の前で掻っ攫っていった。
どうせ組むなら女性が良いなとスケベ心で声を掛けたがハードルが高そうだ。
既に男女ペアな所へ売り込みに行く。
「すまんな、既に戦士は仲間内にいるんだ、おーいこっちこっちだ」
ムキムキの俺は戦士だ!と言うような奴がこっちだと案内されてノシノシ歩いて来た。
俺の方を見て、フンと鼻で笑ったクソが!
暫く探したが、どうもスタートで躓いた様だ、周りはパーティーを組めて、話しながら外に出ていく人が増えていく。
クソが!可愛い女性も多かったのに!テーブルと椅子が置いてあるので一旦椅子に座って周りを見る。
一人、また一人と、椅子に座ってくる男達が俺の傍に居る。
コイツラもあぶれたか?見るからに[ひ弱]な男達だ、俺が声を掛ける前にその内の一人が俺に声を掛けてきた。
「君もパーティー組めなかったんでしょ?僕の名前はビーダマ、戦士です」
ビーダマと名乗った男が右手を差し出してきた、あぶれたとは失礼な!と怒りたい気持ちもあるが、その通りだ。
俺も右手を差し出してウニオ、戦士だと名乗る。
「どうせなら僕と組みませんか?」
とひ弱そうなビーダマが提案してきた、仕方ないここは了承しよう。
「あぁ宜しく頼む」
そう言って二人は握手を交わす。
それを見ていた隣の男が、ビーダマと、同じ様に声を掛けてくる
「やあワイの名前はガイジン、戦士だ、俺とも組んでくれないか?」
オイオイ三人戦士かよ!こいつも[ひ弱]そうに見えるぞ?前衛三人とか、ウーン何とかなるか?
悩んでる俺の代わりに戦士ビーダマが握手を交わして名乗っていた、続けて俺も名乗って握手を交わす、仕方ない成り行きだ。
もう、酒場の中には一人しか残っていない、そいつが此方に向かってくる、待て待て、お前の格好それは…。
「拙者はジャッキー武道家だ、あぶれてしまった様だ、拙者も入れて欲しいでござる」
マジかよぉぉぉ全員前衛とかどうすんだよ!
とは言え他の人は全て出て行った、残ったのは俺等三人戦士と、この武道家だけだった。
「なんとまあ全員前衛とはなハハハッ」
笑ってるのは最後に来たジャッキーだ、いやお前が武道家だってのは来る前から分かってたよ、弁髪だし。
The武道家っていう髪型で僧侶とか魔法使いだったら逆に土下座して仲間になってもらったわ!
このパーティーで唯一良かったのは一人称が被らない位じゃないか?
[俺、僕、ワイ、拙者]
女性の一人でも居てくれたら良かったんだけどなぁ〜。
「取り敢えずパーティーも結成しましたし、僕らも外に出ましょうか。」
戦士ビーダマがそう声をあげたので、俺等も頷いて外に出た、酒場の女性主人?が笑って見てた気がしたがスルーだ。
「えーっと見た目通り僕等は誰も何も装備してませんね?」
ビーダマがそう言って確認をする、全員が首を横に振った。
「所持金は誰か持ってます?」
またも、全員が首を横に振った。
「最初から詰んでないか?これ」
俺を含めた全員がハァ〜っと肩を落とす。
「取り敢えず武器を何とかしたいですね、僕も戦士です、武器は欲しい。」
ビーダマがそう言うので全員が頷く。
俺はさっき会ったスライムの話をした。
「スライムに出会って石を投げたけど、少し弾けただけで向かってきたな。」
ウーンと皆で考え込んでしまう、スライムが物理無効とかならマジで詰むからだ。
一番弱いとされるスライムが物理無効とかマジシャレにならない、修練なんて出来ないぞ?
「ワイが思うには、こういう時は話を聞いたらええんやないか?」
「あぁ、拙者もそう思っていたでござる。」
二人がそう言うので、まだ道の途中に居る先程のおばちゃんに声を掛けた、ビーダマが。
「誰が声を掛ける?」
と聞いてきたので、黙っていたら仕方ないとビーダマ本人が言ったのだ、全員が、どうぞどうぞとコントに《《ならない》》形で譲った。
「すいませーんお聞きしたいんですが〜」
「あらやだ、今日何回目のナンパかしら?あっはっはっ」
何か凄くデジャブ、俺等は少し離れて話を聞いてるビーダマを応援している、何故ならああいったテンションのおばちゃんの相手は疲れるからだ!
暫くおばちゃんと話して戻って来たビーダマが情報を仕入れてきたようだ。でかした!
「えーっとこの村の外に林があるから、そこなら木の棒位は手に入るんじゃないか?って、後スライムは核があるからそこを破壊すれば良いみたい。」
マジでナイス情報じゃないか、ビーダマやりおる。
見た目イガグリ坊主な割にそこそこ社交性を持ってやがる、そう言えば最初に話し掛けて来たのもコイツだ。
俺は多少ビーダマの評価を上方修正した、マジ[ひ弱]とか思ってゴメン。
目的地は決まった、全員で林に向かう。
ここからは林は全然見えない、先程俺がスライムと会った場所を越えたが、先は少し上り坂だ、スライムは居なくなっていた。
折角だから改めて自己紹介をする、全員は何処から来たのか?という質問には全員が日本からだと言った。
僕とかワイとかなら分かるが拙者のジャッキーも日本から?、そう言えばワイが一人称のガイジンも本当に外人みたいな顔付きをしている。
拙者とか名乗るオタクは居るのは知ってるが、どうも気になる、弁髪だし。
結論で言えば、全員日本出身だと言うのに話が合わない。
今の総理大臣を聞けば、総理?何だそりゃみたいな顔をした。
王様ならとビーダマが、総帥ならとジャッキーが、ガイジンは大統領ならと全員が合わない。
全員が全員一致したのはミステリークエストだった、そして全員途中で投げたと言う。
どういう事だ?パラレルワールドかなんか?